中国Z世代照準の香水ブランドに欧州名門プーチが出資、年25%成長の有望市場

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中国Z世代照準の香水ブランドに欧州名門プーチが出資、年25%成長の有望市場

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香水ブランドの「気味図書館(SCENT LIBRARY)」がこのほど、シリーズBでの資金調達を実施した。出資者はスペインの香水大手「PUIG(プーチ)」。アドバイザーは「指数資本(Index Capital)」 が務めた。資金は、オリジナルのフレグランス製品の開発、オンラインとオフラインを連動させた消費シーンの創出、サプライチェーンの最適化および組織拡充に充てる方針だという。

PUIGは1914年に設立された老舗企業で、ファッションと化粧品を手掛け、25カ国に26支社・オフィスを構え、150カ国・地域に向けて事業を展開している。同社の化粧品事業は香水、メイクアップコスメ、皮膚科学に基づくスキンケア化粧品「ダーマコスメティック」の3部門で構成される。傘下には、英国王室御用達の「PENHALIGON’S(ペンハリガン)」やフランスのフレグランスメゾン「L’Artisan Parfumeur(ラルチザンパフューム)」をはじめ数々の香水ブランドを抱えている。

中国人に合わせた香りづくりで差別化を図る

新消費時代に入った中国では、精神的な充足と個性の表現を追求する若い消費者が増えており、香水市場も急速に成長しつつある。

市場調査会社「艾瑞諮詢(iReserch)」が発表した「2020年中国香水業界研究白書」によると、世界の香水市場に占める中国市場の割合は、昨年時点でわずか2.5%だった。しかし、2017年以降は市場規模が年平均成長率25%で拡大していることから、中国は2030年までに世界第二の香水市場になる可能性が高い。

気味図書館の創業者、婁小芝氏は「中国の香水市場は急速に拡大しているが、業界は依然として中国人の香りの好みに応えられておらず、発展の余地は大きく残されている」との見方を示した上で「中国人は古くから『お香』を用いてきたが、『香水』は西洋からの舶来品だ。私たちは成熟した市場のリソースや経験を取り入れながら、消費者が中国文化に対する自負心を高めていけるように努めていく必要がある」と抱負を述べた。

婁氏はさらに「中国人の好みに本当に合う香りを創造し、一人一人がそれぞれの気分に合う香り、そして個性を表現できる香りを見つけ出せるようにすることこそが当社の経営理念となっている」と強調した。

2009年創業の気味図書館は、中国で最も早く香水を取り扱うようになった企業の一つだ。同社は中国文化の要素を取り入れたオリジナル製品を軸にビジネスモデルを探求し、経営理念を製品戦略に反映させてきた。

2017年に発売した香水とボディケア用品の「涼白開」シリーズは、販売開始後1年で100万本以上を売り上げ、翌18年にはECモール「天猫(Tmall)」のボディケア部門で2位に入るほどの人気商品となった。2019年にはキャンディーの国民的ブランド「大白兎」とのコラボシリーズを発売し、販売開始後10分で14000点を売り上げた。同シリーズには非常に多くの関心が寄せられ、中国中央テレビ(CCTV)のニュース番組にも取り上げられた。

気味図書館は現在、消費者の多様なニーズに合わせられるよう、各シリーズの香水とボディケア用品に加え、ホームフレグランスも販売している。

総合的なブランド力を高めるために

香水のセレクトショップとしてスタートした2009年当時から、気味図書館は国際的な視野を持ちながら事業を展開してきた。また、個性を求め、お勧め商品の情報発信に熱心なZ世代こそが香水消費の主役になると考え、オンラインとオフラインを連動させる戦略にも取り組んできた。

気味図書館は現在、全国に80店舗を展開しているが、半数近くは北京や上海など「一線都市」と呼ばれる大都市に分布している。今後は出店先を小都市に拡大していくとみられる。

多角的なプロモーションも進めており、各ECプラットフォームや「微信(WeChat)」「抖音(Douyin)」「小紅書(RED)」などのソーシャルメディアを活用しているほか、ライブコマースの女王「薇婭(viya)」とも提携している。

また、2015年に立ち上げた研究・開発チームは現在、世界各国の香料メーカーや調香師と提携して製品の開発を進めている。2019年から進めてきた国際的なサプライチェーンの整理・統合も基本的には完了し、現在は、香水のガラスボトルはドイツ、スプレーヘッドはスペイン、キャップは香港でオーダーメードしている。

「涼白開」シリーズの香水

気味図書館を率いる2人は、いずれも芸術に造詣の深い人物だ。創業者の婁小芝氏はニュージーランドのオークランド大学で現代美術を専攻し、共同創業者の韓壮壮氏は中国の名門美術大学・中央美術学院を卒業している。同社のメンバーは90年代生まれの若者が中心で、国内外の有名大学を卒業後、IT企業や消費財メーカー、化粧品ブランドなどでコンセプトづくりやデザイン、広報などの経験を積んだ多彩な人材が揃っている。

PUIGの投資部門は、中国市場にあふれる新興香水ブランドの中から気味図書館を選んだ理由として、ブランドとして比較的成熟していることや、中国文化を鮮明に反映させたオリジナリティを挙げている。

同社CEOのMarc Puig氏も今回の出資にあたり「気味図書館との提携は非常に魅力的だ。中国の企業とともに中国の香水・フレグランス市場の発展に参画し、見守っていくことができる。当社には香水に100年以上携わってきた経験と知識がある。今回の提携によって気味図書館がそのポテンシャルを最大限発揮できるようになると確信している」と期待を寄せている。

(翻訳・田村広子)

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