AIが面接、合否判定。ブルーカラー大量採用の新潮流

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人材の大量採用をインテリジェント化し効率改善を図る「鰐梨科技(Avocado)」は、AIとSaaSを活用する。同社は2019年8月に設立され、グレーカラーやブルーカラーの人材を大量採用する企業にオンラインのマネジメントシステムを提供している。(編集部注:グレーカラーとは、ホワイトカラーかブルーカラーかでは分類できない、あるいは双方の性質をあわせ持つ業種を指し、技術職や専門職に多い)

中国のテック企業の間では、ホワイトカラー人材はオンラインで採用することが主流となってきており、新卒採用やテクノロジー系人材の採用管理では人事業務向けのSaaSを採用する企業も増えてきている。一方で、グレーカラーに分類され、なおかつ大量採用する必要が生じるオンライン講師や販売員、あるいはブルーカラー人材を採用するシーンでは、デジタル化は遅々として進んでいない。企業自身の採用力が足りないためにHRO(人事アウトソーシング)を利用せざるを得ないケースもある。

コロナ禍がデジタル化を推進したとはいえ、グレーカラーやブルーカラー人材の採用に至ってはオンライン化率は30%にも至っていないのが現状だ。ブルーカラー人材の多くは履歴書を提出できなかったり、仮に履歴書があっても採用判断に充分な情報が記載されていない場合も多い。しかし、労働集約型の大企業にとっては、大量採用を実行できる力が将来のコアコンピタンスとなる。デジタル化のすう勢が大きくなることは必至だ。

中国の労働力人口はおよそ10億人。1億人はホワイトカラー、4億人はグレーカラーおよびブルーカラーで、小売業やサービス業従事者は1億人以上だ。大量採用市場は1兆元(約16兆7000億円)規模に達し、企業は年1億元(約16億7000万円)以上のコストを割いている。数万人規模の応募者がいる中で、実際に面接をするとなるとリソースの重複やコストの無駄は深刻だ。中国企業が一般社員を1人採用する際にかかるコストは平均2000元(約3万3000円)で、繁忙期の物流業や製造業などでは5000元(約8万3000円)に跳ね上がることもある。人口ボーナス期が終わり、このようなコストは上がる一方だ。

「将来の大量採用は必ずオンラインに移行する」。鰐梨科技の創業者でCEOの陳龍氏はこう述べる。

さらに、モバイルインターネットが普及し、動画コンテンツが広範に広まった現在、一般消費者は多くの時間を動画視聴に費やし、動画やライブ配信を視聴して消費行動を行っている。こうした行動が習慣化され、顧客教育の必要性が薄まった今、AIと動画を駆使したオンライン採用が有効だと鰐梨科技は考える。

鰐梨科技のオンライン採用は3つのサービスに分かれる。

一つ目は、AIによる動画面接だ。ビデオ通話で面接を行い、動画やテキストを分析する。大量採用が求める人材は比較的固定化されていることから、データ収集とアルゴリズムによって評価を自動化でき、合否判定の手間が大幅に省け、客観的な意思決定が可能になる。

二つ目は、大量採用を実施する企業向けのスマート採用管理システム(ATS)だ。動画などのコンテンツは大量のデータを生成し、人材採用および人材評価に優れた判断材料を提供してくれる。これらのプロセスを標準化することで、大勢の求職者に関するリソースを管理できる。

三つ目は、ライブ配信を通じた求人活動だ。ライブで会社説明会を行い、大勢の候補者と信頼関係を築き、企業文化を理解してもらう。

同社の陳CEOはハルビン工業大学および南カリフォルニア大学でコンピューターサイエンスを専攻。自然言語処理やAIを研究し、中国最大のサーチエンジンを運営するバイドゥ(百度)や、マイクロソフトのクラウドサービス「Azure」などでキャリアを積んだ。AIやシステム開発、法人向けSaaSなどで10年以上の経験を有する。その他のコアメンバーも、HRや人事採用などで10年以上のキャリアを持つ。

同社の収益源は法人顧客のアカウント料や、AI面接の実施回数に応じた利用料で、平均客単価は約6万元(約100万円)だ。取引先は大手不動産デベロッパー「龍湖集団(Longfor Group)」、EC大手京東集団(JD.com)傘下の物流企業「京東物流(JD Logistics)」など30社以上に上り、年内には100社を突破すると見込んでいる。取引先企業では採用面接の7割をカットし、書類審査のスピードも43%上がったとのことだ。

「採用側と応募側による情報交換の密度を高めてコミュニケーションコストを減らし、双方が選ぶ側に立てるプロセスを生み出したい」。陳CEOによると、人材採用においては往々にして応募もの側が不利な立場に置かれ、時間や労力を割くことになる。採用基準が不完全で応募者側の選択権が軽視される場合もある。

鰐梨科技は今後、採用過程が長期にわたり、大量の履歴書をさばくことになる新卒採用や、人材不足に加えて求める人材が頻繁に変わるIT業界の人材採用などでAIを活用し、採用側・応募側双方にデータドリブンの意思決定を促していく方針だ。
(翻訳・愛玉)

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