中国ビジネス界を揺るがした2018年十大事件

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中国ビジネス界を揺るがした2018年十大事件

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米中貿易摩擦、世界株式市場の低迷、大規模リストラ計画……2018年はさまざまなリスクが露見した1年となった。新興企業の台頭で大企業を取り巻く環境は変化し、競争は激化。一方で、資金調達がうまくいかず、立ち行かなくなった新興企業も多い。36Krが、2018年に起きたさまざまな出来事を振り返り、中でもビジネス的にインパクトの大きかった出来事を「十大事件」としてピックアップした。

京東集団の劉強東CEO、性的暴行容疑で逮捕

経済的影響力:★★★★★ 社会的関心度:★★★★★

2018年8月31日23時32分(米国時間)、京東集団(JD.com)の劉CEOが出張先の米ミネソタ州で女性への性的暴行容疑で逮捕された。翌日16時5分に釈放されたが、その後も捜査は続き、12月21日になって不起訴処分が下された。なお、京東株は9月5日に売りが殺到し、10%以上下落した。

しかし、この事件とは関係なく、京東の試練はしばらく続くに違いない。2014年に米ナスダック市場へ上場して以来、同社の売上高成長率はアリババの後塵を拝している。また、GMV(流通総額)成長率でも同じくライバルである拼多多(Pinduoduo)に負けている状況だ。長きにわたって高成長を続けてきた京東だが、この困難を乗り越えられるだろうか。

配車サービス「滴滴出行」で殺人事件

経済的影響力:★★★★★ 社会的関心度:★★★★★

浙江省で2018年8月24日午後、配車サービス企業「滴滴出行(Didi Chuxing)」の相乗りサービス「順風車」を利用した19歳女性が運転手に暴行された挙句に殺害されるという事件が発生した。この事件(順風車事件)は大きな物議を醸すことになり、後に滴滴は同サービスを停止することになった。

事件を受け、滴滴のビジネスプランが大きく狂った。例えば、導入を計画していた旅行関連事業は無期限停止、2018年上半期から美団とともに進めてきたデリバリー事業も縮小した。シェアサイクル企業「ofo」の買収計画も暗礁に乗り上げた。現在、経営危機に陥っているofoだが、滴滴による買収が成立していたら状況は変わっていたかもしれない。また、滴滴のIPOは延期となり、業界全体の信頼も大きく損なわれた。順風車事件の影響は計り知れない。

バイトダンスとテンセントの争い

経済的影響力:★★★★★ 社会的関心度:★★★★

「TikTok(抖音)」や「今日頭条(Toutiao)」といった人気サービスを運営するバイトダンス(字節跳動)は、いまだBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)資本に染まっていない。BATはこの「小さな巨人」の台頭に少なからぬ脅威を感じており、中でもテンセントにとっては厄介な存在となりつつあるようだ。

2018年6月初め、両社の関係を象徴する出来事があった。抖音は微信公式アカウントで「微信が抖音動画へのリンクを無効にした」と非難。一方、微信側は「動画の内容が不適切だ」と反論し、結局、この騒動はバイトダンスが訴訟を起こすまでにこじれた。

12月初めには、両社の関係をさらに緊迫させそうなニュースが報じられた。バイトダンスがIMアプリ「飛聊(flipchat)」をローンチさせるというのだ。言うまでもなく、IMはいまだテンセントの「聖域」。果たして飛聊は微信の牙城を突き崩せるのか、また、テンセントはどのような対策を講じるのか、2019年も両社の動きに注目したい。

Facebookによる個人情報流出

経済的影響力:★★★★★ 社会的関心度:★★★

2018年はFacebookにとって「最大の危機」とも言える1年になった。

3月17日(米国時間)、英データ分析/政治コンサルティング企業「ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)」がFacebookの約5000万人分の個人情報を不正入手したと報じられた。4月4日、Facebookは流出した個人情報が約8700万人分であることを公表。不正入手された個人情報は、2016年の米大統領選挙の世論操作に利用されたなどと報じられ、世界中から大きな関心を集めることになった。Facebookは9月にもセキュリティの脆弱性を突かれてユーザーのアクセストークンが流出。こちらは約5000万人分のアカウントに影響があったという。

こうしたスキャンダルによってユーザーと市場からの信頼を失うとともに、Facebookは明らかな成長鈍化にも直面している。7月25日に発表された2018年第2四半期決算は市場の予想に届かず、翌日には株価が大幅下落。1日で時価総額は1194億ドル(約13兆円)減少することになった。ユーザーの伸び悩みや広告収入の限界もささやかれる中、Facebookは成長モデル変革の必要性に迫られている。

ニューエコノミー企業のIPOラッシュ

経済的影響力:★★★★★ 社会的関心度:★★★

2018年はシャオミや美団点評、拼多多など中国のニューエコノミー企業が多数上場を果たした。ニューエコノミーの成熟、市場支援策などにより、多くの企業が上場に向かったわけだが、中でも香港市場は活発で、香港取引所では1日に8社が上場するという「珍しい光景」も見られた。

さらに、アント・フィナンシャル(螞蟻金服)、滴滴出行、アリババクラウド(阿里雲)、バイトダンス、陸金所(Lufax)など数百億ドル(数兆円)超のニューエコノミー企業が上場を控えている。しかし、依然として市場環境悪化への懸念は根強く、上場を先延ばしにする企業も現れるだろう。

バイドゥ陸奇COOが突然の辞任

経済的影響力:★★★★ 社会的関心度:★★★

マイクロソフトでグローバル業務を統括する副社長執行役員を務めた陸氏は、2017年1月にバイドゥに加入。COOとして大胆な改革を断行するとともに、AI分野の重要プロジェクトで事実上の責任者を務めるなど、大きな存在感を示していた。

