中国建設テック、AIが施工図を自動作成 コスト9割減

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AIを導入した建築設計プラットフォームを開発する「品覧智造(Pinlan)」がシリーズAで数千万元(数億円)を調達した。出資を主導した「順為資本(Shunwei Capital)」のほか、既存株主の「梅花創投(Plun Ventures)」「快創営(Innovation Camp)」も出資を行った。

2018年に設立された同社はAIを活用した物体認識技術プラットフォームの研究に早くから取り組んできた企業で、現在は特に不動産企業や設計事務所向けAI設計サービスに注力している。自社開発の建築設計AIプラットフォーム築絵通は、コンピュータビジョンや建築設計ナレッジベース、強化学習アルゴリズム生成をベースにして施工図を自動で作成できる。また建築プランをアップロードすることで施工図を自動的に完成させ、図面作成の効率と品質を向上させることもできる。

AIが建築設計の自動化、標準化を実現

不動産業界では開発や運営などさまざまな分野でデジタル化が進んでいるが、最も基本となる建築設計は依然として人手に頼っており、スマート化が遅れている。住宅設計自体の難度は高くないものの、制作期間が長く、手直しのコストが高いなど課題も多い。一般的な集合住宅を設計する場合、設計案はベテラン設計士3人が1カ月で作成するのに対し、施工図を同じ工期で仕上げるとなると15人ほどを必要とする。技術難度の低い施工図の作成に多くのコストがかかっているのが現状だ。

このため品覧智造は、建築設計の中でも特に施工図の制作にフォーカスした。AI活用の建築設計プラットフォームである築絵通では建築面積に応じたサービス料を徴収する方式を採用しており、高い人件費やアウトソーシング費用の負担を軽減できる。築絵通を利用した場合、施工図作成の一般相場に比べてコストを10分の1にまで抑えることができるという。

建築設計の90%自動化を目指す

20年前にAutoCADなどの設計ソフトが普及するようになって、建築設計士は手書きの図面から解放された。同様にAIを活用した図面の自動生成も建築設計業界を大きく変えるトレンドになると、品覧智造の李一帆CEOは確信している。

「設計士が工法や基礎的な配管配線などの設計に多くの時間を費やすのではなく、デザインやアイデアを練ることに集中できるようになる」

では建築設計の分野でAIを効果的に活用するにはどうしたらいいのだろうか。これは品覧智造が取り組まなければならない課題であり、同時に先行者としての強みともなる。AIを活用した建築設計サービスを提供する初の企業として、品覧智造は業界基準の制定や機能、収益モデルなどさまざまな方面で建築設計AIの定義づけを行うことが求められる。

現在、建築設計AIの市場はかなりの規模に上っている。2019年、中国の新築住宅販売額は16兆元(約270兆円)近くで、そのうちの2%を設計費用が占めている。施工図の作成費用が設計費全体の32%を占めていることから計算すると、住宅設計だけでもその市場規模は1000億元(約1兆6800億円)ほどに達する。さらに品覧智造の取引先にはホテルや実験施設の設計を専門に手がける企業も少しずつ数を増しており、今後の事業展開に新たなインスピレーションをもたらしている。

昨年中、品覧智造が締結した契約の総売上高は1500万元(約2億5000万円)に達しており、今年は2000万元(約3億3500万円)を突破すると見込まれている。現在、大手設計事務所50社が築絵通プラットフォームの活用とテストに参加しており、年内には住宅設計プロジェクトを1000件手がけることに加え、設計事務所100社を安定した取引先として開拓することを目指している。

大局を見ながら丁寧な事業展開を行い、継続的な投資を惜しまないこと。これが李CEOの掲げる成長理念だ。過酷な施工図作成のプロセスが業界に大きな弊害をもたらしている中、AIアルゴリズムで業務をサポートすることでスタッフの負担を軽減できると李CEOは考えている。

「AIを建築設計分野に活用すれば、設計業務がより容易になり、設計士もイマジネーションを十分に発揮して社会の役に立つ優れた作品を生み出せるようになる。将来的には建築施工図の制作において自動化率90%以上を実現したい」
(翻訳・畠中裕子)

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