6年で360億円調達、テンセントも出資の医療テック企業が上場へ。市場シェア1位も赤字拡大が続く

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6年で360億円調達、テンセントも出資の医療テック企業が上場へ。市場シェア1位も赤字拡大が続く

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医療のデジタル化を手掛ける企業が次々と頭角を現している。「太美医療科技(Taimei Medical Technology、以下『太美医療』)」がこのほど、上海証券取引所に目論見書を提出した。ハイテク企業向け市場「科創板(スターマーケット)」への上場を準備するもので、「華泰聯合証券(Huatai United Securities)」が推薦人となっている。

太美医療はクラウドコンピューティングとビッグデータ技術に基づく生命科学産業のデジタル化ソリューションを手掛けている。今回の上場では1億株未満の株式を発行し、20億元(約360億円)を調達する予定だ。

IT大手テンセントも投資

太美医療は2013年設立。中国国内の医薬SaaS企業としては多少出遅れたものの、業界が急成長するタイミングは外していない。

2015年以降にクラウドサービス関連の政策が出されると、医療SaaS業界は急速に成長した。データによると、中国の企業向けSaaSの市場規模は20年には前年比48.7%増の538億元(約9700億円)規模に達している。中でも医療SaaS市場は18年の19億元(約340億円)から20年には37億元(約670億円)へと成長。医療SaaS市場の年平均成長率は40%前後で、今後も30%以上を保ちながら25年には177億元(約3200億円)規模となる見通しだ。

太美医療は設立以来、多くの有名投資会社から注目を集めてきた。中国企業情報サイト「企査査(Qichacha)」によると、太美医療は2013年から今までに8度の資金調達を行っており、調達額は20億元(約360億円)を超える。直近ではシリーズEで12億元(約220億円)を調達しており、「雲峰基金(YF Capital)」「SBチャイナベンチャーキャピタル」「高瓴資本(ヒルハウス・キャピタル)」、IT大手テンセント(騰訊)などが出資している。

市場シェア1位も赤字拡大が続く

太美医療の事業は臨床研究、ファーマコビジランス(医薬品の安全性情報管理)、医薬品市場マーケティングなどの分野をカバーしている。プロダクトとサービスは医薬品開発協力プラットフォーム、デジタル化ソリューション、臨床運営サービスの三大カテゴリに分けられる。

太美医療は2019年に同社のSaaSプロダクトの統合プラットフォームである「TrialOS医薬品開発協力プラットフォーム」を開発。主に製薬企業や病院のような臨床研究機関を対象としており、これら業界の従事者は同プラットフォームと関連SaaSプロダクトを通し、オンラインで協業して医薬品の開発ができる。

デジタル化ソリューションに関して見ると、太美医療はプロジェクト管理、ドキュメント管理、ファーマコビジランス、臨床データ管理、投薬、画像診断など複数のシーンに利用できる数十種類のSaaSプロダクトを独自開発。さらに異なるプロダクト間でデータの相互連携を実現している。

臨床研究及びファーマコビジランス分野における主要SaaSプロダクトの連携イメージ図 出典:目論見書

臨床運営サービスではフェーズ1~4の臨床試験及び生物学的同等性試験などに向けたサービスを提供しており、関連チームが臨床研究の全体的な管理作業を主導している。

IT専門調査会社IDCによると、中国の生命科学研究開発に関する情報システムソリューションを手掛ける企業のうち、2019年には上位5位までの企業で市場シェアの37.7%を占めていたという。そのうち太美医療は14.5%で市場シェア1位だ。

しかし、太美医療はまだ赤字状態にある。2018年から20年にかけて同社の売上高は5997万元(約10億8000万円)から3億300万元(約55億円)に伸びたが、同時に純損失も1億8300万元(約33億円)から5億2400万元(約94億円)に拡大している。21年は上半期だけで1億5800万元(約28億円)の純損失を出した。18年から20年にかけて研究開発費は4053万元(約7億3000万円)から1億900万元(約20億円)に増加したが、売上高研究開発費比率は68%から36%へと縮小した。

企業向け医薬SaaSを手掛ける企業は太美医療以外にも「医百科技(Yibai Technology)」「医渡雲(YIDUCLOUD)」がある。そのほか画像診断やデジタル化ソリューションの分野には「衛寧健康(Winning Health Technology)」「東軟医療(Neusoft Medical)」中国EC大手「京東集団(JD.com)」傘下の「京東健康(JD Health)」などがひしめいており、競争は激しい。

太美医療は昨年6月末時点で、すでに国内外で約1000社の医薬品企業や医薬品開発業務受託機関(CRO)と事業を展開しており、360を超える病院や臨床研究機関にデジタル化ソリューションを提供している。しかし、この数字は全国的に見れば決して多いものではない。医療業界の各分野でプロダクトの差別化に対するニーズが増えるにつれ、太美医療のSaaSプロダクトには今後さらに高いレベルが要求されるだろう。
(翻訳・山口幸子)

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