中華食べながらスマホ充電、池袋から広がる異色のバッテリーサービス【中華ビジネス戦記】

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コンビニや駅、飲食店などでスマートフォン用モバイルバッテリーのレンタルスポットを見かけることが増えてきた。レンタルスポットに表示されているQRコードをスキャンするとモバイルバッテリーが数百円でレンタルできるサービスで、別のレンタルスポットに返却することもできる。現在、3~4社がシェアを争ってレンタルスポットの設置台数を拡大中だが、「ガチ中華」ブームに乗って池袋や上野など東京の中華料理店をベースに設置台数を伸ばしているのが緑色のモバイルバッテリーが特徴的な「mocha」だ。

「バッテリー残量から解放されたい」と起業

「mocha」を運営しているGREEN UTILITY株式会社は、中国人の李展飛さんが経営する日本企業。李さんは2018年8月にGREEN UTILITY株式会社を創業し、9月にモバイルバッテリーのシェアリングサービス「mocha」をスタートさせた。前職で技術営業をしていた頃、営業先でスマホの充電が切れてしまうことが多く、不便を感じていた李さんは、2017年頃から中国でモバイルバッテリーのシェアサービスが普及するのを目にして、「スマホのバッテリーを気にしないでいい世の中をつくりたい」と同事業を始めた。

使い方はとても簡単だ。スマートフォンに「mocha」のアプリをダウンロードし、会員情報や支払情報(PayPayやクレジットカードなど)を登録、モバイルバッテリーが設置されているレンタルスポットのQRコードをスキャンするとレンタルが開始される。使用後はレンタルスポットにモバイルバッテリーを差し込むだけで返却処理が完了し、事前に登録した支払方法から利用時間に応じて支払いが行われる。

利用料金は1時間110円、24時間550円。5日間返却がないと3000円でバッテリーを買い取りになるシステムだ。

筆者もアプリをダウンロードして利用したことがあるが、スムーズにレンタルから返却までを行なうことができた。現在までに全国で300カ所以上のステーションを設置していて、大手では、ビックカメラやプロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルス、東急不動産とも提携を結び、プロ野球楽天イーグルスの本拠地、楽天生命宮城スタジアムや仙台市の駅周辺、東急不動産が保有するスキー場、ホテルなどでも設置が進んでいる。

中華料理店でシェア拡大

日本ではすでに他社がコンビニや駅、空港などでシェアを伸ばしている。一方、「mocha」は中国人経営者らしく、日本の中国人コミュニティの間でシェアを拡大しつつある。mochaアプリからモバイルバッテリーが設置されているステーションをマップで検索すると、東京でmochaを利用できるステーションの半数以上は中華料理店だ。

筆者自身も池袋に中華を食べに行くとお店の入り口でmochaの緑のモバイルバッテリーステーションを目にする機会が増えたと感じる。「池袋や上野、高田馬場などの中華料理店には地道に営業に行き設置してもらいました。mochaは設置していただいた店舗との収入シェアになっています。お客さんに使ってもらうほど店舗側にもメリットがある仕組みになっているのでお店の入り口など、目立つ場所に設置してもらえることが多いです」と李さん。

モバイルバッテリーがレンタルされた場所と返却された場所はデータを抽出し分析していて、AIによる機械学習で設置台数の調整を最適化している。中華料理店が多いので食事中に借りて食事後に返却されるパターンが多いそうだ。池袋では中華フードコートの沸騰小吃城や、熊猫火鍋など数十店舗に設置されており、「mochaアプリを使えばモバイルバッテリーのステーションを探すだけじゃなく、美味しい中華料理のお店も探せますよ。」と李さんは冗談交じりに話してくれた。

「シェアリングサービスはスケールメリットがあるので、今後もシェアを拡大させたいです。しかし資金をむやみに注ぎ込んで増やすことはしたくありません」と李さん。背景には中国で市場拡大を狙い調達資金を大量に注ぎ込んだ結果、経営破綻した数々のシェアリングサービスの失敗がある。「体力勝負もできなくはないですが、キャッシュレス化によるスマホのバッテリーの重要性やシェアリングサービスの普及により認知度が上がってきているので今後、さらに需要は伸びてくると思います。設置していただく店舗と共同でモバイルバッテリーをさらに普及させていきたいです」

新しくオープンした中華料理レストランで「mocha」の緑色のシェアリングバッテリーを見かけることが今後増えていくかもしれない。

この連載では、人気ブログ「東京で中華を食らう」を運営する阿生さんが、日本の中華料理店事情をビジネス面から紹介します。

阿生:東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng

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