高性能・低価格の内視鏡手術ロボットで「ダヴィンチ」に挑む、中国新興が48億円調達

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先ごろ、内視鏡手術ロボットを開発する「北京術鋭技術(Beijing Surgerii Technology)」がシリーズBで約3億元(約48億円)を調達した。出資を主導した「国投招商(SDIC)」のほか、「辰徳資本(CD Capital)」「順為資本(Shunwei Capital)」「天峰資本(Tianfeng Capital)」「匯鼎基石(Hyfinity Investments)」が出資に加わった。

今回調達した資金は試作機の生産拡大や臨床試験の実施、欧米市場進出に向けた認証取得などに充てられる。

創業者である上海交通大学の徐凱教授は手術ロボットの分野で長年研究を行っており、ロボット業界で権威ある学術雑誌「IEEE Transactions on Robotics」の副編集長を多年にわたり務めている。

術鋭は単孔式・多孔式共通の低侵襲性内視鏡手術ロボットシステムの開発に注力しており、研究開発から生産、販売までを自社でまかなっている。2019年に「国家ハイテク企業」の認定を受け、同年8月には同社の単孔式・多孔式複合型製品が「世界ロボット大会」の北京メイン会場で展示された。

2020年12月4日、同社は単孔式内視鏡手術ロボットとしては初めて「革新的医療機器の特別審査手順」に選出された。現時点で同社が申請した特許は全世界で270件余りに上り、海外特許3件、中国国内の特許90件を取得している。

徐教授によれば、同社の手術ロボットは連続体からなる高剛性スネークアームを採用し、なめらかで正確な動きを実現しているため、狭い空間内での複雑な手術も可能だという。同手術ロボットの総合的な性能は世界トップクラスで、主要指標では徐教授の技術を採用したチタン・メディカル社の単孔式内視鏡手術ロボット「SPORT」をも上回っている。同社はすでに基幹技術を確立しており、中核部品全ての生産と品質管理を自社内で完結できるようになった。

生うずら卵の皮を剥いている様子
生うずら卵の膜を針で縫っている様子

術鋭の手術ロボットの強みは以下の三点だ。

第一に動きのなめらかさ、負荷耐性、コンパクトさが挙げられる。米国の手術支援ロボット「ダヴィンチ」やチタン・メディカル社がワイヤ駆動方式を採用しているのに対して、術鋭は高い柔軟性を持つニッケルチタン合金の冗長構造を採用している。これにより、形状が絶えず変化する中でも高い強度と剛性を保つことができ、緻密な操作を可能にした。突発的な状況によりアームがいくらか損傷を受けたとしても、先端部は正常に機能し続け、安全に手術を終えることができる。

第二に、体外のアーム部分が手術中も固定されて動かないこと。多孔式内視鏡手術ロボットの多くは体外でアーム同士が干渉することにより一定のリスクが存在していたが、術鋭の手術ロボットは体内の先端部分のみを動かすため手術の安全性を高めることができる。

第三に、単孔式と多孔式共通のシステムであること。術鋭の手術ロボットは単孔式をベースに、多孔式、経管腔的内視鏡手術にまで適応を広げている。ダヴィンチの場合、単孔式と多孔式それぞれ別個のシステムを購入する必要があるが、術鋭のシステムならどちらにも対応できるため病院側の支出を大幅に抑えることができる。

現在、第三世代手術ロボットの機能性の検証が完了しており、それに基づいて臨床研究が進んでいるという。現有の検証結果が示しているのは、同手術ロボットが泌尿器科、婦人科、胸部外科、一般外科などの適応症における低侵襲性手術を行える能力を有していることだ。将来的には消化器官や尿道などの自然開口部を経由して侵襲性を最小限に抑えた手術の実現も期待される。

術鋭の手術ロボットは、製造大国・中国の地の利を生かして製造費や関連医療コストを大幅に削減することができたという。中国でダヴィンチの手術支援ロボットの販売価格は2000~3000万元(約3億2000万~4億8000万円)で、単孔式内視鏡手術ロボットは3500万元(約5億6000万円)と非常に高価だ。術鋭の手術ロボットは本体だけでなく消耗品の価格もはるかに低いため、病院と患者双方の負担を軽減できる。

(翻訳・畠中裕子)


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