「羊の丸焼き」でブランド化に成功した中国の食肉卸業者

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「羊の丸焼き」でブランド化に成功した中国の食肉卸業者

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ブランドの基本的な役割は、産地や機能、品質といった情報を消費者に認識してもらい、他社製品との「違い」を理解してもらうことにある。ブランドが浸透すればするほど、自社製品の競争力は高められ、より多くの消費者を獲得できる。

しかし、中国の農産物では「ブランド」と呼べるものは少ない。多くの人は煙台のリンゴ、陽澄湖の上海ガニ、西湖の龍井茶を思い浮かべるかもしれないが、これらは典型的な産地ブランドであり、企業ブランドではない。

36Krが取材した「北京草原小白羊餐飲管理有限公司」は、羊肉のプライベートブランドを根付かせるために、独特な戦略を採っている。羊の丸焼きをケータリングサービスで提供し、事業者や消費者に「寧夏灘羊(寧夏回族自治区塩池県産の羊肉)」について広く知ってもらうとともに、販路を拡大。また、牧羊技術やサプライチェーンの最適化に取り組むことで、生鮮食品のブランド化に成功している。

同社の創業者である羅煒巍氏は「農産物をブランド化させるには、消費者に認知してもらうこと、産地をアピールすることが重要な鍵となる」と断言する。

まず、消費者の認知については、羅氏は羊料理の中でも特に羊の丸焼きが有名であることに着目。羊の丸焼きは大人数で食べられ、祝いの場の料理として振舞われるなど文化的な側面もある。加えて、多くの調味料を必要とせず、素材そのもののうま味を堪能できる料理でもある。難しい調理技術も不要だ。

そこで、同氏はゴルフ場や企業のイベント、ファームレストランなどを対象に羊の丸焼きを提供するケータリングサービス「来一頭烤全羊(ROAST WHOLE LAMB)」を開始した。同時に、パートナー契約を結ぶ企業には羊肉やグリル技術などを提供した。

同サービスは、羊のサイズによって価格が異なる。12.5キログラム程度の羊(12〜15人向け)の場合、価格は2288元(約3万8000円)で、羊の丸焼き以外に6〜8種の冷菜、ナン、ミルクティーが付く。2016年末に開始したこのサービスは、北京、杭州、蘇州、上海の4都市で展開され、各都市平均で毎月約160セットの注文があり、粗利率は50~60%とのこと。

もうひとつの鍵である産地アピールについては、羅氏は消費者が受け入れやすい「特典」の一つと考えている。同社が取り扱う寧夏灘羊は政府が認める地域特産ブランドで、柔らかく、味も良い。また、脂肪分布が均一で、特にグリル料理に適している。

そこで、同社は今後もケータリングサービスを拡大させていく予定だ(50都市でサービスを展開し、年間4万セットの受注を目指す)。また、生鮮サプライチェーンを構築し、技術サービスを提供することも計画している。

寧夏灘羊は牧羊規模が小さく、生産者も分散しているが、同社は比較的安定した調達体制を築いている。同社の株主には関連する産業チェーンを有する企業もあるため、羊の選別や牧草の草種、牧羊、食肉加工、物流など各プロセスの標準化についても研究中だという。

物流面では、同社はコールドチェーン企業と提携して寧夏から各都市に集中配送することで効率化している。各都市に冷凍倉庫を構え、倉庫から顧客への配送は地元の運送業者が担う。

羅氏はアリババでBtoB事業の地域マネージャーを務めた経験を持ち、連続企業家でもある。BtoB企業の創業経験が豊富で、越境ECプラットフォーム「Bellabuy」と「mobuy」の立ち上げにも携わった。

来一頭烤全羊を提供する「北京草原小白羊餐飲管理有限公司(CaoYuan XiaoBaiYang)」はプレAシリーズで1000万元(約1.6億円)規模の資金を調達済み。リードインベスターを務めたのは、有名な投資家の呉世春氏だ。
(翻訳・飯塚竜二)

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