京東(JD.com)、3億円ボーナスで従業員にテコ入れ 混戦の共同購入サービスを強化

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BATを筆頭とした中国の大手IT企業は過去10年、モビリティ、デリバリー、モバイルペイメントなど数々の戦場でつばぜり合いを繰り広げてきたが、そこにはEC超大手「京東集団(JD.com)」の姿はなかった。京東は自身の本業に専念し、時価総額1000億ドル(約10兆7000億円)の大企業に成長している。

そのECの世界で盛り上がっているのが「地域コミュニティ向け共同購入サービス」だ。前もって注文を募り、配送した商品はユーザー各自がピックアップするというビジネスモデルは、在庫や配送コストを抑えられるうえ、「団長(集合住宅、あるいは数百メートル圏内に住む会員をグループチャットを通じて取りまとめるリーダー役。グループ内で日々のおすすめ商品を共有し、販促を行う。商品が配送されたときは各会員に通知し、指定場所まで受け取りに来てもらう)」が存在することで顧客獲得コストも低くて済む。

京東の地域コミュニティ向け共同購入サービス「京喜拼拼(Jingxipinpin)」は過去3カ月、12省70都市で新たに事業をスタートした。とはいえ、情勢は決して明るくはない。ライバルである「拼多多(Pinduoduo)」傘下の「多多買菜(Duo Duo Maicai)」の1日の受注件数は2500万件を超え、「美団(Meituan)」傘下の「美団優選(Meituan Select)」はピーク時で1日2700万件となっている。京東は参入が遅かったうえ、事業拡張のペースが緩慢だ。

すでに大手競合がひしめく中、後発者の京東は如何にすれば市場で一角を占められるだろうか。

3億円ボーナスでテコ入れ

昨年11月末、長らく経営の一線を退いていた京東集団のリチャード・リウ(劉強東)CEOが地域コミュニティ向け共同購入サービス事業の陣頭指揮を執ることとなった。2018年から続けてきた同事業は一向に芽が出なかったが、リウCEOの登場がカンフル剤となりそうだ。リウCEOは今年の旧正月前から京喜拼拼のエリア責任者を集めた朝会を毎日開催。各エリアでシェア1位を獲ったチームには2000万元(約3億3000万円)のボーナスを振る舞うとしてメンバーを鼓舞した。

ある業界関係者は、「地域コミュニティ向け共同購入サービスには、コストコントロールや品質管理、データセキュリティのためにも自社倉庫や自社物流を持つことが必須。京東の持つリソースや企業DNAは競合より優れているはずだ」と分析する。

持久戦に持ち込みたい京東

京東の戦略は競合他社とは明らかに異なる。社内では事業開拓、社外では優秀な事業体に出資と、社内外のリソースを織り交ぜて展開している。京東は同業の「興盛優選(XINGSHENG SELECTED)」の7億ドル(約760億円)分の株式を取得している。同社で管理職を務める人物によると、京喜拼拼は二手に分かれて業務を進めており、一つのグループは京喜拼拼を、もう一つのグループは興盛優選の業務を引き継いでいるという。

2020年第2四半期、前出の拼多多の多多買菜や美団の美団優選に加え、モビリティサービスの「滴滴出行(Didi Chuxing)」が「橙心優選(Chengxin Youxuan)」として地域コミュニティ向け共同購入サービスに一気に参入してきた。3社は潤沢な資金力を駆使して大々的に値引きサービスを行うなど、スピーディーに事業を展開している。しかし、前出の京東の管理職は「京東は持久戦を望んでいる。ハイペースを過度に追求することなく、値引き合戦も意味がないと考える」と述べている。

京東が地域コミュニティ向け共同購入サービスで一定のシェアを獲得したいならば、サプライチェーンなどの弱点を迅速に補強しなければならない。

京喜拼拼でサプライヤー募集を統括する責任者は、「注文が確定してから仕入れを行うモデルでは、配送のスピード感がカギを握る。集中倉庫と中継倉庫を用いる物流モデルの場合、サプライヤーは受注から数時間以内に商品を揃え、集中倉庫へ納品する必要が出てくるが、これは高難度だ。そのため、京東の有力な既存サプライヤーの多くと協業できず、すべて自社で見つけた現地サプライヤーだ」と話す。

どのプレイヤーも資金には困っていないだけに、32万人の従業員を抱える京東は業務の効率を高め、覚悟を決める必要がありそうだ。
(翻訳・愛玉)

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