デジタル人民元、北京冬季五輪で大規模運用へ 普及目指し準備着々

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開幕を目前に控えた2022年北京冬季オリンピック。その会場を中心に、デジタル人民元での決済システムが大規模運用されるという。越境決済の導入にも注目が集まる。

デジタル人民元の実証実験が始まったのは2020年4月。それから2年ほどの間に、デジタル人民元はまず生活関連サービスに導入され、現在では小売決済を中心に衣・食・住・交通の全分野をカバーするようになった。

中国国務院弁公庁が1月6日に発表した「生産要素の市場化配置総合改革の試行に関する全体計画」の中では、「効果的な金融サービスの供給を拡大し、小売取引や公共料金支払い、行政サービスなどの場面でデジタル人民元の試験的利用を支援する」と明言されている。その後、テンセントやファーウェイ、シャオミ(小米科技)、京東(JD.com)、美団(Meituan)など50以上の大手プラットフォームがデジタル人民元サービスの導入を発表した。

生活関連サービスを展開する美団では1月7日までに、デジタル人民元ウォレットを利用するユーザー数が1日平均で約20倍に増え、デジタル人民元を利用した注文や決済額も1日平均25%増加した。ファーウェイの公式アプリストアでは1月9日時点で、デジタル人民元アプリ(試行版)のダウンロード数が580万回を突破している。

国務院新聞弁公室が1月18日の記者会見で公表した2021年金融統計データによると、2021年12月31日時点で、デジタル人民元の試行場所は808万5100カ所を超え、2億6100万人が個人ウォレットを開設。取引総額は875億6500万元(約1兆5700億円)に達したという。

北京冬季オリンピックは、デジタル人民元の運用性を検証する一大実験となるだろう。業界関係者によると、オリンピックが閉幕する頃にはデジタル人民元が幅広く適用できることを実証できる可能性があるという。

河北省張家口市の競技会場では、すでに完成した施設がデジタル人民元の決済に100%対応しており、それ以外の施設についても関係する契約や協議が完了している。大会組織委員会が位置するエリアでは、無人販売車や自動販売機、無人スーパーなどが試験運用されるほか、かざすだけで決済できる近距離無線通信(NFC)機能搭載の手袋やピンバッジ、ユニフォームなどウエアラブルデバイスも導入される。

デジタル人民元は、会場の外でも交通や食事、宿泊、買い物、観光、医療、通信サービス、エンターテインメントなどで幅広く利用できるという。全体として、デジタル人民元の普及について楽観的な見方が多い。

一方で、アリペイ(支付宝)やWeChatペイなどの第三者決済サービスは大きな打撃を被ることが予想される。

西南証券(Southwest Securities)のリポートでは、デジタル人民元の正式導入後、第三者決済サービス事業者の一部業務がデジタル人民元に統合される可能性が指摘されている。しかも、デジタル人民元が本格運用されれば第三者決済サービスの利用者が分散し、トラフィックを利用して収益を上げていた金融ビジネスに多大な影響を与えることは確実だ。

これまで中国の第三者決済サービスは市場集中度が高く、アリペイ、WeChatペイ、銀聯(ユニオンペイ)など大手の寡占状態だったが、デジタル人民元の出現により勢力図に変化が生じるとみられる。

ブルームバーグ・インテリジェンスの試算によると、決済サービス市場におけるデジタル人民元のシェアは2025年までに9%に達する見通しで、決済サービス事業者や銀行を圧迫する可能性があるという。

第三者決済サービス事業者が今行うべきことは、変化を受け入れて迅速に対応し、デジタル人民元が切り開く新たな産業エコシステムの中で自らのチャンスを見つけ出すことと言えよう。

作者:WeChat公式アカウント「億欧網(ID:i-yiou)」
(翻訳・畠中裕子)

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