どうなる中国ビジネス環境? 呉暁波の2019年予測

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どうなる中国ビジネス環境? 呉暁波の2019年予測

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2018年12月30日、中国の経済ジャーナリスト呉暁波氏が講演会「呉暁波年終秀」で2019年を展望した。

呉氏はまず、2018年を総括する2つのキーワードとして「ブラックスワン」と「グレーライノー(灰色のサイ)」を挙げた。

前者は、ファーウェイの孟晩舟CFOがカナダで拘束された事件など、想定外の衝撃的な出来事を指す。

後者は、高い確率で予想されていたにも関わらず、見過ごされたために発生した出来事を指す。現在、多くの人が不安視する中国の不動産市場では、地方債がグレーライノーに相当するとの懸念がある。

こうした不安定な環境下、呉氏は2019年の中国を以下のように予測する。

2019年8大予測

1)経済の見通しは不透明
2)インフレを懸念
3)製造業が変わる
4)消費が変わる
5)新しい消費者が台頭
6)消費スタイルは会員制へ
7)中国発の金融革命
8)5Gのインパクト
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1)経済の見通しは不透明

前年に引き続き、2019年前半は経済の冷え込みが続く。後半は不透明だ。マクロ経済に詳しい30人に、今年のマクロ経済、資本市場、米中貿易貿易戦争の行方についてアンケートをとったところ、以下の結果を得た。

■マクロ経済:悲観的―18人、現状維持―9人、楽観的―1人、わからない―2人
■資本市場:活況―10人、現状維持―10人、冷え込む―6人、わからない―4人
■米中貿易戦争:平和裏に終結―1人、激化する―10人、鎮静化へ向かう―15人、わからない―4人

つまり、今年の経済は厳しい局面が続くと専門家は見ている。
資本市場に関しては楽観的な見方も多いが、「資本市場の活性化が生産活動を刺激してくれれば」という一種の希望的観測だ。

米中貿易戦争は中長期的に続くと見ている。さまざまな分野で、それぞれ異なったアプローチで、戦火が勃発するだろう。しかしこれは、中国の企業、産業、産業政策のいずれにとっても悪いこととは限らない。中国の過去40年にわたる改革開放政策は、つねにボトムアップで進行してきた。

つまり、技術や国際問題などの外的要因に刺激されて、成長や変革を実現してきたのだ。

2)インフレを懸念

運輸交通インフラなどの巨大建設プロジェクトは過去4カ月だけで4兆元(約63兆円)規模、付帯施設を含めると10兆元(約157兆円)規模だ。2013年とほぼ同等の水準である。民間投資も刺激するインフラ建設は今回の経済危機の引き金となっており、景気回復がインフレを伴う可能性も大いにある。

2019年は用心するに越したことはない。マクロ的に見ればトンネルの出口までは距離があり、耐え忍ぶ解決方法ではもはや時代遅れかもしれない。

3)製造業が変わる

①技術が新たなけん引力に
2014~2015年ごろから、中国の製造業は非常に多くの変化を遂げてきた。数年来、数多くの製造現場を訪れて、フレキシブルライン、センサー技術、越境EC、クラウド・コンピューティングなどを観察してきたが、現在では技術こそが製造業のけん引力であり、消費者は技術にお金を出すものだという認識に至った。

②製造業がカスタマイズ志向に
1瓶数元(約100円)程度の茶飲料のボトルに購入者の顔写真をプリントしようとしている企業がある。漢方ドリンクで有名な「王老吉」だ。現段階ではコストが高すぎるが、消費者が望めば、いずれ量産できるだろう。

ドイツの複合企業シーメンスは、数年前からカスタマイズ生産の大規模化に取り組んでいる。「感情のコスト(Emotional Cost)」という概念を取り入れることで、製造業は生産コストや原材料コストで勝負するような単純な世界ではなくなる。

③新たなソリューションへ
多くのメーカーではハードウェアとソフトウェアを融合して新たなソリューションを構築している。

④協業が進展へ
業界間で大規模な協業が進んでいる。「明日の敵は今日のライバルとは限らない」と言えよう。

⑤製造業は転換期に
弱小メーカーにとって、今後3年間は辛い時代が続くだろう。経済危機は企業が淘汰される時期でもあり、一握りのトップメーカーがブランド力、製造力、ネットワーク力をさらに磨き上げることになる。製造業はこうした転換期に入ったと言える。

