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約5兆円を吹き飛ばしたフォックスコン・インダストリアル・インターネット(FII)の苦悩
台湾電子機器製造の鴻海(ホンハイ)精密工業の中国子会社「工業富聯(フォックスコン・インダストリアル・インターネット」(FII)は、上海市場に上場されてから株価が乱高下に見舞われた。12月3日の終値は12.01元(約200円)と上場初日に付けた上場来高値26.36元(約430円)から大幅に下落した。時価総額は2400億元(約3.9兆円)となり、わずか半年で高値時の5193億元(約8.5兆円)の5割にあたる約3000億元(約4.9兆円)相当が蒸発したことになる。
FIIは、2018年上半期に上海市場でIPOした「ユニコーン企業」のうちの1社。、他には、ネットセキュリティーの三六零安全科技(360 Security Technology Inc.)、製薬の無錫薬明康徳新薬開発(WuXiAppTec)、車載電池の寧徳時代新能源科技(CATL)であり、いずれも上場来高値後に持ち高調整の売りに押されているものの、中でもFIIの株価急落は群を抜いている。
FIIが発表した2018年第3四半期の売上高は、前年同期比60%増の1249億元(約2兆円)だったが、純利益は97億5600万元(約1600億円)と2.7%増にとどまった。粗利益率が11%から8%に、純利益率は5%から3%に低下した。売上原価がかさんだほか、人件費が上昇したためだ。
伝統的な受託製造業の低利率体質から抜け出すためには、インダストリアル・インターネットプラットフォームを導入して生産性を改善したり、コストを削減しなければならないが、現在のFIIには容易なことではない。
FIIのPER(株価収益率)も上場来高値時の47倍から18倍に低下した。市場ではハイテク銘柄としては注目されなくなりつつあり、「社名に『インダストリアル・インターネット』と掲げても所詮は受託製造工場だ」とのムードが広がっている。ただし、上海市場の株価プレミアが影響し、FIIのPERは依然、台湾に上場されているホンハイや香港に上場されているグループ会社、富智康集団(FIHモバイル)に比べて高水準にある。
10月26日にFII董事長に就任した李軍旗氏は、以前は深圳市など政府関連のハイテクプロジェクトに携わってきた。就任後間もない11月22日、FIIのIoTプラットフォーム「ビーコン」が政府が推奨するテクノロジー産業向けにテスト運用されることになり、「大規模受託製造工場がハイテク事業へ転換する」と大いに期待された。しかも、上場初日には、申万宏源証券(Shenwan Hongyuan)が報「FIIは2018から2020年にかけてインフラ整備や構造改革を進め、2020年以降にビーコンプラットフォームを外販する」との見通しを出していたのだ。
ところが、「米ゼネラル・エレクトリック(GE)がIoTプラットフォーム『Predix』を販売する計画だ」とウォール・ストリート・ジャーナルが報じた(Predixはビーコンのベンチマーク)。かたやビーコンはいまだに社内試用段階にとどまっている。FIIが発表した2018年上半期決算で、「2015年に導入したビーコンは生産効率や在庫回転率、人員コストなどの改善に役立った」としたが、2期連続の減益では説得力に欠ける。市場の見方は厳しく、申万宏源証券は追加報告で「FIIのIoTプラットフォーム外販は遅れる」との見方を示した。
(翻訳・桜田一美)
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