デジタル人民元の登場に独占を規制強化 中国で決済サービスをめぐる競争が再び激化か

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中国のモバイル決済サービスは、アリババのアリペイとテンセントの「WeChat Pay」が、合わせて90%のシェアを持つ寡占状態が数年間続いている。その構造が、今後変わる可能性が出てきた。

インターネット大手の決済サービスライセンス取得

今年1月から11月までの間に、ECプラットフォームの「拼多多(Pinduoduo)」、バイトダンス、オンライン旅行代理店の「携程(Trip.com)」、ショート動画プラットフォームの「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」が、決済サービスライセンスを持つ企業を買収する形で、ライセンスを取得した。昨年までにすでにライセンス取得済みの生活関連サービスの「美団(MEITUAN)」、ライドシェアの「滴滴(DiDi)」、ECプラットフォームの「京東(JD.com)」を含めると、中国で有力なインターネット企業のほぼすべてが、決済サービスライセンスを取得したことになる。

各社とも市場への攻勢を強めており、たとえば拼多多は、まもなく独自の決済サービスを開始する予定だ。さらに同社は、中央テレビが毎年の春節に放送する春節特番の独占スポンサーとなり、その放送中に巨額のお年玉クーポンを提供するという。中国で最も視聴率が高いとされるこの番組を利用し、一気に利用者を増やそうというのだ。

また、バイトダンスの傘下企業は、11月に「DOUPAY」というブランドを商標登録したため、決済サービスの開始は時間の問題だと見られている。ほかの各社も似たような動きを見せている。さらに、アリババが得意とする金融サービスに乗り出そうとする企業も出てきている。

大手同士の競争のほか、中国政府が実証実験を始めた「デジタル人民元」の動きも見逃せない。実験は今年10月に深圳で開始され、12月には蘇州でも始まった。

デジタル人民元は法律上、銀行の普通預金と同じように使うことができる。決済サービスのように第三者決済を経る必要がないため、手数料が安く、より幅広いシーンで使用できるようになる可能性がある。これが定着すれば、決済サービスの構図が一変するだろう。

デジタル人民元の実用化を見越して、京東は今年9月から中国人民銀行のデジタル通貨研究所と提携し、自社のECで実証実験に協力している。DiDi、ビリビリ動画、美団での実証実験もすでに行われている。アリババとテンセントが支配するモバイル決済サービス市場は、大きな変革を迎えようとしているのである。

決済サービスの魅力とは

多かれ少なかれ、EC事業を持つこれらのインターネット大手にとって、決済サービスライセンス取得の最初の目的は、EC事業に必要な決済代行手続きを、法律上全く瑕疵なく行うことである。

そして、一旦ライセンスを取得すれば、独自の決済サービスを始めたいと考えるのは必然である。なぜなら、外部の決済サービスを利用すると、手数料がかかるためだ。さらに、独自の決済サービスがあれば、取引データをすべて社内で取得することができ、新たなサービスの展開に繋がる。

その新たなサービスの一つが、金融サービスである。現在のインターネット企業の収益モデルは多種多様だが、金融サービスはそのなかで利益率が最も大きいものだ。アリペイを運営するアント・グループの今年上半期の粗利率は58.6%で、テンセントは50%前後、それに対し美団は30%前後しかない。そのため、各社とも金融サービスへの参入を虎視眈々と狙っている。

現在の市場状況も、新規参入に適しているといえる。インターネット金融の独占への批判と当局の規制の厳格化により、新規参入しやすくなったためだ。また、デジタル人民元の登場によって、市場の不確実性が増すため、新規参入者がチャンスを掴む可能性は十分ある。

当然ながら、アリペイとWeChat Payが数年間かけて築き上げたエコシステムや、金融サービスの種類の豊富さは、現時点で他社の追随を許さないものである。それでも、新規参入によって業界のパワーバランスが崩れ、企業同士の関係が急変する可能性が出てきた。中国のインターネット産業がこの先どうなるのか、しばらくは目が離せない。

原作者:「深響」(Wechat ID:deep-echo)婷婷

(翻訳:小六)

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