ウルトラマンが中国女性に刺さりまくる理由。時空を超えた強さとエモさ

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中国でウルトラマン人気が再燃している。

「抖音(Douyin、TikTok中国版)」といった短編動画プラットフォームからメッセンジャーのスタンプまで、方々でウルトラマンが出現する。今年は「ウルトラマンティガ」放送25周年ということで、中国のスマートフォンメーカー「OnePlus(一加)」の新機種「9R」のアンバサダーにも起用されている。

画像出典:OnePlus公式サイト

昨年の中国ではウルトラマンのリバイバルブームが社会現象級に盛り上がりをみせた。中国版ツイッター「微博(Weibo)」では2020年8月から現在までの期間、検索ワードのランキングにウルトラマン関連のワードが16もランクインしている。

SNSだけでなく、消費の世界でも活発な動きがみられる。2019年7月、中国の大手ECプラットフォーム「天猫(Tmall)」は「二次元IP(アニメ、漫画などのコンテンツ)による商品販売力」を集計したランキングを発表し、若年層の間ではウルトラマン関連の商品が最も売れ行きが良いことがわかった。

同じく大手ECプラットフォームの「タオバオ(淘宝網)」も2020年の検索ワードランキングを発表し、「ウルトラマン」のキーワードは2億回以上検索されたとしている。

中国国営テレビ局の中央電視台(CCTV)も2020年の話題の人物として、ウルトラマンを表彰している。

画像出典:インターネットからのキャプチャー

前述の通り、今年は「ウルトラマンティガ」25周年ということで、元来400元(約6800円)のフィギュアに1000元(約1万7000円)の値がつき、中古品取引プラットフォーム「閑魚(Xianyu)」でも2倍以上のプレミア価格がついている。

画像出典:時趣(SocialTouch)

AIマーケティング会社「時趣(SocialTouch)」のインサイト・エンジン(種々のデータを基に意思決定を支援するAIエンジン)が、ネット上で「ウルトラマン」に言及した人々を対象に観察・分析を行ったところ、ウルトラマンを好む人々の約7割が女性で、大多数が1990年代生まれだということがわかった。とはいえ、幅広い年齢層に支持されているという。

多くの熱心なファンに支えられ、ウルトラマンはメッセージスタンプや笑いのネタ、ショートムービーなどを介して爆発的に拡散し、その人気は「宇宙レベル」で上昇している。二次元IPはトップレベルの人気を誇る芸能人以上に商品の売れ行きを伸ばせる存在であり、中国の市場調査会社iiResearch(艾瑞諮詢)の発表したデータによると、中国の1990年代生まれは漫画・アニメ関連の商品に1人平均年間1500元(約2万5000円)を費やすという。漫画・アニメ派生商品の年生産高は1000億元(約1兆7000億円)以上に達している。

ウルトラマンを利用したブランドのマーケティング戦略には、以下3つのポイントがある。

1)1990年代生まれに受けるノスタルジーマーケティング
インターネットの普及により情報源が著しく細分化した現在とは異なり、テレビが主たる媒体だった20年前、ウルトラマンは老若男女が知る存在であり、当時子どもだった世代にとってアイドルとなった。現在ではこれほどまでに多数のファンを生み出すIPは生まれにくい。こだわりの強い1990年代生まれの男性の多くに「刺さる」マーケティングは特に難しい。

ウルトラマンティガがスマートフォンのアンバサダーに起用されるよりずっと前から、ウルトラマンはあらゆるコラボ商品においてノスタルジーマーケティングの素材として活用されてきた。2019年には香港の腕時計メーカー「Undone(アンダーン)」がウルトラマンコラボのウォッチを50本限定で発売し、2020年にはユニクロがウルトラマンコラボの親子コーデTシャツを発表。タオバオで月6000点以上売れている。

2)SNSを前提としたマーケティング
従来とは異なり、インターネットに基盤を置くマーケティングが主流の現在、いずれの商品にもインターネットとの親和性が求められる。アクセスやフォロワーを集め、SNSで拡散するような属性が必須となり、商品を世に出すブランド側もこれらを運営する能力が求められるようになった。商品にはSNSに適合した属性を持たせ、フォロワーがこぞってシェアしたくなるような仕掛けがなされる。

IPを使ったコラボ商品に最も顕著な特徴は、IPを起用するブランド側が自身のブランドに新たな風を吹き込み、SNSマーケティングを切り口としてさらなる付加価値をつけることを目的としていることだ。

3)単なるIPを超えたアイコンに
病気で臥せっている子どもに「誰から勇気をもらえる?」と問いかけたら、迷わず「ウルトラマン」と答えたというニュースがあったように、ウルトラマンに求められる特別な存在意義は、IP商品としての価値を上回るものだ。

ウルトラマンジャックが残した「ウルトラ5つの誓い」はその最たるもので、簡潔でありながら、日常生活や青少年の特徴に寄り添った内容だ。ファンなら暗唱できるだろう。

販売数や結果ばかりが求められるようになりつつある現代、創意を失わず、優れた広告を世に出すブランドも存在する。優れた広告は「消費」という文言を徹底して脱構築し、人々に無償の消費を提供する。商品ありきで生まれた存在ではあるが、もはや商品の後ろ盾を必要とせず、単に商品に寄与する存在でもなく、むしろブランドとユーザー間の共鳴関係にさらなる深みをもたらす存在となっている。

作者:WeChat公式アカウント「時趣研究院(ID:SocialTouch2020)」
(翻訳・愛玉)

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