ソフトバンクが巨額投資するラテンアメリカ インド、東南アジアに勝る投資先か

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ソフトバンクは2019年3月、資金50億ドル(約5400億円)のソフトバンク・イノベーション・ファンド(SIF)を設立し、ラテンアメリカのIT企業に投資すると発表した。その後、世界の資本にラテンアメリカ進出ブームが起き、同年にラテンアメリカのスタートアップがベンチャーキャピタルから調達した総額は前年の2.3倍になった。

先駆者であるソフトバンクは、コロンビアの宅配プラットフォーム「Rappi」とブラジルのフィンテック企業「Banco Inter」などのスタートアップに投資したほか、2020年2月にはSIFに10億ドル(約1100億円)を追加し、また1年後には2億ドル(約200億円)の資本注入を行ってラテンアメリカのIT 企業を対象にした特殊買収目的会社(SPAC)を設立した。

ラテンアメリカの基本事情

2019年の1人当たりのGDPは、インド(2099ドル、約23万円)、インドネシア(4135ドル、約50万円)に比べ、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、コロンビアは6000~10000ドル(約65万円~100万円)で、中所得国の中でも所得は高い。

消費の状況もこの点を裏付ける。ラテンアメリカの一部の主要国では、消費がGDPに占める割合は64%以上で中国の39%をはるかに上回る。2019年の新興国の消費者に関する調査レポートによると、ラテンアメリカの消費者の消費意欲はさらに増大する勢いだ。

情報化では、ラテンアメリカのインターネット普及率は70%に達し、1日あたりの使用時間は10時間近くになる。そのうち5時間はモバイルインターネットだ。これらの指標は東南アジア、南アジア、アフリカの発展途上国をはるかに上回る。

2020年世界のインターネット普及率

政策では、コロンビア政府は2010年に「デジタルライフプラン」を発表し、インターネットインフラと関連産業に大々的に投資するとした。今やコロンビアはラテンアメリカのなかでも経済発展が最も安定し、経営環境が最も良好かつ最もイノベーションが活発で、 最も多くのベンチャーキャピタルを引き寄せているラテンアメリカの国の一つだ。他のラテンアメリカの国も積極的にコロンビアの経験を学んでいる。

総じて言えば、ラテンアメリカ市場の基本的な特徴は「市場が大きく、基本的条件が良好で、競争が少ない」ことだ。ECを例に取ると、整ったインターネットインフラにより2020年のECの売上高は20%前後増加した。しかし、中国のECが小売市場全体で24%以上のシェアを占めるのに対し、ラテンアメリカのECは5.6%に過ぎず、成長の余地は大きい。

2018~2023ラテンアメリカECの過去と展望

ラテンアメリカの創業者らは各々戦うのではなく、緊密に連携する創業コミュニティをつくっている。良い例が「Yコンビネーター(YC)」だ。YCは世界で最も有名なインキュベーターの一つで、民泊仲介サービス大手「Airbnb」、米オンライン決済企業「Stripe」、米オンラインストレージサービス「Dropbox」を育てた。YCはラテンアメリカあるいは海外在住のラテンアメリカ系移民の起業家を互いに結びつけており、彼らの興した企業の時価総額は2020年時点で80億ドル(約8700億円)になる。彼らがラテンアメリカ本土で立ち上げた企業の数は58社で、年次総会で一堂に会して経験を共有している。

投資家のブルーオーシャン

2019年、世界のベンチャーキャピタルがラテンアメリカで投資した金額は46億ドル(約5000億円)。一方、米国への投資は1300億ドル(約14兆円)だった。この投資規模は、ラテンアメリカの創業の潜在力と高額な投資リターンとは釣り合わない。

ラテンアメリカでは2018年からユニコーンが次々と登場し、資金調達額はたびたび新記録を更新。そのうえ投資リターンはさらに上昇した。2019年にはインド市場が145億ドル(約1兆6000億円)調達して5社のユニコーンが誕生、東南アジアは77億ドル(約8400億円)調達で2社のユニコーンが誕生した。一方、ブラジルではわずか23億4000万ドル(約2500億円)の調達で6社ものユニコーンが生まれている。

ラテンアメリカのユニコーンの分布

2018年1月、ライドシェア中国最大手の「滴滴出行(Didi Chuxing)」は6億ドル(約700億円)でブラジル最大のライドシェア企業「99」を買収、同社に出資していたベンチャーキャピタルに初期投資の10倍のリターンをもたらした。2018年9月、ウォルマートは2億2500万ドル(約200億円)でメキシコの買い物代行サービスプラットフォーム「Cornershop」を買収。同国史上最高額のイグジットとなった。翌月、ブラジルの電子決済会社「Stone Pagamentos」がナスダックに上場し、10億ドル(約1100億円)以上集めた。

中国のインターネットは過去10年の急成長により製品、データからユーザー、運営、技術、モデルに至るまで成熟した体系と方法論を構築してきた。中国に比べ、ラテンアメリカのインターネットエコシステムの成熟度は大きく劣る。

中国資本のラテンアメリカ進出は経済の基礎とハードウエアのアップデートにとどまらず、インターネット的思考と理念で革新をもたらし、ラテンアメリカの創業者と多くの経験を分かち合える。調査によれば、ラテンアメリカ市民の中国企業全体に対する印象は米国企業やフランス企業に勝り、特に中国のインターネット企業に対する認知度は高い。これも中国資本の参入にはプラスに働く。

しかし現在、中国資本がラテンアメリカで占める割合は低い。ラテンアメリカに投資する海外投資家のうち、71%が米国で、中国はわずか4%にとどまる。一方、東南アジアでは中国資本が主力だ。2016~2019年上半期、中国資本の総投資規模は132億1100万ドル(約1兆4000億円)で、東南アジアのテック企業が世界で調達する資金の46.8%を占めた。インドでも同様に、評価額が10億ドル(約1100億円)を超えるスタートアップの3分の2は、出資者の少なくとも一社が中国のベンチャーキャピタルだ。

ラテンアメリカは中国経済との関連性が低いため、かえって多様性が広げられ、中国本土資本のリスク分散に最適な地域となっている。

(翻訳・二胡)

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