新規顧客が獲得できるトレーサビリティ・サービス、台湾「奥丁丁」のブロックチェーン技術応用法

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ブロックチェーン統合技術を活用したトレーサビリティや生産管理は、さまざまな産業で重宝されている。台湾を拠点にするテック企業「奥丁丁(OwlTing)」もブロックチェーン技術を用い、農場や牧場向けのトレーサビリティサービスと宿泊施設向けの管理ソリューションを提供している。

奥丁丁のコンシューマー向けアプリを使うと、消費者は農場や牧場から食品を直接購入できる。また、世界の宿泊施設を予約でき、フォトジェニックな観光スポットも検索できる。同アプリは飲食店口コミサイトの「大衆点評」と似ているが、事業者が取り扱う商品情報を収集し整理して提供することで、ユーザーを惹きつけている。同社が最初に食品と宿泊施設に関するサービスを始めたのは、消費者のニーズが高い分野だからだ。

OwlChain ー食品トレーサビリティ

同社のCEO、王俊凱氏によると「OwlChain」は金融テクノロジー企業「AMIS」のブロックチェーン統合技術をベースに開発された、農畜産物のトレーサビリティサービスだという。ユーザーは製品の外装に印刷されているQRコードをスキャンすることで、アプリやサイトで産地情報を得られる。IoT技術を使用するため、農業・牧場にはセンサーを提供している。

例えば、牧場に提供されているセンサーは光量や温度、湿度、雨量、風速などの気象データを検知する。こうした情報を整理してEコマースとつなぐことで、ユーザーは各生産地から食品を直接購入できるようになった。

台湾におけるOwlChainの主な顧客は中小規模の農場・牧場で、毎月200ドル(約2万3000円)のサービス費を徴収している。また、アメリカでも、20社以上に食品や芸術品などのトレーサビリティサービスを提供中だ。

OwlNest ーホテル管理ソリューション

同社のホテル管理ソリューション「OwlNest」は予約管理システムをスマート化したものだ。これまでのシステムではオンライン旅行代理店(OTA)を通じて2つの予約が同時に入ると、オーバーブッキングが生ずることもあったが、OTAのAPIと宿泊施設の APIを連結させることで、この問題に対処した。

OwlNestの主な顧客は民宿や小規模ホテルで、より効率的な予約管理システムを利用することでコストを削減できる。例えば、客室7室の宿泊施設の場合、毎月30ドルのサービス料を支払うことでオーバーブッキングが解消された。

OwlNestの基礎技術はイーサリアムをベースとしており、毎秒5〜10件の予約を同時に処理できる。今のところ、同社の顧客は台湾に集中しているが、2年以内に50万室にサービスを提供し、米国と東南アジア市場へも進出する計画だ。この計画を達成するためには、ブランドの認知度を上げ、契約する宿泊施設を増やすことが重要なミッションとなる。

36Krがこれまで取材してきた食品トレーサビリティ企業には、「食鍵FOODC」「首遡」などがある。これらの企業の強みは、牧場から加工業者、物流業者、卸業者、小売店/飲食店に至るまで一連の流れをつないだことにあるが、現時点では人力に頼る部分も多く、完全にはIoT化されていない。

また、同じくブロックチェーン系ホテル管理ソリューションを提供している「Tripio」「TOOKING」といったサービスはOTAの役割を担うことを目標にしており、また、ユーザーは専用のトークンによる支払いしかできないという問題がある。ユーザーが仮想通貨や現金で支払う場合は、交換手数料が必要となる。OwlNestが目指しているのは、OTAと宿泊施設の管理システムの一体化であり、この領域には今のところ競合は存在しない。

つまり、奥丁丁のビジネスモデルは、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティシステムや管理システムを事業者に提供するとともに、そこで得た情報で消費者を惹きつけて新規顧客開拓や販売力向上につなげる、というものだ。目下、台湾にはこうしたアプリが存在していないことも、同社にとっては追い風となっているようだ。

2018年5月、奥丁丁はSBIクリプトインベストメント(SBIホールディングスの子会社)の出資を受けた。王CEOは、この資金で事業と組織の拡大、サービスのグローバル化を推進すると述べている。
(翻訳・飯塚竜二)

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