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エレクトロクロミズムを研究するスタートアップ「光羿科技(Ambilight)」がシリーズBで数千万ドル(数十億円)を調達したことを発表した。「経緯中国(Matrixpartners China)」が単独でリードインベスターを努めた。調達した資金は幅広のエレクトロクロミックフィルム生産ラインの建設やビジネス開拓などに充てられるという。
画期的な新技術
光羿科技が研究するエレクトロクロミズムとは、電圧を加えることで材料の光学特性(反射率、透過率、吸収率など)を可逆的に変化させる技術のことだ。同社は自社開発した材料と製造技術を組み合わせてフレキシブルな全固体型エレクトロクロミックフィルム技術の開発に成功し、量産を実現した。従来製品は安定性や信頼性が低く、機能が単一だという不満が上がっていたが、新技術によりこれら問題を解決することができた。エレクトロクロミック材料や光学フィルム生産、全固体電解質、部品製造などにおいては分野をまたいだ高い専門性が要求され、これが同社の技術障壁を作り上げている。
同社は第一世代の低分子液晶、第二世代の無機金属酸化物とは全く異なる画期的なエレクトロクロミック材料を開発した。色変化が速く、色調が多彩であるほか、安定性が高いという特徴を持つ。
フィルム製造にはロール・ツー・ロール方式を採用しており、こうして生産されたフレキシブルフィルム基板のおかげで製品の応用範囲がいっそう広がった。現在は深圳市、南京市、蘇州市、米インディアナ州の4カ所に研究開発・生産拠点を置いている。
活用分野が幅広い期待のスマート材料
エレクトロクロミズムを活用すれば、ガラスなど素材の色を変化させて光の透過具合をコントロールすることができる。現在、エレクトロクロミズムは将来性が非常に大きいスマート材料と見なされており、ビルのカーテンウォールや自動車のバックミラー、サンルーフ、AR・VRグラス、スマートフォンの背面など100億元(約1600億円)規模の市場で実用化が期待されている。
大きなビジネスチャンスをはらんだエレクトロクロミック材料が学術界で脚光を浴びてすでに半世紀近くになるが、材料の合成と精製に高い技術が求められるため、大規模生産には至っていない。大学や実験室で製造されるエレクトロミックデバイスもいまだ試作品の段階にとどまっている。
エレクトロクロミック材料を初めて量産スマホに採用
2020年12月末、世界で初めてエレクトロクロミック材料を使用したスマートフォンの量産モデルがOPPOからリリースされた。採用したのは光羿科技が独自開発したエレクトロクロミックフィルムだった。コンシューマーエレクトロニクス業界では軽量化、低電圧、多彩色、高曲率が求められており、第一、第二世代のエレクトロクロミック材料では実用化に至らなかった。しかし光羿科技は自社開発した素材により技術革命を起こし、消費者向けエレクトロクロミック製品の量産に見事こぎ着けたのだ。
このほかにもエレクトロクロミズムを活用して、スマートフォンの背面ガラス、スキー用サングラス、まぶしさを抑えるバックミラー、調光可能な自動車サンルーフ、ビルのカーテンウォールなど数多くの製品を開発してきた。光羿科技は国際標準規格の認証を取得しているほか、世界の大手企業と戦略提携を結んでいる。
今後はスマートフォン分野で得られた成功経験を他の分野にも活用していくとしており、サンルーフにエレクトロクロミックガラスを採用した世界初の量産車の実現を目指して、消費者が風景を楽しみながらも強烈な日光や熱気の煩わしさから開放されるよう力を尽くしていく。
同社によれば、引き続き研究を続けてエレクトロクロミズムを大規模運用できる経済的な技術にし、この画期的な技術が生活にもたらす利便性を多くの人に体験してもらい、環境保護や省エネに貢献することを目指しているという。
光羿科技は2017年に創業し、シリコンバレーと深圳市に研究開発センターを構えている。チームにはエレクトロクロミズム分野のベテラン技術者が数名いるほか、メンバーの多くが同分野で十数年の経験を有している。
(翻訳・畠中裕子)
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