なぜ日本のコンビニは元気でECはだめなのか 元セブン-イレブン・ジャパンの碓井誠氏に聞く

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中国にはECを中心とする大手インターネット企業が多数あるが、日本にはそのような企業がほとんどない。それを裏付けるように、中国のEC化率は37%であり、日本では6%台にとどまるというデータがある。なぜ日本でECの普及がこれほどまでに遅れているのか。セブン-イレブン・ジャパンの元最高情報責任者・碓井誠氏の見解を以下にまとめた。

日本の主な小売業態と人口構造

日本の小売業では、百貨店や総合スーパーが低迷しているが、成長し続けているものもある。まず挙げられるのがコンビニで、その店舗数と出店エリアは今も増え続けている。次にドラッグストアで、これはある意味「薬と化粧品も売るコンビニ」だ。そして、ECである。まだ比率は低いが、急成長していることは確かだ。

では、なぜ日本の小売業全体が低迷しているにも関わらず、コンビニとドラッグストアは成長できるのか。その答えは人口構造にあると私は考えている。

日本の総人口は減少し続けており、少子高齢化も長年の課題として認識されている。その一方で、日本の小売業にとって幸運なのは、高齢者に金持ちが多いということだ。日本の総資産の60%以上を60歳以上の高齢者が保有しているとも言われており、彼らには消費する意欲も能力もある。

しかし、高齢者ならではの問題もある。遠出が難しい、スマートフォンの操作が苦手などだ。こうした問題は商品そのもので解決できず、どうしてもサービスが必要となる。そのため、より自宅から近いところで買い物を済ませることができるよう、日用品をすべて一カ所で購入できるよう、日本の小売業はサービスを改良し続けた。その結果がコンビニとドラッグストアの成功である。

世間の変化とビジネスモデル

小売業にとってもう一つの注目すべき現象は、世帯構成の変化である。今の日本では、一人暮らしまたは二人暮らしの世帯が全体の50%以上を占めている。また、女性の社会進出が進み、それにより家事、料理にかけられる時間が減少した。

こうした人口、世帯構成の変化は、最も大事な基礎的なデータであり、ビジネスモデルを構築する上で深く理解しなければならないものである。実際セブン-イレブンでは、20年前からこうした変化に対応していた。プライベートブランド(PB)商品の開発を進めたのもその一環で、現在PB商品が全体の65%を占めている。また、公共サービスを1987年に開始しており、初めは公共料金納付だけだったが、今はATM、プリントアウト、宅配便などにも対応している。

その結果、20年前まではセブン-イレブンの顧客の平均年齢は27歳で、男性中心だったが、今は平均年齢が40歳となり、女性の比率が50%近くまで上昇している。ファミリーマート、ローソンと比べても、セブン-イレブンは年齢層、女性比率ともに顕著に高い。これは、セブン-イレブンが20年かけて人口構造の変化を理解し、より変化に対応できる商品を揃えたためだ。

絶えず変化し続ける社会のなかで、全く変わらないビジネスモデルでは成功し続けることはできない。より積極的に消費者に寄り添っていかなければならない。

社会インフラとしてのコンビニ

ここで最初の疑問に戻ろう。なぜ中国ではECが成長し、日本ではそれほどでもないのか。そのことは、中国には真の意味でのコンビニがなく、ドラッグストアもないのに、日本ではともに繁盛していることと表裏一体である。

どういうことかと言うと、セブン-イレブンのような企業は、単に小売ビジネスをやっているだけではないということだ。セブン-イレブンはプラットフォームであり、店舗がサプライチェーンのハブとなっている。ある意味、セブン-イレブンのやっていることはアリババと同じだ。アリババがECで商品と消費者をつないだのだとすれば、セブン-イレブンはコンビニという店舗で商品と消費者をつないでいる。アリババは中国人の生活に欠かせない一部になったが、セブン-イレブンもそうだ。今やセブン-イレブンは日本全国に出店し、1日の日本の総人口の1/6に相当するお客様が来店している。セブン-イレブンはもはや、日本の社会インフラになっているのだ。

原作者:水滴産品進化営(WechatID: shuidi-academy) 碓井誠

(翻訳・小六)

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