中国の医薬品外観検査、目視からAIへ 人材難を解消

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AIを活用した産業用の外観検査サービスを提供する「心鑑智控(Seeking Intelligent Control)」がシリーズAで6000万元(約10億円)を調達した。リード・インベスターは「経緯中国(MatrixPartners China)」、コ・インベスターは「華映資本(Meridian Capital China)」で、既存株主の「松禾資本(Green Pine Capital Partners)」「奇績創壇(MiraclePlus)」も増資を行った。

2018年に創業した心鑑智控は、C++をベースにした基礎データ拡張、アルゴリズム最適化といったアーキテクチャや付随するクラウドサービスなどを開発し、AIモデルの開発プラットフォームを作り上げてきた。さらに開発プラットフォームを基盤として、外観検査のコア技術が業種を超えて実用化されている。

同社創業者でCEOの羅暁忠氏は、中国の産業における外観検査の80%がいまだ作業員の目視に頼っていると指摘する。医薬品の包装やレンズ生産などを行う工場では、従業員全体のうち目視検査員がかなりの割合を占める。企業は人件費の高騰や人材難に頭を痛めているだけでなく、欠陥の見逃しがあれば取引先からのクレームや当局からの処分を受けるというリスクを背負っている。

現在、心鑑智控はフロートガラスや医療・医薬品など、従来のロボットビジョンでは対応できない高い識別精度が求められる場面に特化して、ディープラーニングを活用した外観検査を提供している。同社の主力事業は医薬品および包装の検査、ガラス検査、生産ライン上を高速移動する物品の外観検査などだ。

ガラス検査の様子

羅CEOは外観検査における難しさとして以下の3つを挙げている。

第一に工業製品の欠陥データが不足していること。工業製品の欠陥のタイプは多岐にわたるが、生産過程で生じる確率が非常に低いものもある。基準となるデータが不足していると、そのデータを元にしたニューラルネットワークモデルも正確ではなくなり、検査精度が低くなってしまう。

第二に生産ラインへの導入に難度が伴うこと。外観検査システムと既存の生産ラインの運行ペースや設備の調整には高い技術と経験を必要とする。

第三にソリューションの再現性が低いこと。生産ラインによって環境も少しずつ異なってくるため、めまぐるしく変化する環境でシステムを適応させることは容易なことではない。

心鑑智控はこれらの難点を克服するため、自社開発したAIモデルのトレーニングプラットフォームを活用して、データからモデル、モデルから生産に至るクローズドループを作り上げた。これにより欠陥サンプル不足や製品の頻繁なモデルチェンジといった問題にも対応できるようになり、さまざまな業種で外観検査サービスを迅速に導入できるようになった。

さらに工業製品の欠陥データ不足という問題を解決するために特許技術を独自に開発した。これにより少ないサンプルでも高精度のニューラルネットワークモデルを短期間でトレーニングできるようになった。

実際の成果としては、高い精度と信頼性が求められる医薬品業界で目視に替わるスマート検査モジュールを提供しており、業界大手の顧客企業から高い評価を得ているだけでなく、継続的な取引に至っている。

ガラス検査の分野では、腕時計の風防ガラスやめがねのレンズにフォーカスし、同業界向けの検査設備をいち早く開発した。風防ガラス検査設備はすでに量産が始まっており、レンズ検査設備も中国最大のレンズ生産基地で活用されている。

このほか生産ライン上を高速移動する物品に特化した360度外観検査を打ち出し、海外製の自動光学検査機が抱える機能面での限界をうまく補っている。

心鑑智控は広州市、蘇州市、上海市、丹陽市などにオフィスを開設し、珠江デルタ地域や長江デルタ地域で事業を展開している。開発チームの主要メンバーは国内外のトップクラスの大学出身で、マイクロソフトやAMSL、ファーウェイなど有名企業で15年以上のキャリアを有する。
(翻訳・畠中裕子)

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