過熱化するコーヒー業界競争、スターバックスが中国の市場予測を下方修正

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8月下旬、スターバックス中国の人事異動が発表された。王静瑛(ベリンダ・ウォン)氏は中国事業部CEOを退任、今後は董事長を務め、スターバックス中国の長期的な発展戦略に注力する。蔡徳粦(レオ・ツォイ)氏がスターバックスグローバル執行副総裁とスターバックス中国のCEOを兼任し、劉文娟(モリー・リウ)氏がスターバックス中国の高級副総裁とCOOを務める。

資料によると、王氏は2000年1月スターバックスに入社。スターバックス中国およびアジア・太平洋地域で多くの役職を歴任した。2011年よりスターバックス中国エリアの総裁を務め、在職の5年間で中国の店舗数を2011年の400店舗から2016年には2300店舗以上にまで増やした。

王氏は2016年10月にスターバックス中国のCEOに任命された。当時スターバックスは公式サイトでこの人事には明確な「使命」があると発表している。それは「2021年までに中国大陸に5000店舗以上をオープンさせる」というものだ。今年6月末の時点で、中国大陸のスターバックスは5135店舗となった。

8月初旬、スターバックスは2021年会計年度第3四半期の決算報告を発表したが、中国市場では成長の鈍化が見られる。同四半期、スタバ中国の売上高は前年同期比45%増の9億1000万ドル(約1000億円)だったが、客単価は9%減となった。店舗あたりの売上高は19%増となったが、予想には及ばなかった。決算報告の中でスターバックスは世界全体の売上予想を上方修正したが中国については下方修正しており、中国市場の第4四半期の売上高は第3四半期と同水準になると見ている。

これら一連の動きはここ数年のスターバックス中国には似つかわしくない。同社は2017年以来、歩みを緩めることなく突っ走ってきたからだ。

まず2017年、華東地区で合弁企業として共同運営していた「統一企業(Uni-President)」から全ての株式を買い取り、中国大陸の店舗を全て直営とした。同年、ミニプログラム「用星説」をリリース。2018年には公式のデリバリー事業「専星送(Starbucks Delivers)」を開始、用星説はアリペイでの支払いが可能となった。2019年には事前にオンラインで注文し店舗で商品を受け取るサービス「啡快(Starbucks Now)」をスタート。また、世界初となる「Starbucks Now」のコンセプトストアを北京にオープンした。2020年にはコーヒー焙煎工場、倉庫を含む「コーヒー・イノベーション・パーク」を建設すると発表し、2022年に完成予定だという。「セコイア・キャピタル・チャイナ(紅杉資本中国基金)」とも戦略的提携を締結し、小売イノベーション事業を加速すると発表している。

スターバックスが中国の市場予測を下方修正したのは、過熱しているコーヒー市場とも関係があるだろう。2018年に新興コーヒーチェーン「瑞幸咖啡(luckin coffee)」がクーポン配布により消費者にコーヒーを定着させようとしたことをきっかけに、資本家や起業家もこの業界にチャンスをかぎつけた。しかし中国のビジネス系データ会社「CBNData」によると、楽観的に見ても中国のコーヒー市場は全体で1800億元(約3兆600億円)規模に過ぎず、1兆元(約17兆円)規模に達するには20年かかるという。よりシビアに計算した場合、同市場は全体で900億元(約1兆5000億円)程度で、1兆元(約17兆円)規模に達するには26年もかかる。

どう見積もっても中国のコーヒー市場全体の規模は1000億元(約1兆7000億円)前後に過ぎず、レギュラーコーヒーに限って言えば市場のわずか18%、つまり数百億元(数千億円)規模に過ぎない。

この限られた市場に多くの企業がひしめいているのが現状だ。カナダの国民的カフェチェーン「ティム・ホートンズ(Tim Hortons)」は2019年に中国参入。テンセントから出資を受け、今年は約200店舗を新たに出店する予定だ。今年7月には口コミサイト「大衆点評(Dianping)」に「ブルーボトルコーヒー」の店舗情報が出現。「コーヒー業界のApple」とも呼ばれる同店が上海に間もなく開業するのではないかと言われている。

新興コーヒーブランド「Manner Coffee」、1店舗あたりの評価額がスターバックスの3倍 その秘密は(上)

今年もコーヒー業界は熱く、「Manner Coffee」「Seesaw Coffee」「M Stand」「鷹集珈琲(S.ENGINE COFFEE)」「永璞咖啡(YongPu Coffee)」などの新興コーヒーチェーンが相次いで資金を調達。出資したのは IDGキャピタルやセコイア・キャピタル・チャイナ、「H Capital」などの老舗ファンドだけでなく、 生活関連サービス大手「美団(Meituan)」、バイトダンス、「ビリビリ動画(Bilibili)」などの大企業も含む。中でもManner Coffeeは今年の上半期だけで4回も資金を調達しており、評価額は10億ドル(約1100億円)から30億ドル(約3300億円)へと上昇している。

コーヒー業界の競争が熾烈さを増す中、スターバックスは新商品の発売頻度やマーケティング、店舗拡大などの点で中国市場に精通しているローカルブランドにかなわない。今回の新しい人事からはスターバックス中国のプレッシャーが見て取れる。劣勢を挽回できるかは、今しばらく見守る必要があるだろう。
(翻訳・山口幸子)

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