「アリババは私のものではないが、私は永遠にアリババと共にいる」ジャック・マーが手紙で1年後の勇退を表明

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教師の日、そして自身の54歳の誕生日でもある9月10日、アリババグループの創業者、馬雲(ジャック・マー)会長は、10年間温めてきた「後継者継承プラン」を公表した。

マー会長は「教師の日、おめでとう」というタイトルの手紙を公表。アリババが20周年を迎える1年後、つまり2019年9月10日に会長を退き、張勇(ダニエル・チャン)CEOを後任に据えると表明した。

マー会長は10年前に、アリババ内にパートナー制度を創設し、規模が拡大してもイノベーションを失わないための施策や、リーダー継承問題に取り組んできたと説明。「独自のカルチャー、人材継承システムをつくりあげることで、企業が成長を続ける上で直面する難題を解決できると信じ、10年間努力と実践を重ねてきた」と述べた。

1年後に会長を譲るダニエル・チャンCEOについて、「傑出したビジネスリーダー」と評価。チャン氏を中国で最も素晴らしいCEOだと称賛し、彼を後継に任命した自身の正しさを誇った。

マー会長は完全引退するわけでなく、今後もアリババの「000001号社員」でありパートナーだ。おそらく今後も、アリババグループの精神的な支柱であり続けるだろう。

「マー先生」としての活動も、続けるだろう。彼はアリババ貧困削減基金(Alibaba Poverty Relief Fund)の主席であり、ジャック・マー財団(Jack Ma Foundation)のファウンダーであり、青年企業家や中小企業への助言も行っている。彼は、「私は教育の世界に戻りたい。好きなことをやれば、比類なき興奮と幸福を感じられるだろう」とも述べている。教育、貧困対策、環境保護、公益はいずれもマー会長が力を入れてきた分野であり、今後、さらに大きなエネルギーを投じるだろう。

マー会長は従業員向けにもメールを送り、文末を「アリババは私のものではないが、ジャック・マーは永遠にアリババを離れることはない」と結んでいる。

以下は、ジャック・マー会長が公表した手紙の訳文。

教師の日、おめでとう!

アリババのお客様、従業員、株主の皆様。

今年はアリババの19周年でした。私はこみあげて来る思いを、皆様に発表します。取締役会の承認を経て、1年後の本日、つまり2019年9月10日、アリババ20周年の節目に、私はアリババの董事局主席(董事長、トップに相当)を退き、後任をアリババグループCEOのダニエル・チャンに託します。今日からダニエル・チャンと2人で、継承準備を進めていきます。2019年9月10日以降も、私はアリババグループの取締役会メンバーに残り、2020年の株主総会に出席します。

これは私が以前から熟慮を重ね、10年間準備を進め、今日ようやく実現したものです。アリババのパートナーが同意してくれたこと、取締役会が承認してくれたこと、さらにはアリババの仲間や彼らの家族全てにも感謝しなければいけません。19年にわたって私を信頼し、支えてくれ、一緒に努力してくれたからこそ、私たちは自信と能力をもって、この日を迎えることができました。アリババは個人の資質に依存した体制から、組織や人材、カルチャーを軸とした企業へとステップを昇ります。

1999年、皆でアリババを立ち上げたとき、私たちは中国と世界に誇れる企業をつくり、102年間成長を続けるという志を立てました。我々はその時、企業と102年伴走できる人などいないと認識していました。統治制度、カルチャー、そして人材育成を整えずには成長は続かないと。企業は創業者だけに頼ることはできません。能力、精神力、体力の面からも、誰もが永遠にCEOや董事長の職を務められないと私はよく知っています。10年前、ジャック・マーが会社を去った後も、どうやってアリババを健全に成長させられるのかと、私は自分に問いかけました。私たちは、確固とした制度と独自のカルチャーをつくりあげ、脈々と人材を育成することで、ようやく企業の継承と成長という難題を解決できるのです。このために、この10年、私はたゆまぬ努力と実践を続けてきました。

私は教師になるべく教育を受け、今日まで走ってこられたことを大変幸運に思います。企業の将来への責任は、自分が負うべき責任です。企業内のさらに若く、能力と才覚のある人物をリーダーに据え、ビジネスを継承させることは、非常に重要なミッションです。私たちは全世界の中小企業、若者、女性たちの発展をお手伝いするというミッションとビジョンを持ち、奮闘してきました。このミッションは私たちの初心であり、やるべきことであり、責任です。このようなミッションを信じ、実現するためにはより多くのジャック・マーが必要であり、数代にわたるアリババの人々の奮闘が必要なのです。

今日のアリババの最も誇れるものは、アリババの事業や規模、業績ではなく、私たちが本物のミッションとビジョンに根差した企業になったことです。私たちは新たなパートナー制度を設立し、独自の文化とよきリーダーたちによって、企業の継承に必要なしっかりとした基礎を固めました。実際、2013年から私はCEOを譲り、すでに現在の体制で5年を滞りなく過ごしました。

私たちがつくり上げたパートナー制度は大企業のイノベーション問題、後継者問題、そして将来を担う力の問題、カルチャーの継承問題もクリエーティブに解決してきました。この数年、私たちは自分たちの制度や人材カルチャーのシステムを絶えず考え、改善を重ねてきました。人、あるいは制度だけでは問題は解決しません。制度と人、カルチャーが完全に融合してこそ、企業は永続的に成長できるのです。私は現在のアリババのパートナー制度と、アリババが守ってきた文化を誇りに思います。今後、より多くの顧客、従業員、株主のサポートと信認を得られると信じています。

1999年の創業の日から私は、未来のアリババには、絶えず良将を排出する人材チームと、代替わりしても発展できる継承システムが欠かせないと言ってきました。19年の努力が実り、今日のアリババは人材の質、量ともに世界の一流に属すると言えます。教師出身の私にとって、今のメンバー、リーダーたち、そしてミッションや価値観を重視する独自の文化、ダニエル・チャンに代表されるように傑出したビジネスリーダーや専門人材を生み出せたことを、大変誇りに思っています。

ダニエル・チャンがアリババに参画してから11年が経ちました。アリババグループのCEOに就任してからは、卓越したビジネスの才能と、安定したリーダーシップを発揮し、13四半期にわたって、アリババの業績の持続的な成長を実現しました。ダニエル・チャンはスーパーコンピューターのようなロジックや思考力を有し、堅いミッションとビジョンを持ち、非常に勇敢で、仕事に全てを捧げ、未来のイノベーションデザイン、新たなビジネスモデル、新業態に取り組んできました。彼は「2018年の素晴らしい中国人CEOランキング」でトップに選出され、その名に恥じない人物です。彼と彼のチームは既にお客様、従業員、そして株主の信頼を獲得しています。アリババの「聖火リレー」は彼と彼が率いるチームに託されました。私はこれが、自分にとって一番正しい決定だと考えています。この数年、私とダニエル・チャンは一緒に走ってきました。私は彼と彼が率いる次世代のアリババリーダーたちに大きな自信を持っています。

馬雲(ジャック・マー)
2018年9月10日

(翻訳・浦上早苗)

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