EV化を全面肯定しないトヨタ 実は基礎固めは済んでいる

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自動車業界で「アップル」に喩えられる企業はまだ出現していないが、ガソリン車で身を立ててきた老舗メーカーと新エネルギー車を手がける新興メーカーの間では長らく見解の相違が続いているようだ。

米テスラはそのイノベーション力と急騰する時価総額によって、「新芽が森林に取って代わろうとしている」と評価される。一方の老舗トヨタについては、急速に勢いを失ったかつての携帯電話大手ノキアの二の舞を踏むのではとみる向きもある。

テスラが時価総額6272億9200万ドル(約64兆4500億円)で自動車メーカーの世界首位に立ち、時代が変わったことを世界に知らしめたのは否定できない。スマート化、電動化にまい進する自動車業界の状況は、往年の携帯電話業界と酷似している。テスラをはじめとする新興勢力は自動車業界の「アップル」となれるのか、またかつての大手メーカーは「次のノキア」になるのか。結論を出すには時期尚早だ。

トヨタは本当に凋落したのか?

落伍者の烙印を押されてもなお、トヨタは全面的な電動化には舵を切らないようだ。豊田章男社長は「日本が脱ガソリン車に関して軽率に過ぎれば、自動車業界の現行の事業モデルは崩壊し、数百万人が失業する事態になる」とEV(電気自動車)の全面推進に否定的で、さらには日本政府が打ち出そうとしているガソリン車廃止(2030年代半ばまでに国内販売する新車からガソリン車を撤廃する方針)に対しても疑問を呈している。

かつてガソリン車で覇権を握った老舗メーカーだが、トヨタとて電動化の歩みを止めたわけではない。国内向けに二人乗り超小型EV「C+pod」の限定発売を開始したばかりだ。計画ではトヨタは今後10年以内に電動化に130億ドル(約1兆3400億円)を投じ、遅くとも2030年までにハイブリッドカー(HV)を年450万台、純電気自動車(BEV)を年100万台、合計550万台を販売する目標を立てている。

トヨタは実際、最も早期に当たる1992年に新エネルギー車を手がけるようになったメーカーの1社だ。当時はBEV、HV、FCV(燃料電池車)の間を逡巡し、最終的にはこの三本柱で展開するに至っている。HVに関する技術ではトヨタは絶対王者だ。公式データによると2019年末時点でトヨタ製HVのグローバル販売台数は1200万台を突破し、世界市場の9割を占めている。

一方で、トヨタはBEVに関しては最良のタイミングを逃したとの声も聞かれる。EVの販売台数を集計する米サイト「EV Sales」のデータでは、昨年1〜6月の期間、テスラは17万9050台で販売台数トップ、トヨタは2万349台で15位に甘んじた。BEVでは一歩遅れをとっているトヨタだが、 一部の業界関係者は同社を取り巻く状況はさほど悪くはないとみている。

出典:画像ストックサイトUnsplash

韓国系自動車メーカーに勤めるある人物によると、トヨタが描く新エネルギー車事業の青写真では、BEVはあくまで一部を占めるに過ぎず、キーポイントになってくるのはハイブリッド技術の強みで、ここが軽視できないという。この人物は「HVが普及したことにより、トヨタには大量のサンプルと開発基盤が積み上げられている。これによってBEV開発のための基礎を固めた」と説明する。

加えて、トヨタは協業相手を募ってこれまでの遅れを埋め合わせるようだ。2019年7月にはEV用バッテリー大手「CATL(徳時代新能源科技)」やオンライン配車大手「滴滴出行(DiDi)」との提携で合意し、自動運転やバッテリー関連で協業を決めた。昨年3月にはEV・バッテリー大手「BYD(比亜迪)」と合弁でBEV開発会社を設立し、新エネルギー車の共同開発を進めている。

グローバル展開をする大手自動車メーカーの大部分は時代の岐路に差しかかかり、商機と挑戦が入り乱れる中、二方向で準備を構えるべきだ。トヨタのような企業は、時代の趨勢に適応して迅速に対応策を練るだけでなく、これまでの年月で積み重ねてきた数千万というガソリン車ユーザーをも考慮し、現在の競争力をより固める必要もある。これが将来、全面的に電動化を果たした時の基礎であり保障でもある。

電動化の波に対峙するとき、トヨタはガソリン車時代に築いた成功を再現できるのか。いずれにしろ、新芽が森林に取って代わることは短期的にはないだろう。

(翻訳・愛玉)

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