スタートアップ注目記事

ユニコーン目指す中国注目スタートアップ(一):スマートペット用品「鳥語花香」

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2020年の中国の新規上場企業は545社で、直近6年間で最多を記録している。また中国のVC(ベンチャーキャピタル)は2000社を超え、2019年の中国スタートアップへの投資は約7500億人民元(約12兆円)に上る。評価額10億ドル以上の未上場スタートアップ企業の輩出数で世界2位を誇る中国は、すでにスタートアップ大国と言っても過言ではない。

しかし、私たちが日頃見聞きする中国スタートアップ情報は、いわゆるユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の非上場企業)に関することが多い。一方で多くの中国人起業家がユニコーン企業を目指してし烈を極めている現実もある。

本記事では、ユニコーン企業を目指して中国ペット市場をターゲットに起業した上海鳥語花香寵物有限公司の王永来CEO(以下、王CEO)に、起業経緯や資金調達の過程、日本企業への印象などについてインタビューした。王CEOは弊社の中国スタートアップ・ベンチャー企業ネットワークの中で、最も注目されている起業家の一人だ。

王CEOが挑戦する中国ペット産業の「今」

中国で飼われているペット(犬・猫)の数は2020年に1億匹に達し、今や中国のペット市場は米国に次いで世界 2 位となる3兆円を超える規模にまで成長を遂げている。市場規模が拡大する背景には、近年の経済成長で中国の人々にもペットを飼うゆとりが生まれたことや、都市部で一人暮らしをする若者の間でペットに癒しを求める人が増えていることが挙げられる。

中国ペット産業に対する投資は2020年だけで63回に上り、投資総額は約71億元(約1,136億円)に達している。投資ラウンドがシリーズAの創業して間もない企業が多いことから、ペット産業で続々とユニコーン企業が生まれるのはこれからだと注目されている。

市場の将来性・成長率・市場のチャンスからペット事業の「起業」を決意

ーーまずは、王CEOの事業に関してお伺いさせてください。スマートペット領域で起業した理由はなんですか。

2019年に上海で、スマートペット用品を開発する上海鳥語花香寵物有限公司を創業しました。私は大学で獣医学を学んでいたのですが、スマートペット用品事業で起業したのには3つの理由があります。

まず、市場の将来性です。中国ペット産業の市場規模は日本を抜いて、米国に次ぐ世界第 2 位になっています。欧米諸国では世帯の30%以上がペットを飼っているのに対して、中国ではまだ10%にも達していません。中国の人口と富裕層の増加、これからのペット文化の普及から、中国ペット市場のポテンシャルは非常に高いと考えました。

次に、市場の成長率です。中国のペット産業は、市場が細分化する方向へと転換しつつあります。ペット市場全体の成長率は130%ですが、その中でも、IoT給餌器や自動掃除トイレといったスマートペット用品の分野は300%の勢いで伸びています。この市場であれば成長チャンスをつかめると思いました。

そして、市場のチャンスの多さです。ご存知の通り、中国のペット産業はまだ始まったばかりですが、中国の製造業は国外メーカーからのOEMを受けることで成長しました。つまり、中国のスマートペット用品の領域はまだまだ黎明期ですが、国内のモノづくりの基盤はすでに整っていると言えます。この領域ならば、市場シェアを早期に狙えるチャンスがあると判断しました。

ペットは大切な家族の一員という認識が中国でますます広がっています。私の会社では「若い消費者とペットの距離を縮めるべく、人とペットの調和のとれた生活をデザイン力で解決し、消費者に繊細で愛情のある生活を提供する」をビジョンに、積極的に事業展開をしていますす。

事業の競合は自分自身、強い経営者の背中を社員に見せることが重要

ーー次に、中国のスタートアップ企業の環境についてお伺いします。現在の中国ベンチャー企業の起業環境はどうなっているのでしょうか。

中国の起業環境を一言でいえば、ビジネスチャンスは大きく、同時に競争も激しいです。そして、中国の経済成長をマクロ的に見ると、中国は海外向けの輸出から内需志向へと転換している時期であり、国内の消費規模は非常に大きくなりつつあります。これは我々スタートアップの起業家にとっては大きなチャンスであり、起業環境としては非常に良いと思います。

ーー 中国で会社を起こすメリットとリスクについてどう考えていますか。

メリットは、2点あると考えています。

やはり中国の人口の多さによる消費力と経済成長を続けている点です。人口が多いですから、例えば華南エリアだけ、若い消費者だけ、犬用ペットフードだけというように市場シェアの一部分を狙うのであっても、消費者ニーズさえ的確に把握できれば大きなビジネスチャンスに繋がる可能性が十分あるということです。

中国で起業するリスクは、特に考えたことがありません。強いて言えば、私のような起業家が多い、つまり競合が多いわけですから、事業を左右する投資に関しては素早く判断しなければ大きなチャンスを逃してしまうリスクが常にあります。

しかし、ここで重要なのは、事業の成功をどう定義するのかという点です。私にとって事業の成功とは、消費者目線でより良いサービスを提供することを意味します。私の周囲には、競合を意識するあまり、大切にすべき価値が疎かになってしまい、事業が間違った方向に進んでしまったという起業家もいます。

