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テンセント、新作RPG「白夜極光」で日本市場攻勢。課金、40代ユーザーに旨味

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中国ネット大手テンセント(騰訊控股)のゲーム事業「テンセントゲームズ(騰訊遊戯)」が6月17日、新作RPG「白夜極光」の正式サービスを開始し、日本でも大きな反響を呼んでいる。事前登録者数はのべ100万人を超え、正式サービス初日にはApp Storeの無料アプリダウンロードランキングの総合部門とゲーム部門で第1位を獲得した。売り上げランキングはリリース初日に41位でスタートし、その後は20位前後で推移している。

日本のアニメを思わせるオープニング、典型的な2次元の世界観、洗練されたキャラクターデザイン、日本の有名声優の起用、抽選でキャラクターなどを引き当てる「ガチャシステム」の採用。白夜極光は、最も模範解答に近い2次元ゲームで、その標準化されたゲームデザインとプロモーション戦略が功を奏し、リリース3日後にはダウンロード数が全世界で200万件を突破した。

テンセントゲームズはここ2年近くで「聖闘士星矢 ライジングコスモ」をはじめ数々の2次元ゲームをリリースし、投資や代理配信などでも2次元ゲームに力を注いだものの、大きな成果は得られていない。売上高300億元(約5000億円)を叩き出した「王者荣耀(Honor of Kings)」と「和平精英(Game for Peace)」を手中に収めるテンセントにとって、2次元ゲームはさほど重要ではなかったかもしれない。

しかし、「miHoYo(米哈遊)」開発の「原神(Genshin)」が登場したことで全てが変わった。収益力で同社の後塵を喫することになったテンセントは、その並外れた資金力をより多くのジャンルに投下。とくに、それまで軽視していた2次元ゲームに力を注ぎ始めた。

中国ゲーム企業は2次元文化の天国、日本を目指す

2次元ゲームを手がける中国のゲーム企業は、2次元文化を生んだ日本を目指す。日本は世界第3位のゲーム市場で、2020年はモバイルゲーム市場の規模が120億1000万ドル(約1兆3000億円)に達している。そして、中国のモバイルゲームメーカーは海外売上高の23.91%を日本市場で稼ぎ出している。

中国モバイルゲームメーカーによる海外売上高の国別比率(「2020年中国遊戯産業報告」より)

日本はゲームの課金ユーザーが多いことでも知られている。中国のゲームユーザーの主流が25歳前後前後の若者「Z世代」であるのに対し、日本ではゲームユーザーの年齢層が高く、平均年齢が40歳近くであることもその理由となっている。

ちなみに、モバイル広告プラットフォーム「Mintegral」の統計によると、2018年の日本のモバイルゲームユーザー1人当たりの課金額は171ドル(約1万9000円)だった。

中国の2次元ゲームは日本市場を求めており、日本市場には中国製ゲームへのニーズがある。大手証券会社「国信証券(Guosen Securities)」が発表したリポートでは「人気タイトルを手がける日本のゲームメーカーの売上高は全体的に減少傾向にあり、競争力も弱まっている。また、日本企業には中国企業ほどの迅速な対応力がない。ストラテジーゲームが日本市場に入って久しいが、日本企業はこのジャンルのゲーム市場を制せないでいる」との見方が示されている。今年第1四半期には、日本のモバイルゲーム売上高ランキングの100位以内に中国製ゲーム29タイトルがランクインし、中国製ゲームが市場シェアの25%を占めた。このことからも、日本で中国製ゲームへのニーズが高まっていることが見て取れる。

日本のモバイルゲーム市場全体の売上高に占める中国製ゲームの割合(「Sensor Tower」より)

そもそも日本は、アニメ・コミック・ゲーム(中国では「ACG」と総称)を中心とする2次元文化誕生の地だ。中国の2次元コンテンツが受け入れられる確率は高い。とはいえ、日本では没個性な2次元ゲームの淘汰がすでに進んでおり、中国ゲーム企業の進出が成功するかは未知数だ。

プロモーションを成功の鍵に

原神を開発・運営するmiHoYoや「ファイナルギア-重装戦姫-」を運営するBilibili(ビリビリ)をはじめ、中国のゲーム企業は日本や韓国など向けのプロモーション戦略を標準化しつつある。オンラインでは特設サイトで事前登録を受け付けるほか、プロモーション動画で期待を高め、声優による生配信やイラストレーターによる特別イラストの発表などを実施。オフラインでも大々的に広告を打つほか、有名コスプレイヤーを招いてイベントを開催するなどのプロモーション活動を展開する手法だ。

テンセントの資金力があれば、上記のような一連のプロモーション活動は難しくない。

白夜極光は今年2月、クローズドβテスト(CBT)の予約を開始し、参加者に抽選でamazonギフト券をプレゼントした。リリースまでの4カ月間はプロモーション動画を次々と公開し、声優陣とゲーム内に登場する六つの陣営およびその役割を発表。その後は週2、3回の頻度で情報を更新しつつ、公式Twitterアカウントでは事前登録イベント「白夜極光号」を開催し、同ゲームへの注目度を高めていった。

「白夜極光」の声優陣(App Storeより)

4月12日に事前登録が開始されると、2週間で登録者数が50万人を超えた。テンセントゲームズはユーザーの期待感が冷めぬよう、主要キャラクター「バイス」を演じる声優、楠木ともりのインタビュー動画を公開するとともに、サイン色紙の抽選プレゼントを実施。同時に、2次元ファンが集まる秋葉原や新宿などにオフライン広告を大量投下した。

秋葉原に掲示された「白夜極光」の広告(公式Twitterアカウントより)
新宿に掲示された「白夜極光」の広告(公式Twitterアカウントより)

6月17日には正式サービス開始を記念し、カーニバルイベントや豪華ゲストによる生配信を実施。日本のアニメファンなら誰もが知るシンガーソングライター、Reolによるテーマソング「白夜」を解禁したほか、バーチャルライバー(VTuber)プロジェクト「にじさんじ」所属のライバーによる6日連続ゲーム実況もスタートした。

アートディレクションを担当した「Tourdog Studio(巡回犬)」による芸術的表現で、キャラクターデザインの秀逸さには、とくに注目が集まっている。

白夜極光は日本市場で初戦を飾った。テンセントは2次元ゲームのプロモーションを習得したかに見える。しかし、無料アプリランキングでリリース当初の1位から300位以下に陥落していった「聖闘士星矢 ライジングコスモ」の例もある。

テンセントは長期的な運営能力を安定的に発揮できるのか。「2次元にうといテンセント」というレッテルをはがすことができるのか。今後の動向を見守る必要があるだろう。
(翻訳・田村広子)

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