共同購入型生鮮EC、落ちこぼれた「京東」が奇襲 内陸部の強豪「興盛優選」に700億円の戦略出資

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共同購入型のEコマース市場で完全に後れをとっていた中国EC大手「京東(JD.com)」が11日、住宅街(地域コミュニティ)向け共同購入サービス「興盛優選(XINSHENG SELECTED)」へ7億ドル(約730億円)の戦略投資を行うとの電撃発表を行った。

興盛優選への出資および買収に関しては、同じく共同購入サービスを手がける「拼多多(Pinduoduo)」やフードデリバリーを主体とする生活関連サービス大手「美団(Meituan)」が協議中と報じられていただけに、青天の霹靂となった。こうした報道について興盛優選はこれまで否定してきたが、事情に詳しい関係者によると、同社に早期から出資してきた「今日資本(CAPITAL TODAY)」の創業者・徐新氏が美団に対して同社との協議を働きかけていたという。

興盛優選は湖南省長沙市を本拠地とし、湖南省・湖北省・四川省・貴州省などの内陸を中心に事業を展開してきた。しかし今年10月、武漢市に大手の競合が続々と参入したあおりで受注件数が最大20%も減少。多くの物流人員が離職し、同じく地方都市を主戦場とする拼多多などの猛攻に対して積極的に抗う術を持たなかった。

11月下旬、興盛優選は沿岸の江蘇省へ進出した。ほどなくして省都・南京市での受注件数は1日10万件を突破。2018年5月に湖北省に進出して以来、全国14省・直轄市の6000都市、および3万以上の農村でサービスを提供するようになっている。中国で年間最大のオンライン通販キャンペーン「ダブルイレブン(双11)」では今年、受注件数1200万超えを記録し、同業界ではトップの座を維持した。

しかし、厳しい競争に追い立てられるように資金調達のペースも加速させており、中国のビジネス系ニュースメディア「晩点(Late Post)」の報道によると、2〜5億ドル(210億〜520億円)規模の調達案件を進めているとされていた。今回の発表で判明したことは、同社は当初の予定額を大幅に上回る額の調達に成功したということだ。

興盛優選は今年7月にもシリーズC+で8億ドル(約830億円)を調達している。出資したのはコールバーグ・クラビス・ロバーツ、テンセント、セコイア・キャピタル・チャイナ、タイガー・ファンド、テマセクなどで、企業評価額は1年前の4倍にあたる40億ドル(約4200億円)に跳ね上がった。

京東が今回、興盛優選への出資を決めたことは双方に利がある。

興盛優選は大手に比べ、フルフィルメント(通販において受注から配送まで一連のプロセスのこと)に強い。物流システムは8回のブラッシュアップを経て、フルフィルメント業務にかかるコストの割合を9%前後に抑えられるようになった。全国3万以上の農村へサービスを提供できるようになったのはこれが礎となっている。これに全国を網羅する京東の物流サービスが加わればさらなる強みとなるだろう。

一方の京東にとっては、共同購入型のEコマース市場で一足飛びに成長する機会を得たことになる。

拼多多や美団、モビリティーサービス「DiDi(滴滴出行)」が住宅地向け共同購入サービス事業に参入して半年が経った今月、京東はようやく同事業を手がける独立部門を立ち上げ、今月末から来月にかけて次々と新サービスをローンチする予定だ。さらにそのわずか1週間後、地方都市をターゲットとした京東の共同購入サービス「京喜(JXI.JD.com)」を手がける部門が事業グループに格上げされた。住宅地向け共同購入サービス事業部はその傘下に入ることになる。また、創業者の劉強東氏が自ら組織構築を指揮しているという。

これまでも同様の事業に幾度も挑戦し、大きな成果が得られなかった京東。元従業員の証言によると、京東は当初、単なる新プロジェクトの一つとして共同購入サービスをスタートした。プロジェクトはあくまでEコマースのメインサイトへ新規顧客を誘導することを目的としたものであり、一事業としての位置付けではなかったという。しかし今回の出資はライバルである拼多多との格差を最大限に埋め、事業の生き残りを目するものだ。
(翻訳・愛玉)

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