自動運転に重点投資のファーウェイ、市街地走行のデモ映像では高い完成度を披露 

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「このモデルは市街地でドライバーの介在なしに1000キロメートルもの自動運転を行うことができる。テスラ車に比べてずっと優秀だ」

先ごろ開催されたファーウェイのアナリストサミットで、輪番会長の徐直軍(エリック・シュー)氏がスマートカー事業について放った一言が波紋を呼んだ。

しかし最近公表された自動運転のデモンストレーション映像が、上述の発言を強力に裏付けている。自動車専門メディア「42号車庫(42HOW)」が公表した映像では、ファーウェイの自動運転技術を搭載した自動車が市街地をスムーズに走行し、信号や交差点、路上の歩行者や二輪車、対向車、夜間運転など複雑な道路状況にも適切に対処している様子が映っている。

ファーウェイが大量のリソースをつぎ込み、開発に8年近くを費やした結果、オンライン化、自動運転、動力プラットフォーム、居住性、クラウド管理を含むスマートカー・ソリューション事業が構築された。

完全自動運転の実現は間近

デモンストレーション映像で使用された車両は、ファーウェイが中国自動車大手「北京汽車(BAIC)」と共同開発した「ARCFOX αS」をベースにしたもので、北京汽車が生産と販売を行い、ファーウェイが自動運転技術などのスマートカー・ソリューションを提供する。

映像では交差点を左折(編者注:中国は右側通行なので日本での右折に当たる)する場面が頻繁に出てくる。中には対向車が中央線をはみ出し、電動自転車が車の間を縫うように走り、前方では歩行者が道路に飛び出すというえげつない場面もあったが、車両は脇により低速で通過することで安全に対処した。この適切な対応にはベテランドライバーも舌を巻く。

自動運転技術の名称からもファーウェイの自信のほどがうかがえる。現在主流の「運転支援技術」とは明確に区別する「高度自動運転フルスタックソリューション(Autonomous Driving Solution、ADS)」という名称を採用しているからだ。これ以前に新興EVメーカー「小鵬汽車(Xpeng)」の自動運転機能「ナビゲーションガイドパイロット(NGP)」がメディアで持ち切りだったが、同社は一貫して「運転支援システム」とのスタンスをとっている。テスラの「Full Self Driving(FSD)ベータ」も完全自動運転にはほど遠い状況だ。

ファーウェイの自動運転技術が実用化されれば、ドライビング体験は大きく向上するだろう。目的地を設定すればルート検索や運転、障害物回避など全てを車両が自動で行ってくれる。もちろん運転免許証は必須であり、車両にも気を配っている必要があるが、高速道路上でしか使用できない運転支援機能に比べればずっと快適と言えるだろう。

自動運転技術の開発を行うスマートカー・ソリューション事業部は、ファーウェイがここ数年特に資金を投じている分野で、年内に10億ドル(約1100億円)以上を投入することを表明している。とはいえファーウェイは自社で自動車を製造するのではなく、ファーウェイの自動運転技術ブランド「Huawei Inside(HI)」を打ち出し、自動車メーカーとの提携により生産を行う。

ARCFOX αSのHIモデルにはLiDARが3つ、ミリ波レーダーが6つ、カメラが9つ搭載されているほか、フロントガラスにもダブルカメラ、望遠カメラ、超広角カメラが設置されており、過熱するスペック競争の中でもひときわ大きな存在感を放っている。

このスマートカー・ソリューションにはAI演算能力が400TOPSを超えるチップが採用されている。テスラの自動運転コンピューター「HW3」が処理能力144TOPS、NVIDIAが来年リリースを予定している車載チップ「Orin」が254TOPS、モービルアイが2023年に発売を予定しているカメラ画像の解析チップ「EyeQ6」がわずか67TOPSにとどまることを考えると、ファーウェイのチップがいかに高性能かが分かるだろう。

ファーウェイの自動運転技術は2022年下半期のリリースが計画されているが、現段階ですでに高いセンサー規格と処理能力、アルゴリズムを活用し、驚くほどの成果を上げている。またスキャンライン数96のLiDARなど部品の独自開発にも成功しており、ソリューション全体のコスト削減が望める。都市道路で自動運転可能なARCFOX αSの上位モデルは販売価格42万9900元(約720万円)で、自動運転HIを搭載していないモデルに比べて10万元(約170万円)近く高い。

この価格設定は、現在主流のミドル・ハイクラス自動車の価格20~30万元(約330~500万円)にかなり寄せてきたという印象だが、レベル4相当の自動運転を実現したように思われるファーウェイの技術にもまだ解決すべき課題が残っている。

例えば、走行ルートの設定は高精度マップのデータに依存しており、センサーが検知した道路標示や信号、他の車両や歩行者などの情報よりも優先度が高くなっている。今後ファーウェイの自動運転技術がどれほど広く浸透するかは、全国規模で広範囲にわたる高精度データの採取を完了し、質の高い長期メンテナンスや意思決定モデルの最適化を提供できるかどうかにかかっていると言えるだろう。

作者:雷科技(WeChat ID:leitech)、白徴明

(翻訳・畠中裕子)

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