アリババ・テンセント、東南アジア市場の覇権争う 次の標的は物流市場

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中国IT大手は、国内のさまざまな分野に投資を続ける一方で、国外での動きを活発化させている。

シンガポールの物流企業「Ninja Van(ニンジャバン)」が9月、シリーズEで5億7800万ドル(約640億円)を調達した。同社は評価額10億ドル(約1100億円)を超えるユニコーン企業の仲間入りを果たした。アリババ集団は、うち2億ドル(約220億円)を出資して第二の大株主となっている。

ニンジャバンは2014年に設立され、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、シンガポールの東南アジア主要6カ国でラストワンマイル物流を提供している。同社が輸送する荷物は1日当たり約170万個に上る。

東南アジア物流市場への展開を進めているのはアリババ集団だけではない。テンセント(騰訊)や京東集団(JD.com)もすでに動き始めている。

これらIT大手各社はグローバル化を重要戦略に掲げ、東南アジア市場の開拓を進めてきた。主なターゲットは電子商取引(EC)、ゲーム、そして物流だ。

アリババ集団の動向

アリババ集団は2013年、ECモール「淘宝(タオバオ)」のシンガポール版「Taobao Singapore」を設立し、東南アジア市場への進出を開始した。2016年には東南アジア最大級のECプラットフォーム「Lazada(ラザダ)」を買収、翌17年にはインドネシアの大手ECプラットフォーム「Tokopedia(トコペディア)」に出資した。

続いて2018年には、マレーシアの首都クアラルンプールに「世界電子貿易プラットフォームプログラム(eWTP)」初の国外事務所を開設し、傘下の物流会社​​「菜鳥網絡(Cainiao Network)」のスマート物流を支える大型物流拠点「eHub」の稼働を開始した。

菜鳥網絡は現在、東南アジア主要6カ国に物流倉庫を設置している。今年9月には中国と東マレーシアを結ぶ直行便を就航させ、両地の最短輸送時間を2週間から1週間に短縮し、Lazadaによる越境EC物流の時間効率を50%以上高めることに成功した。

Lazadaの年間アクティブユーザーは現在、東南アジア主要6カ国で計1億1000万人を超えている。

テンセントの動向

シンガポールに拠点を置く東南アジア最大のIT企業「Sea」は2017年、ニューヨーク証券取引所に上場した。上場の直前、テンセントは同社上場の直前に戦略投資を実施し、同社の株式39.7%を取得して筆頭株主となっている。

Seaは、ゲーム、デジタル決済サービス、ECプラットフォーム「Shopee」を事業の三本柱としている。Shopeeはテンセントの後ろ盾を得て以降、急速に成長。現在は東南アジア主要6カ国と台湾で事業を展開している。

テンセントは次の一歩として物流事業に手を伸ばそうとしている。今年9月には、インドネシア宅配大手「J&T Express」に10億ドル(約1100億円)を出資することで協議中だと報じられている。

京東集団の動向

京東集団は早い時期から、東南アジアにおける倉庫・物流事業を積極的に展開してきた。

インドネシアとタイでのEC事業展開に続き、2018年1月にはベトナムのECプラットフォーム「Tiki」に出資し、大株主となった。 また、同年9月にはタイにスマート倉庫物流センターを建設。首都バンコクで即日配送サービスを開始している。

傘下の物流会社「京東物流(JD Logistics)」も成長戦略の一環として、その物流網を東南アジア全域に広げようとしている。タイやインドネシア、ベトナムなどではすでに自社倉庫を構え、地元の物流企業と提携してラストワンマイル配送を手掛けている。また、タイやインドネシアなどに中国との貨物専用便を就航させ、国際輸送や在庫管理などをワンストップで提供する越境物流サービス「JD SEA Gateway」を展開している。

東南アジア物流市場に投資する理由

中国IT大手各社は東南アジアのEC市場における基盤固めを終え、物流市場のシェア争いに乗り出した。

東南アジアは人口が多い上、ここ数年はデジタル経済のレベルが急速に上がっている。一方、物流分野の発展は比較的遅れているため、今後の発展に伴って大きなチャンスが生まれる可能性が高い。

東南アジアのインターネット経済が急速に成長していることは、EC市場の急成長と切り離しては考えられない。独調査会社「Statista」によると、東南アジア主要国(インドネシア、タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、フィリピン)のEC市場全体の規模は、2025年までに878億ドル(約9兆6000億円)に達する見通しだ。

成長し続けるEC市場は、物流市場の発展にも寄与するに違いない。しかし現在のところ、東南アジアには十分に発達した物流システムが見当たらない。だからこそ、中国IT大手各社は東南アジア物流市場への投資を活発化させているのだ。

中国IT大手各社が進めるグローバル化戦略の中で、東南アジア物流市場でのシェア獲得が持つ価値は極めて大きい。

作者:「美股研究社(WeChat ID:meigushe)」
(翻訳・田村広子)

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