「美団点評」の共同創業者、安易な新規事業立ち上げに苦言 – WISE 2018 レポート

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生活関連O2O大手の「美団点評(Meituan Dianping)」の共同創業者で、高級副総裁の王慧文氏が新経済時代のイノベーションを考察するイベント「2018 WISE 新商業大会」に出席。安易な新規事業立ち上げに苦言を呈すとともに、組織能力拡大の重要性を説いた。

講演内容は以下の通り(王慧文氏の発言から抜粋)。

私がまず話したいのは「心構え」についてだ。我々のCEOである王興はかつて「インターネット成熟期」を世に提起したが、あっという間に忘れ去られてしまった。にも関わらず、今年は多くの人たちがインターネット成熟期について触れている。なぜなら、誰もが成熟期の厳しさを実感しているからだと思う。だから、私は今日、この成熟期での心構えについて話したいと思う。

心構えは依然として非常に重要だ。私は一度、友人たちにこんな質問をした。「進歩」と「保守」のどちらが正しいのか。彼らの回答は様々だったが、実際、この2つに正しいも正しくないもない。進歩すべき時は進歩し、保守すべき時は保守する。進歩すべきときに保守することこそが誤りだ。インターネット産業は成長期から成熟期に突入しており、これまでの考え方や計画、管理法などを調整する必要が出てきた。もしこの調整を怠れば、きっと失敗するはずだ。

そこで、私は「成熟期における新ビジネスへの心構え」についてお話ししたい。私がなぜこの話題について話すのかというと、実際に起きた出来事に関連している。以前、企業の経営者が私のところにやって来て、「どうすれば新規事業をうまくできるのか?」と聞いてきた。美団の新規事業を見て、彼は何かしらヒントを得たいと思ったのだろう。ただ、私は彼の期待に沿わない返答をした。「新規事業なんてやる必要はない」と。

彼は驚きを隠せない様子だった。なぜなら彼は新規事業を行う上での賢いセオリーを求めていたのだから。誤解しないでほしい。私は決して挑発を好む人間ではない。ただ、客観的なだけだ。業界は今、成長期ではない。もし成長期ならば、新規事業の成功率は格段と高まるし、失敗しても取り返しがつく。本業の勢いで損失もカバーできるだろう。しかし、成熟期は違う。

中国のインターネット産業はすでに成熟期に入り、大きな転換期が訪れている。にもかかわらず、「なんでもできる」「資金をどんどん投じろ」「すべてを試せ」などと考えている人が多い。根本的な変化が訪れているこの時期に、新たなビジネスで「奇跡」を起こそうなどとは簡単に考えないほうがいい。

だからこそ、成熟期では成長期以上に(自社に)批判的になり、弱点を見つけ、疑問を投げかけ、より多くの仕事をこなさなければならない。成長期ならば、新しいビジネスには躊躇せずに速やかに着手するべきだが、成熟期はよく考え、議論することが肝心だ。

実際、新規事業の立ち上げについては、先日弊社の会議でも論じられることがあった。高級副総裁の陳亮は「会社の組織力が上がれば、新規事業は自ずと生まれる」と言った。私は感動し、非常に理に適っていると感じた。一つの事業でも、複数の事業でもいい。それらがうまく回るようになった時、組織力に余裕があるのなら、新規事業に手を出せばいい。もちろん、組織力は様々なかたちで生み出される。人材育成だったり、会社のプラットフォームのシステム化であったり。この組織力の拡大があってこそ、新たなビジネスチャンスが到来した時にチャンスを掴めるのではないか。

以前、新規事業のアドバイスを求めてきた人に、なぜ私が「やるな」と答えたのか。その理由は至ってシンプルで、彼の会社には十分な組織力がないからだ。もしあるのならば、私のところになど来ないだろう。残念ながら、彼の会社は組織力がないだけでなく、本業もうまくいってなかった。本業でやるべきことがまだまだたくさんあるのに、新規事業に手を出そうとしている。成長期ならば別にいいが、成熟期では大きな問題を生む。先ほども述べたが、成熟期のビジネスには長期的な議論が必要で、決定にも時間をかけるものであり、安易に手を出すものではないのだ。

企業を発展させる原動力は3つあると言われている。市場の後押し、リーダーの統率力、イノベーション力だ。後者2つのどちらが先であるべきかについては諸説あるが、市場の後押しが最初に来るのは確かだ。ただ、成熟期には市場がもたらす需要という名の「ボーナス」がなく、企業を発展させるためには、統率力とイノベーション力に頼るほかない。

私は、中国のインターネット企業の組織力について客観的に見ている。多くの企業はこれまで、たとえ組織力に欠けた状態にあっても事業を急速に拡大できた。しかし、純粋に組織力だけを見れば、アリババ以外の企業はすべて不合格だ。アリババの組織力は実に高い。あれだけ様々な事業に手を出していながら、混乱が起きない。しかし、その他の企業は、私が観察する限り、うまくいっているとは思えない。美団もそうだ。私は自社の組織力が高いとは思っていない。

市場はすでに組織の統率力が試される段階に入っている。もし、我々が組織力の構築に意識を傾けなければ、統率力によって引き出される発展のレベルも下がり、非常に深刻な結果をもたらすだろう。いわゆる「冬」である成熟期は、生き残るためのテストだ。体調管理がしっかりできていない人が、冬に病気にかかりやすいのと同じことだろう。もし、貴方の企業が基本的なことを怠り、組織力も高めていないのならば、たった一つの原因によって「死」がもたらされる可能性だってあるのだ。
(翻訳・飯塚竜二)

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