心不全の新たな救世主に 補助人工心臓開発の中国スタートアップ、近く臨床試験へ

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心不全の新たな救世主に 補助人工心臓開発の中国スタートアップ、近く臨床試験へ

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補助人工心臓を開発する中国のスタートアップ「心擎医療技術(magAssist、正式名:Xinqing Medical Technology」)」がシリーズBで1億元(約16億円)以上を調達した。出資を主導したのは北極光創投(Northern Light Venture Capital)で、蘇高新創投集団(SND Ventures Group)や既存株主の国仟創投(Guoqian Venture Capital)、泰煜投資(TigerYeah Capital)なども参加した。

世界最先端クラスの技術を結集

中国では3億3000万人が心血管疾患に罹患しており、国民の死因で最多となっている。中でも多くを占めるのが心不全で、重症度を分類するNYHAのⅢ〜Ⅳ期(4段階中重症度3〜4)に属する患者の50%が2年以内に亡くなっている。末期心不全において主な治療法となっているのは心臓移植だが、臓器提供者が不足しており、中国では年間500件ほどしか移植手術は実施されていない。そこで新たな可能性をもたらすのが補助人工心臓だ。

新型コロナウィルス、水難事故、ガス中毒、急性心筋梗塞、開胸手術後の原因不明の心原性ショックなど、急性疾患あるいは突発的な事故によって生命が危険にさらされた場合、一部の患者には救命手段として体外設置型の補助人工心臓が用いられる。補助人工心臓によって生存率は50%も向上することがわかっている。

補助人工心臓を用いれば確実に助かる命があり、社会からもその技術は切実に求められている。一方で、その研究開発は難関であり、真にその技術を確立する企業はほんの一握りだ。中国のスタートアップ心擎医療が開発の重点に置くのは、短中期的に心室からの送血を補助する体外設置型の補助人工心臓で、さまざまな原因による急性心不全の補助療法、末期心不全の移行期治療、心臓外科手術を要する重症患者の治療に用いられる。

補助人工心臓の開発は機械、電子、電力制御、流体力学、材料学、臨床医学、基礎医学、生物学など多くの学域にまたがって行われる。補助人工心臓の設計や製造には多くの挑戦が伴うのだ。

学際的に形成される技術には矛盾点も多く、研究者が共通して対峙する課題となる。こうした課題に対し、心擎医療の打ち出すソリューションは、まず多様な専門分野を持つ人材で開発チームを組成し、学際的最適解を導き出すことだ。創業者でCEOを務める徐博翎氏は、中国が海外から優秀な若手研究者を呼び戻すための国家プロジェクト「青年千人計画」でスペシャルエキスパートとして名を連ね、国際機械循環補助学会(ISMCS)では華人系として初のボードメンバーに就任し、蘇州大学では特任教授として教鞭を執る。その他の研究人員も長年にわたり補助人工心臓の開発に携わってきており、メカトロニクスや磁気浮上技術、数値流体力学(CFD)などコア技術のプラットフォームを構築している。

心擎医療の第二のソリューションは、世界的に見てもトップクラスの技術成長だ。設立からわずか3年余りで「第三類医療器械」クラスの製造技術を完成させ、同社初の製品となる体外設置型の磁気浮上型人工心臓がまもなく臨床試験に入る(第三類医療器械:中国の分類で、生命維持などに用いられる高リスクかつ高度な管理を必要とする医療機器)。

ICUを飛び出して活躍の可能性

米ヘルスケア大手アボット・ラボラトリーズの遠心力血液ポンプ「CentriMag」は同分野では世界で唯一、製品化に漕ぎつけている。しかし、心擎医療の徐CEOは同社の製品について、主要な性能指数上はCentriMagに肩を並べるもので、人間工学、システム構築、オールシナリオ対応においてはより優れていると強調。ICU(集中治療室)で用いられるCentriMagとは異なり、救急医療や災害現場にも利用でき、運搬にも耐えるとした。

同社のもう一つの目玉製品は植込み型補助人工心臓で、主にハイリスクな経皮的冠動脈形成術(PCI)に用いるという。まもなく動物実験の結果が発表され、米医療機器アビオメッドの製品をベンチマークとしている。

経皮的冠動脈形成術に用いられるステントは、中国が最近になって集中購買を推進する医療用消耗品として指定した。国産品・輸入品を含めて10種ほどが対象となり、平均価格は従来の1万3000元(約20万円)から一気に700元(約1万円)にまで下がった。心擎医療によると、中国では年間100万件以上の経皮的冠動脈形成術が行われるが、その中でもハイリスクとされるものは少なくとも10万件。ステントが用いられる機会も多くなっている。また、補助人工心臓に対する需要も高まっている。ステント留置にも一定のリスクがあるため、ハイリスク疾患である心不全治療には、補助人工心臓を用いて血液循環を維持する必要が出てくるからだ。
(翻訳・愛玉)

 

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