ーー国内の競合他社との競争は意識していますか。

私は競合他社との競争をあまり意識しないようにしています。逆に強く意識しているのが、自分との「競争」です。いかに自分を高めて事業でミスを減らすかに注力しています。なぜなら、中国では社員が経営者を強く意識しているからです。私の会社でも、少なくない社員が「いつか自分も起業したい」と考えています。競合他社を強く意識することは、「競合他社に負ける可能性がある事業を行なっている」ということを起業家が自ら意思表示することになると私は考えています。そのような事業を行なっている起業家に社員はついてきませんし、中国は人材の流動が激しいですから、競合他社を意識するような弱い起業家の背中を社員に見せてはいけないと思います。ある意味で、競合他社というより競合起業家との競争で私が意識していることかもしれません。

ーー人材採用はどのような点を重要視しているのでしょうか。

私の会社では、人材を採用する上で「若者の活力」を重要視しています。

中国のペット市場では、主力となる消費者が1995年生まれ以降の世代になりつつあります。彼らと1970年代、1980年代生まれの消費者との間には、消費に対する価値観を含めて本質的な世代の差があります。これからの主力となる消費者層を理解し、いち早く市場のニーズをキャッチするためにも、若手社員の採用や育成に力を入れています。

ーー 中国の模倣問題について、どう考えていますか。

海外企業と協議をする際に中国の模倣問題が話題になることがありますが、まず模倣と偽物は違う概念であることを伝えています。例えば、ある企業が斬新なサービスを市場に出せば、すぐに同業他社が類似サービスを立ち上げて、市場に参入してきます。その場合、先にサービスを展開した企業は先行者利益を獲得できますが、だからと言って市場を100%獲得することはできないでしょう。

偽物に関しては、知的財産権を指していると思いますが、知的財産権で守られている製品の模倣は法律レベルの問題になるので、やってはいけないと思います。ただ、知的財産権が確保されていない「市場のニーズ」に対しての模倣であれば、これはフェアな競争だと考えます。

ーー 中国国内で、起業しやすい地域はありますか。

私は上海で起業しましたが、杭州と深圳が一番スタートアップに適した地域なのではないかと思います。それぞれ、アリババグループとテンセントグループの所在地になりますが、中国で深圳と言えば「世界の窓」と言われていて、杭州は「インターネットの天下」と言われています。深圳は中国で最初に「改革開放」が実施された地域で、若い人が多い。起業家ネットワークも若く、国外の最新情報などをいち早くキャッチできる環境だと思います。杭州はアリババグループの本社がある地域です。ベンチャー企業への投資が特に盛んで、インターネット領域の事業にとっては良い起業環境かもしれません。

資金調達で意識したのは理想の言語化と実現可能な計画性

ーー中国での資金調達額の相場について教えて下さい。

資金調達の金額は事業によってケースバイケースです。ケースバイケースというのは、中国における資金調達は、創業者の経歴も大きな判断要素になり得るし、創業者のスタートラインもそれぞれ違うからです。

例えば、大学生が創業した会社ならエンジェル投資で100万元~200万元(約1600万円~3200万円)も調達できれば非常に優秀なレベルだと思います。一方で、例えばアリババグループの創業メンバー出身というような、業界の中でも知名度がある創業者であれば、もっと高額な資金調達が可能でしょう。新興スマートフォンメーカーの小米(Xiaomi)は、過去に数十億ドルの資金調達の実績があります。

私を例にすると、中国のペット業界で10年以上のビジネス経験と人脈を培ってきたからこそ、数千万元レベルでの投資を実行して頂けたのだと思います。

ーー 中国では複数のメンバーで出資して事業を行うという傾向があると聞きました。

これは中国の事情に沿ったやり方で、海外から中国に伝わってきた手法ではないでしょうか。資本主義経済のやり方を中国に取り入れた結果だと思います。

従来の中国の起業家は、自分で稼いだお金を元手に起業していたと思いますが、今は起業に対する価値観も時代も大きく変化しました。個の力で1つの会社を経営するよりも、複数で出資し合ってコミュニティを形成し、1人が複数企業の創業者メンバーとなったほうが変化の激しい中国においてはリスクヘッジなのかもしれません。私も過去に共同創業を経験しています。

ーー2020年10月に行った2000万元の資金調達の目的を教えて下さい。

会社全体の継続的発展と、競争力の補完が目的です。資金の用途としては、チーム・ビルディングとサプライチェーンマネジメントに投資をしていきます。

ーー資金調達で意識したこと、資金調達で一番苦労した点はありますか?

意識したことは、まず理想を明確に言語化したことです。志高く大きな夢をもって取り組んでいますが、その夢に共感して頂けないと意味がないと考えています。また夢に対して実現可能な計画はいくつも何度も策定しました。理想と計画性、そして実行力が伴っていることが大事だと考えたからです。

苦労した点は、投資家が期待する規模と自分が持つ規模にギャップがあったことです。協議の過程で自分が描く夢の大きさが投資家がみている世界よりも小さいとわかった時は、自分がみている世界の小ささを突きつけられて辛かったです。自分が認識している世界の広さによって事業の限界が決まると思っていますから、このような状況では投資していただく価値に達しないわけです。自分の夢と投資家の期待値を埋めることには苦労しました。

ーー王CEOが考える、適切な投資家の選び方はありますか?