白物家電の歴史をたどっても、80年代から現在に至るまで、収益モデルは変化を重ねてきた。前時代の考え方では次の時代にはまったく通用しない。家電業界に限らず、数十年にわたって変化を拒んできた業界も、この1、2年で産業ライフサイクルの大きな転換点を迎えた。

4)消費が変わる

中国のイノベーションの未来にとって喜ばしい変化がすでに見えはじめている。

①本土意識が目覚めた
新中産階級の台頭、特に「90後」の新しい消費グループが台頭してきた。彼らは都市化が進む中国と共に成長し、中国が世界第2位の経済大国になるのを目の当たりにした。そのため、彼らの本土意識は非常に強い。そして、この数年は国産品へ大規模に「回帰」する現象もみられる。

こうした本土意識の目覚めは、イノベーションを起こしたり、国としての自信を取り戻したりする上で重要なものだ。

②嗜好に基づいた消費へ
必要に迫られてではなく、人々はより良い生活のために消費するようになる。つまり、消費者はその商品が好きだから購入するようになる。これによって、消費行動は繰り返される。

③消費哲学が変化
長い間、中国の消費市場は「安いものがベスト」だった。しかし、少額で世界最高の物を買うことができるだろうか?

ここ数年、消費者はまず好きかどうかを考えて商品を選ぶようになった。そのため、今日、中国市場でよく売れている商品には、本土のテイストがあり、美しく、品質も良く、価格もまずまずという共通点がみられる。

今後我々が見るであろう光景は、「安いものがベスト」という消費哲学から、品質と価格を重視する新しい消費哲学へのシフトだ。

④小さくて美しいものの台頭
大企業はますます能力を発揮して業界の壁を超えてビジネスを展開している。同時に、ビジネスはより細分化されており、発展のチャンスも拡大している。つまり、大きくて強いものと小さくて美しいものが実体経済の中で共存できるようになったということだ。

5)新しい消費者が台頭

ホテルチェーン「亜朶酒店(Atour Hotel)」のデータによると、25~35歳の新中産階級は頻繁に出張し、特に「90後」はもっとも出張が多い。約4年前の主力は「80後」だったが、今や「90後」がビジネスで最も活発なグループに成長した。

問題は、ホテルのコンセンプトや宿泊費、内装、サービスなどが彼らに適しているかどうかだ。彼らに気に入られなければ淘汰される可能性がある。新しい消費者はさまざまな分野で重要なポジションを占めはじめている。

「名創優品(メイソウ、MINISO)」のデータを紐解くと、同社はこの3年間に国内で急速に発展し、すでに3000軒超の店舗を運営していることがわかる。三・四級都市の消費力は、一・二級都市よりも大きくなっている。

このデータと、「拼多多(Pinduoduo)」や「趣頭条(Qutoutiao)」が発表したデータには非常に興味深い相似点がある。今日、中国の流行はもはやピラミッド型――つまり、まず北京と上海で流行し、次は無錫と南京、その後で徐州で流行する――ではなく、ある流行が一夜で中国各地に広がる可能性もあるということだ。

三・四級都市が急成長しているのはもともとのベースが低く、それらのベースが急速に発展しているためだ。流行やイノベーションの伝播曲線が短くなっている反面、イノベーションの深度化は進んでいる。

このことは、クリエイティブ関連、日用消費財関連の企業および創業者には警告となるだろう。イノベーションを生み出し続け、さまざまなチャネルを事前に構築し、流行が発生した時に短期間で利益を上げる必要があるからだ。

小米(シャオミ)のオンラインストア「小米有品(Youpin Mi)」のデータによると、新中産階級は生活用品やAI、健康分野の品質を特に重視している。指紋スマートロックや壁掛け洗濯機のように「新しく斬新でクール」であることが、80後以降の若者に愛される条件だ。

6)消費スタイルは会員制へ

新中産階級や新たな国産品の登場、ソーシャル環境の普及を背景に、2019年には3つのビジネスモデルが刷新されるだろう。

①セグメント化
今日、この講演会に集まった4000人は、一つのソーシャル・サークルと言える。そして「ビリビリ動画(Bilibili)」の正会員も、一つのソーシャル・サークルだ。ビリビリの正会員になるためには、120分以内に100問を解くテストにパスしなければならない。人々のセグメント化が進んでいる。

