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独調査会社「Statista」が実施した調査で、シンガポール市民の46%以上が健康のために植物性食材中心の食生活を受け入れる意思があることが明らかになった。
細胞培養によるシーフードや食肉を開発する「シオック・ミーツ(Shiok Meats)」が先ごろ実施したオンライン調査では、シンガポールの消費者の78%が培養シーフードを試してみたいと回答した。うち45%は環境への配慮を理由に挙げたという。
アジアの代替タンパク質業界は依然として黎明期にあるが、だからこそ、この分野の成長を予見したベンチャーキャピタルの関心を集めているという側面がある。
シンガポールでは2018年以降、細胞培養肉や植物性代替肉など代替タンパク質の開発を手掛ける企業数十社が誕生し、多額の資金を調達している。植物性代替肉メーカー「ネクスト・ジェン・フーズ(Next Gen Foods)」は2020年の設立以降、2年足らずで約3200万ドル(約35億円)を集めた。シオック・ミーツも2019年から現在までに約2000万ドル(約24億円)を調達している。
代替タンパク質産業の振興を政府が後押し
シンガポール政府はこれまで一貫して地元フードテック産業の振興を後押ししてきた。2020年12月には世界に先駆けて培養肉の販売を認め、植物性代替鶏卵で知られる「イート・ジャスト(Eat Just)」が実験室で培養した食肉を一般販売することを承認した。
同政府はこれに先立つ2019年、2030年までに食料自給率を30%とする計画を示していた。具体的には、地元企業の生産能力を上げて持続的発展が可能な食料供給システムを構築し、輸入食料への依存を減らすという内容だ。もちろん、代替タンパク質産業の振興も含まれている。
培養肉を開発する新興企業に特化したベンチャーキャピタル「Big Idea Ventures」の創業者兼パートナー、Andrew Ive氏は「シンガポールは、アジアにおける培養肉のイノベーションセンターだ。世界で初めて培養肉の販売を認めただけでなく、高度な教育を受けた人材、パートナー企業、資金、そして活力ある起業ムードに満ちたビジネスエコシステムも備えている」との見方を示した。
Ive氏はまた「シンガポール政府はさまざまな形で培養肉産業の発展を後押ししている。培養肉企業に有利な規制環境を整備し、食品関連のグローバル企業が同国内で研究・開発センターや製品開発施設を設立し、試験事業などを行うことを奨励している」と説明した。
実際、香港に拠点を置く「アバント・ミート(Avant Meats)」は今年4月、シンガポール経済開発庁(EDB)の支援を受けて研究・開発センターを設立し、培養肉生産の試験事業をスタートさせている。スイスの企業「ジボダン(Givaudan)」と「ビューラー(Buhler)」も同月、共同で「アジア太平洋地域タンパク質イノベーションセンター(Asia-Pacific Protein Innovation Center)」を設立した。シンガポール国立南洋理工大学(NTU)は8月、アジア太平洋地域で初めて代替タンパク質関連の講座をスタートさせている。
また、テマセク・ホールディングスやGIC、SEEDS Capitalなどの政府系ファンドが、こぞって代替タンパク質関連の新興企業に投資しているという。
Ive氏は、シンガポールのフードテック産業のエコシステムについて日本などアジア諸国との比較も行った上で「日本には培養肉産業に早くから参入している優れた企業がある。しかし、エコシステムの整備が追いついておらず、投資家や食品企業のサポートも不足している」と述べている。
国際的な舞台で頭角を現そうとしている新興企業もある。植物性代替肉メーカー「カラナ(Karana)」は現在、香港で餃子などを販売しているが、近く米国でも商品を発売する計画だ。シオック・ミーツは今年8月、培養肉メーカー「ガイア・フーズ(Gaia Foods)」を買収し、事業の幅を広げるとともに、アジアにおける販路拡大を目指している。細胞培養による人工母乳を開発する「タートルツリー・ラブス(TurtleTree Labs)」は、この分野に特化して効率的な生産ソリューションを提供する米「Solar Biotech」と提携し、生産規模の拡大を図る方針を示している。
(翻訳・田村広子)
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