マイクロソフトのAIチャットボット「XiaoIce」、デバイスの形態にとらわれないサービスを提供

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マイクロソフトから独立したAIチャットボット「XiaoIce」 デバイスの形態にとらわれないサービスを提供

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今年7月13日、マイクロソフトはAIチャットボットの「小氷(XiaoIce、日本では「りんな」の名称で稼働中)」事業を独立企業として分離することを決めた。マイクロソフトの元EVP(エグゼクティブ・ヴァイスプレジデント)ハリー・シャム氏が董事長、マイクロソフトの元アジア太平洋研究開発グループの常務副院長李笛氏がCEOを勤める。

マイクロソフトは小氷を6年間に渡り全力で支えてきたが、今後の成長のためにはより柔軟性の高い運営手法と専門的人材が必要となり、小氷は独立を希望していた。マイクロソフトとしても、独立後の小氷が順調に成長すれば、株主としてその十分な見返りが期待できる。

独立後の小氷とマイクロソフトの関係について、ハリー・シャム氏は「独立した企業として、意思決定は当然自分たちで行うことになるが、マイクロソフトとの緊密な関係が短期間のうちに変わることはない」と話す。

独立した小氷はすぐに動き出し、11 月下旬にはプレシリーズAの資金調達を行った。出資者は「北極光創投(Northern Light Venture Capital)」と「網易集団(NetEase)」。また、小氷はマイクロソフトとの戦略的提携を発表し、「AI+クラウド・コンピューティング」ソリューションをともに提供していくことを決めた。このソリューションの主な対象分野は金融、自動車、コンテンツ制作となっている。

12 月 10 日、李笛氏は36Kr主催のテックカンファレンス「WISE2020」に登壇し、 小氷の事業構想と、AIに対する見解を公表した。

小氷の李笛CEOがWISE2020に登壇 画像は36Krより

小氷は当初、学生服を着た少女キャラクターとして登場し、チャットボットとして親しまれた。その機能を支えているのはベースとなるバックエンドのフレームワークで、このフレームワークが持つ言語、音声、感情認識能力を使えば、多種多様なキャラクターや機能を実現できる。

そのため、小氷の中核をなすのはフレームワークの方であり、少女キャラクターはデータを取得・確認するためのプロトタイプに過ぎないと李氏は語る。少女キャラクターは2014年に誕生し、その後8回のバージョン・アップを行った。最も重要なバージョン・アップは2018 年に行われたもので、フレームワークを正式に確立したのがこのときである。

こうしたフレームワークを中核とする戦略により、小氷は他のAI企業との違いを鮮明にしている。バイドゥ(百度)のようなテック大手にしても、「商湯科技(SenseTime)」のようなスタートアップにしても、AIを特定の製品とともに販売していく手法が主流だ。それらの企業では、AIはスマートスピーカー、スマートカメラ、スマートカーなどの形で提供されている。それに対し、小氷はあくまでフレームワークを中核に据え、製品の形式にとらわれないAIサービスを提供する。

製品にとらわれないため、小氷は各社が自由に採用できるものとなっている。現時点だけで、ソフトウェアではバイトダンスのニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」、音楽配信プラットフォームの「網易雲音楽(NetEase Music)」、テンセントのSNS「QQ」で使われ、ハードではファーウェイ、「OPPO」、「vivo」、シャオミのデバイスに搭載されている。

自社のこの戦略について、李氏はAI製品を3種類に分けて説明する。まず、AIの基礎的技術だけを相手先機関に提供するものだ。相手先は研究機関が多く、自身で市場開拓やビジネスモデル作りに加わることはほとんどない。次は、現在もっともよく知られているAIデバイスだ。スマートスピーカーなどがそれにあたる。こうした製品はAIを搭載したとはいえ、主要機能がスピーカーであることは変わらず、AIという新技術で従来の機能を支えていると考えるべきだ。

そして、小氷のフレームワークのように、各種の機能を持ち、経済活動において重要なタスクを独力で担えるAIである。李氏はこうしたものこそ、真のAI製品であると考える。「AIがデバイスといつも紐付けているのはよくない。デバイスはあくまでプラットフォームである」

(翻訳:小六)


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