したがって、中国全土の消費者やあらゆる年代の人々をターゲットにした商品を作ろうと考えるべきではない。あらゆる情報はセグメント単位で発生するため、そのようなことは非現実的だ。

②プライベート・ソーシャルEC
2017年以降に姿を現したプライベート・ソーシャルサービスが、2019年にブレイクするだろう。消費者がプラットフォームで情報収集するコストや、企業がプラットフォームを介して顧客を獲得するコストは上昇している。プライベート・ソーシャルをベースとしたECが最も効率が良いECモデルであることが2018年に証明された。

③会員制
貢献度が高いユーザー1人を獲得するために必要なコストは、ますます膨らんでいる。このため、獲得した1人の顧客に長期的かつ細やかに対応し、繰り返しアクションを起こしてもらうことが不可欠だ。そう考えると、ソーシャル・サークル、プライベート・ソーシャルEC、会員制は、相互に関連して変化を続けるビジネス業態だと言える。

2019年に最も流行するのは会員制の消費スタイルであり、すでに会員制を取り入れた企業はますます増えている。

7)中国発の金融革命

米中貿易戦争の戦場の1つであるインターネット金融は、他分野ほど戦いが激化してはいないものの、今後数年間で中国が飛躍的な発展を遂げることで、米国は大きな脅威を抱くようになるだろう。

2008年、経済学の教授ムハマド・ユヌス氏が北京を訪れた。彼はバングラデシュとインドにグラミン銀行を設立し、貧困層向けに少額融資を行ったことが評価されて2006年にノーベル平和賞を受賞している。

当時、中国では60以上の金融機関がグラミンの事業モデル普及に力を注いでいたが、後に全て倒産した。審査や確認にかかるコストが大きいため、高金利となることに加えて、零細企業には担保提供できる資産がなく、また僻地に点在する零細企業から貸付金を回収することが難しかったからだ。

このモデルは中国だけでなく世界の他の地域でも通用しなかった。零細企業向けの融資は世界的な課題である。今、中国では多くのインターネット銀行が、零細企業への融資に向けて、サプライチェーン・ファイナンスとデータマイニングを活用している。

企業のデータやサプライチェーンを把握して、融資に適した信用があるかどうかを評価できるからだ。

「微衆銀行(WeBank)」は2017年11月に零細企業向け融資サービスの試行を開始した。2018年11月までに30万社から申し込みがあったが、それまで借入金がゼロだった企業が全体の69%を占めた。

中国でこのようなサービスを行っているのは微衆銀行だけではない。すでに多くの銀行や金融機関が参入している。

サプライチェーン・ファイナンスとビッグデータに基づいた金融モデルの効果が中国で実証されれば、インドやベトナム、アフリカ、南米、さらには欧州諸国の一部でも十分通用する可能性がある。他国にとって大きな脅威となるはずだ。

2019年は、インターネット銀行とハイテク企業が技術やビジネスモデルの改良を進める。中国式の零細企業向けファイナンスは目を見張る変革を遂げるだろう。国家の関連政策のもと、ふさわしい制度と技術革新があれば3年以内に零細企業向け融資の問題は解決されるはずだ。

8)5Gのインパクト

5G時代に突入した。世界に情報化革命をもたらしたのは情報の伝達スピードであり、スピードが技術革新をもたらしてきた。1999年に出現した3Gはインターネット時代を切り開いた。「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」は3Gの申し子だ。2009年には4Gが現れ、モバイルインターネット時代に突入した。そして2019年、5Gの到来だ。

3Gと4Gの出現で人と情報の関係性が変わったとすれば、5Gは精密農業、リアルタイム輸送、スマート物流、無人運転など、スマート社会への大きな変化をもたらす。今後の10年間はあらゆる業界で全く新しい変化が起こり得る、非常に興味深い時期だ。
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呉氏は最後に、リルケの詩『予感』の一説を朗読し、このような気持ちで2019年を迎えたいと話を締めくくった。「私は嵐を知って、海のように騒ぎ立つ。私は大きく広がり、また縮みこみ、自分自身を振り切って、茫々たる風の中にたったひとりいる」

(翻訳・愛玉、飯塚竜二、畠中裕子)

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