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中国北京市の米系テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ北京(USB)」が今年9月の開業以来、爆発的な人気を呼んでいる。人気を集めるのは、ハリー・ポッターやトランスフォーマー、ミニオンズなどユニバーサル・ピクチャーズの映画に登場したキャラクターだ。
IP(知的財産)とテクノロジーの組み合わせは、テーマパーク経営を成功させる最も効果的な方法の一つとして定着している。ここ数年は、有名キャラクターのIPを保有する企業が次々とテーマパーク経営に乗り出している。中国で人気のアニメキャラクター「喜羊羊(シーヤンヤン)」や「巴啦啦小魔仙(バララシャオモーシェン)」のIPを保有する玩具・アニメ大手「奥飛娯楽(Alpha Group)」もその一つで、子ども向け屋内テーマパーク「奥飛歓楽世界(ALPHALAND)」を各地に展開している。
そんな中、コレクターズトイで人気の玩具メーカー「POP MART(ポップマート)」が、テーマパーク事業の開始に向けて着々と準備を進めている。創業者の王寧CEOは今年3月、テーマパーク事業やコンテンツ事業を段階的に進めていく計画を示していた。そしてこのほど、同社が8月に都市公園の管理やテーマパーク、チケットサービスなどを手掛ける新会社を設立していたことが明らかになった。
コレクターズトイ・ブームの先駆者、POP MARTは業績を急拡大させたが、競合他社の参入とともにビジネスの旨味は減っていった。投資家の注目を独り占めすることもできなくなった。雑貨店大手の「名創優品(MINISO、メイソウ)」は昨年末、玩具専門店「TOPTOY」の展開を開始した。フィギュアを中心に人気を集める新興玩具メーカー「52TOYS」は、6回の資金調達を成功させている。
POP MARTの株価は、今年2月の107.34香港ドル(約1880円)をピークに下落。現在は53香港ドル(約930円)前後で推移している。一時は1500億香港ドル(約2兆6300億円)近くまで跳ね上がった時価総額は、ほぼ半減した。
POP MARTはかねてから「中国版ディズニー」を目指すことはないと強調してきた。しかし、それでも同社はディズニーのたどった道のりをなぞっているかに見える。
POP MARTが保有するキャラクターIPの影響力はディズニーに遠く及ばないものの、同社は意識的に新たなキャラクターやキャラクターユニットを打ち出し続けている。現在は、「MOLLY」「DIMOO」「SKULLPANDA」など自社IPのほか、「LABUBU THE MONSTERS」や「PUCKY」などの独占ライセンス契約のIPを抱えている。
創業100年近くを経たディズニーは、事業範囲を映画からテーマパーク、不動産、エンターテインメントなど多分野に広げている。ここ4年間の事業別売上構成を見ると、コロナ禍に見舞われた昨年を除けば、テーマパーク事業を手掛けるパークス・エクスペリエンス・プロダクツ部門が大きな割合を占めている。テーマパーク事業を取り入れたビジネスモデルに大きな可能性があることを示していると言えよう。
しかし、ディズニーの強みは個々のIPだけにあるのではない。IPとストーリー性が組み合わさることで大きな利益を生み出しているのだ。一方、POP MARTにはIPに生命力を与えるストーリー性が足りない。
POP MARTも当然、この点を意識している。IP産業の上流にあたるアニメ制作会社や下流にあたるセレクトショップなどへの投資を強化し、独自の「IP+ストーリー」モデルを構築しようとしている。この試みは、同社が計画するテーマパーク開業に向けた基盤づくりとなり、結果的に「中国版ディズニー」への道のりを短縮するかもしれない。
とはいえ、来場者を満足させられるテーマパークを建設するには巨額の投資が必要で、回収期間も長い。POP MARTがテーマパーク経営で業績向上を図ることは理屈の上では可能だが、その過程が辛く険しいものになるのは間違いないだろう。
(翻訳・田村広子)
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