しかし、2018年5月、同氏は突然辞任。関係者によると、原因は内部抗争だという。

興味深いのは株価。陸氏が在籍していた400日余りの間にバイドゥの株価は約60%上昇したが、同氏が離脱するとたった2日間で14%(137億ドル=約1兆5000億ドル)も下落した。

なお、陸氏はバイドゥを離れた後、米ベンチャーキャピタル「Yコンビネータ」中国拠点のCEOに就任した。

資産運用業界の変革、シャドーバンキング抑制

経済的影響力:★★★★ 社会的関心度:★★★

2017年ごろから「資金調達の冬」という言葉を耳にする機会が増えたが、2018年4月、資産管理に関する「史上最も厳しい」ルールが施行され、情勢はさらにシビアになった。

4月27日、中国人民銀行、銀行保険監督管理委員会、証券監督管理委員会、国家外貨管理局は連名で、シャドーバンキング(影子銀行)の抑制、資産運用業務の正常化を目的とする「金融機関の資産管理業務の規範化に関する指導意見」を発表した。

この新ルールの施行により、VC/PEを取り巻く環境は大きく変わり、資金調達はより困難になった。投中研究院が発表したVC/PE統計データによると、2018年第3四半期には139本のファンドしか募集されておらず、前年同期比で41.35%の減少。目標資金調達額は545.53億ドル(約6兆円)で、こちらも8割減という大幅減となった。

一方で、新ルールはプライマリーマーケットのVC/PE業界是正を行っており、業界に持続・循環可能なエコシステムを形成したとも言える。

テンセント事業再編、法人向け事業を強化

経済的影響力:★★★★ 社会的関心度:★★★

テンセントの株価は年初と比べると23.6%下落した(2018年12月19日現在)。市場の飽和、認可凍結などの影響が、ゲーム事業に数字として表れたかたちだ。

テンセントに限らず、大手IT企業はコンシューマー向けビジネスから法人向けビジネスに軸足を移しはじめている。テンセントは9月30日、6年ぶりの事業再編を行い、7つあった事業グループを6つに再編。クラウド・スマート産業事業グループ(CSIG)を新設し、テンセントクラウド(騰訊雲)をはじめ、スマートリテール、地図サービス、セキュリティサービスなどの法人向け事業を同部門に集約した。

また、テンセントはクラウド部門の従業員を3000人から7000人に増やし、アリババクラウドのように全国各地にデータセンターを設置するプロジェクトを次々と立ち上げた。

テンセントのクラウド事業は勢いづいている。2018年第3四半期の決算報告によると、クラウド事業による売上高は60億元(約970億円)を超えており、3四半期連続で前年同期比100%超の伸びを見せた。2018年前半のパブリッククラウド市場シェアは2位だ。ちなみに、2013年にサービスを開始した同社のクラウド事業は、2015年の時点では市場シェアでトップ10にすら入っていなかった。

アリババのジャック・マー会長が電撃引退

経済的影響力:★★★ 社会的関心度:★★★★★

バイドゥ、テンセント、京東に比べれば、アリババは比較的順調な1年を過ごした。しかし、ジャック・マー会長の引退が同社の将来にどのような影響を及ぼすかを見定める必要はある。

マー会長は、自身の誕生日であり「教師の日」でもある9月10日に、アリババ創業20周年となる2019年にトップの座から退いて張勇(ダニエル・チャン)CEOを後任に据えると表明。同時に、2020年の株主総会をもって董事会を脱退する意向も明かした。

アリババのような大企業にとって、適切な後継者を選ぶことは重要だ。ビル・ゲイツ氏に代わってマイクロソフトCEOに就任したスティーブ・バルマー氏がモバイル分野で機会を逸して凋落の原因を作った一方、現CEOのサティア・ナデラ氏はクラウド事業で復活を成し遂げた。数十年間にわたってIBMが成長を続けてこられたのは、1990年代に同社の経営を再建したルイス・ガースナー氏のような優れたCEOが存在していたからだ。

後継者に指名した張CEOについて、マー会長は「卓越したビジネスの才能、堅実なリーダーシップを示してきた」と評している。これからの2年間、アリババは過渡期を迎える。もちろん、張CEOには、Eコマースのトップランナーとしての地位を維持しつつクラウド・コンピューティングの市場争いに勝つことが要求されるはずだ。

美団点評によるモバイク買収、シェアサイクルブームの終焉

経済的影響力:★★★ 社会的関心度:★★★★

2017年8月に日本進出を果たしたシェアサイクルのofoは、1年余りで撤退することになった。

「資金難」。ofoの2018年を一言で表せばこうなるだろう。3月13日、アリババなどからシリーズE2-1で8.66億ドル(約955億円)を調達した同社だが、以後、調達は成功せず。一方、同社の最大のライバル「モバイク(摩拝単車)」は4月に美団点評(Meituan Dianping)に買収された。これによって、両社による先行投資型「チキンゲーム」に終止符が打たれることになった。

ofoは8月、6800万元(約11億円)超の支払いを滞納したということで、パートナー企業の「上海鳳凰企業(Shanghai Phoenix Enterprise)」に訴えられた。また、10月に公開された資料では、ofoの負債総額は65億元(約1040億円)で、そのうち、利用者に返還する保証金は36億元(約577億円)、サプライヤーへの負債は10億元(約160億円)に達していた。

ofo創業者の戴威氏は11月14日に開催された従業員大会で「倒産の可能性はないが、それ以外の可能性はある」と述べ、12月19日には従業員全員に感謝のメールを送り、「逃げない姿勢」を強調。戴氏は倒産以外の方法でofoを再生させるべく、多方面にアプローチをかけている状況だが、前途は多難だ。なお、戴氏はすでにofoの代表から退いている。
(翻訳・飯塚竜二)

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