今まで国内の投資家3人と日本の海外投資家1人にお会いしています。

まず、投資家の皆様は事業経験が豊富でとても魅力的な方ばかりでした。起業家としては、その投資家が得意とする投資領域は何であるのかを見極める必要があります。従って、自分の事業に対して資金力以外でもシナジーが見込める投資家と会うことが重要です。投資契約については、もちろん我々が事業を行う上で有利な方向で契約できるのが良いのですが、多くの投資家は可能な限り我々起業家が事業にオールインできるように、後押しをしてくれます。 

日本市場でブラッシュアップすることで自社のブランド価値が上がる

ーー中国企業の日本進出が増えています。日本進出の考え方について教えて下さい。日本市場の魅力についてどうお考えですか?

世界のペット市場から見た場合、日本のペット市場は相対的に成熟してきていると思います。成熟した市場のサービスは、それだけ品質も高く、消費者が求める基準も高いでしょう。私は優れた品質と的確な価格設定の商品を日本市場に提供することで、自社の商品のデザイン力やサービスの品質をさらにブラッシュアップできると考えています。日本市場での成果は、回り回って中国市場で自社のブランド価値を高めてくれると考えています。

ーー中国企業が日本進出を考えるときに注意すべきポイントは何ですか?

注意すべきところは、主にリーガルとマーケットだと考えます。海を渡れば当然法律も異なりますので、まずはリーガル面に気を付けるべきだと思います。特に成熟した市場は法律面でも成熟しており、標準化が進んでいます。この標準化に適合した品質をもつ商品を適正価格で提供できるかどうかは特に強く意識しています。また商習慣にも注意が必要です。消費者の考え方やパートナー企業との取引のやり方などに理解を深めなければなりません。

日本企業は、新しい物事を受け入れる力が弱いが、技術開発力は強い

ーー最後に、日本企業の中国進出についてお伺いします。王CEOの日本企業に対する印象について教えて下さい。

私が理解する日本企業の強みは一つの事に専念するところです。技術開発力にはプロとしての精神を感じます。しかし、これは裏を返せば弱みにもなり得ると思います。

例えば、一つのことに専念して他社にはない技術力や目を引くデザインが大変魅力的な商品を作っても、市場のニーズにマッチしないためにディスプレイに置かれた作品になってしまっていることがあります。市場のニーズと自分たちのこだわりがマッチしていないという点では、新しい物事を受け入れる能力は中国企業に比べて日本企業のほうが苦手だと感じます。

ーー日本企業からの事業提携のオファーで、王CEOが一番重要視するポイントは何ですか?

最も要視するポイントは、先方のニーズを確認することです。先方企業は中国で売上を獲得したいのか、或いは商品を中国で展開することでブランド認知を高めたいのか、といったことです。先方企業のニーズに対して私が提供できるものがマッチしなければ、事業シナジーが期待できるパートナーシップは実現できないと考えます。

ーーこれから中国ビジネスを成功させたい日本企業へのメッセージはありますか?

個人的には中国はビジネスチャンスが多いと思います。日本の優秀な企業がどんどん中国市場に参入して、より良い国内の市場環境が作られ、最終的には中国でのビジネスチャンスを海外企業と共に享受したいと思います。同時に、中国企業も海外展開を通じて海外企業と長期的なパートナーシップを構築できたらと思います。

終わりに

王CEOのインタビューを通じて、ユニコーン企業を目指す中国の起業家の視点や考え方に触れることができた。当社が多くの中国起業家とともに日中間ビジネスに関わる中で、王CEOのような1980年代以降生まれの起業家は、知的財産権といったビジネスにおけるルールを国際的な視点から捉えており、世界の中での中国の姿を理解しているという印象を受けた。

インタビューを終えて雑談をする中で、彼が言った「十数年前の起業家の多くは、中国ビジネスはお酒の席で人間関係を深めてこそ前に進むものだと思っていたが、今はもうそんな時代ではない」という言葉が、中国の新しい時代と中国経済をこれから背負って立つ若い起業家たちの価値観の変化を表していると感じた。

王永来CEO プロフィール

1986年生まれ。江蘇省畜牧獣医学院・ペット医学専攻を卒業後、2009年にペットショップを起業。2012年にEC領域に参入し、ペット用品事業を立ち上げている。ペット業界での10年の経験を元に、2019年に上海鳥語花香寵物有限公司を創業。現在はペット用スマート製品の研究開発および事業展開を行っている。創業初年度には、ペット用スマート製品分野においてオンラインでの年間販売数ナンバーワンを達成。さらに翌年の2020年に、2000万元(約3億円)プレシリーズAの資金調達に成功した。企業理念は、「飼い主よりもペットのことを理解し、獣医師よりも早く問題を発見して、人々がより健康に暮らせるようにする」。

(作者:株式会社クララオンライン コンサルティング事業部・部長 秀山 斌)

 

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