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経済紙「21世紀経済報道」によると、米テスラ上海工場の第一期投資額は160億元(約2600億円)、総投資額は500億元(約8000億円)に達するという。まずは組立ラインを構築し、「中国産テスラ」を最速で実現させる計画だ。
2018年7月、同社は上海市臨港地区開発建設管理委員会、上海臨港経済発展(集団)有限公司とBEV(純電気自動車)プロジェクト投資契約に調印。テスラは上海の臨港地区に単独資本で研究開発、製造、販売などの機能を一体化させた上海工場「Gigafactory 3」を建設し、最終的に年間50万台の生産を目指す。
10月、同社は工場建設用地の取得を発表。12月、テスラ中国の責任者はプロジェクトの進捗状況について「整地がほぼ完了し、間もなく建設を始める。2019年下半期には部分的に生産が始められる」と述べていた。言葉通りに進展すれば、テスラの中国生産は予定よりも1年ほど早くスタートすることになる。
CEOのイーロン・マスク氏は以前、「中国に工場を建設することで、少なくとも3600ドル(約40万円)の輸送費を削減できるだけでなく、中国のサプライチェーンと労働力を活用することで大幅なコストカットを実現できる」と明かしていた。テスラの販売価格を3分の1程度引き下げることができるかもしれないとして、競争力向上に期待を寄せていた。
現在、世界最大の自動車市場である中国は、同社にとって第二の市場となっている。同社の財務報告によると、2017年の中国での売上高は20億ドル(約2220億円)を超えた。
しかし、中国での業績は関税引き上げによって勢いを失いつつある。米中貿易摩擦の影響で米国からの輸入車にかかる関税は40%になり、同社は「モデルS」と「モデルX」の中国での販売価格を2万ドル(約220万円)強引き上げ、その後、モデルSはさらに価格を引き上げられた。
また、同社は中国新興EVメーカーとの競争に直面している。「蔚来汽車(NIO)」や「小鵬汽車(Xpeng Motors)」などはローカライズが進んでおり、製造から販売に至るまで有利な状況にある。サプライチェーン、生産開発、人材面で優位に立ち、ブランド認知の面でも消費者心理を理解している国内勢に分がある。
つまり、テスラはローカライズを加速させ、中国市場における競争力を高めなければならないということだ。
しかし、「モデルS 75D」を例にとると、現在の販売価格は70万元(約1100万円)超で、中国で生産しても大衆車化することは難しいかもしれない。同社は2020年末から上海工場での生産を開始する計画だが、生産開始までに解決しなければならない問題は山積みだ。
まず、同社が長年直面してきた量産化問題が引き続き存在している。同社は2017年に「モデル3」を週5000台量産するという目標を立てたが、2018年になって何とか達成できたというのが実情で、ミッドレンジバージョンのモデル3もいまだ納車には至っていない。
同社が量産化の苦しみから脱却するためには、自身のサプライチェーンを構築する必要があるが、これは容易ではない。同社は米国から部品を輸送できるかもしれないが、さらにコストを増やすことになり、地域や時間などといった制約も受ける。一方で、中国で独自のサプライチェーンを構築するのにも多くの困難が伴う。同社のバッテリー製造、部品組立などは国内のEVとは異なるからだ。
また、資金的な圧力も同社にのしかかる。同社は現在も利益を出していない。加えて、本国での研究開発や生産に多額の資金を投じなければならず、さらに今回の上海工場の建設費用もかかる。資金繰りの不安から解放されないまま、「中国ローカライズ」を推進することは容易ではない。「21世紀経済報道」によると、上海工場建設に必要な資金の大部分を、テスラは債券発行で調達する計画だという。
長い目で見れば、テスラは中国で業績を上げ、多くの利益を得られるかもしれない。しかし、中国生産を開始するまでの道のりは決して平坦ではない。
(翻訳・飯塚竜二)
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