テンセントVSバイトダンス、因縁のライバルが休戦? テンセントゲームズが中国版TikTokに広告配信

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中国ゲーム大手でテンセント傘下の「騰訊游戯(テンセントゲームズ)」が18日、新たなタグライン「Spark More 去発現、無限可能」をPRするための広告を配信した。配信先はテンセントが目の敵としている短編動画アプリ「抖音(Douyin、TikTok本国版)」で、アプリ起動時に放映される。

広告の放映時間は15秒。「詳細を見る」をクリックすると、テンセントゲームズを統括する馬暁軼氏と複数の識者が登場する対談動画が放映される。対談動画は抖音アプリ内ではなく、テンセントの動画配信プラットフォーム「騰訊視頻(テンセントビデオ)」に移動して放映される。

これは意味深長なシグナルだ。テンセントは2018年以降、抖音の運営元バイトダンス(字節跳動)との事業提携を止めていたからだ。

テンセントはこれまで抖音を含めたバイトダンスの製品に対して複数の訴訟を起こしてきた。テンセントゲームズのゲームをモチーフにして制作され、バイトダンスのアプリに投稿された「ゲーム動画(一般ユーザーが制作したコンテンツ)」を削除するよう求めたのだ。この件について、現地裁判所では昨年11月に「当該ゲーム動画の著作権はテンセントに帰属する」との判決が出ており、バイトダンス側に賠償命令が出ている。しかしバイトダンス側も黙ってはいない。中国当局が最近になってITジャイアントに対して独禁法違反を指摘していることを引き合いに出し、バイトダンス傘下の事業がテンセントのSNSアプリ「WeChat(微信)」によって締め付けにあっていると訴えた。

今回、テンセントゲームズが抖音で広告を配信したことは、抖音がより多くの収入を必要としていること、テンセントゲームズもより多くのユーザーを獲得したいと考えていることを示している。双方の需要に則って、今回の事業提携は順調に進んでいるようだ。

米有料ニュースサイトThe informationが昨年8月に報じた情報によると、テンセントは2016年末にバイトダンスのシリーズDで出資者として名を連ねており、2017年には少数だがバイトダンスの株式を取得している。つまり、当時は両社の関係は良好だったということだ。蜜月期は2017年に最高潮を迎えた。中国政府機関が主催するIT業界の年次イベント「世界インターネット大会(烏鎮フォーラム)」の閉会後、テンセントのポニー・マー(馬化騰)CEOを上座に据えた宴席が設けられたが、その席でバイトダンスの張一鳴CEOはかなり上位の席次となっている。マーCEOと張CEOが公開の場で親しげな様子をみせたのはこれが最後だ。

2018年5月、バイトダンスの張CEOはSNSアプリWeChatのタイムラインで、公開ステータスに一部制限をかけているものの、「WeChatが口実をつけて潰しにかかってきている。『微視(Wesee、テンセントの短編動画アプリ)』は(抖音の)パクリだ」と綴り、これにマーCEOが「これは誹謗中傷と理解できる」と反駁した。

さらに1カ月後、バイトダンスのニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」が、オンラインゲームが青少年に与える悪影響について論じたニュースのタイトルに「テンセント」の文言を入れ込んでプッシュ通知したことについて、両社の舌戦が勃発。バイトダンスは完全にテンセントを怒らせてしまい、テンセントがバイトダンスを相手取って訴訟を起こすことになった。

テンセントの主張では、今日頭条や抖音はテンセントの名誉を毀損するコンテンツを大量に配信しており、テンセントを侵害し不当競争を煽っているほか、両社の協業において信用関係を深く傷つけるものだとした。こうしてテンセントはバイトダンスとの提携関係を一時解消したのだ。

しかしこの後、ショート動画の世界で両社の明暗が分かれた。テンセントの微視がDAU(デイリーアクティブユーザー)5000万人に対し、抖音は2018年から2019年にかけて猛成長を遂げ、DAU6億人に達した。1ユーザーあたりの平均利用時間は1日80分となり、ユーザーの時間も関心も独占し、多くの広告主が重要なチャネルとして抖音を奪い合うようになったのだ。

2年以上にわたるバイトダンスとの「貿易禁止令」により、テンセントは膨大な数の新規ユーザーを失ってしまった可能性がある。一方、バイトダンスにとってもテンセントゲームズのように豊富な資金力を有する顧客が後押しすれば、より早く収入源を拡大できるだろう。

昨年末、テンセントゲームズを統括する馬暁軼氏は社内で行われた戦略会議で、アリババ系のゲーム会社「阿里游戯(Alibaba Games)」のタイトル「三国志・戦略版」の成功について、「ユーザー獲得戦略に成功したのであって、製品そのものの成功ではない」と評している。同タイトルは1年以上にわたり、抖音などのフィード広告を通じてユーザーを拡大させてきた。

結果的に、馬氏はテンセントゲームズのブランド広告を抖音で配信することを決めた。

しかし、1回限りの広告よりもはるかに重要なミッションは、いつになったら抖音を通じて新作・旧作を含めた複数のタイトルの新規ユーザーを増やすか、ということだ。
(翻訳・愛玉)

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