不振のアップル、iPhoneの次は?

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1月3日(米現地時間)、アップルの株価が10%近く下落し、時価総額6747億ドル(約73兆円)となった。マイクロソフト、アマゾン、アルファベットに続く時価総額4位へ後退したアップルだが、わずか3カ月前には時価総額1兆ドル(約108兆円)超えを達成した初のテック企業となったばかりだ。

株価下落の引き金になったのは、ティム・クックCEOが投資家に宛てた書簡だ。この書簡で、クックCEOはiPhone発売以来初めて業績予想を下方修正した。2019年第1四半期、当初は890億~930億ドル(約9兆6400億~10兆円)としていた売上高予測は、840億ドル(約9兆1000億円)に引き下げられた。

スティーブ・ジョブズ前CEOが同社を率いていた20年前、MacBookの発売によって起死回生を図ったアップルは、iPodの発表によって単なるパソコンメーカーの地位を脱した。さらにiPhoneの登場が、同社を世界最大の企業の一つに押し上げた。

世界を変革するプロダクトを生み出す企業として歩みを進めてきたアップルだが、ここに来て袋小路に入ってしまうのだろうか。

ついにネタ切れか

先に挙げたとおり、アップルはマイクロソフト、アマゾン、アルファベットなどの米大手テック企業と並べて語られることが多いが、その事業モデルは他3社とはかなり異なる。アルファベットやアマゾンはGoogle+やFire Phoneが失敗に終わっても、これらは開発コストも限界費用も高くないため、大きな打撃にはならない。

しかし、アップルは毎年恒例の新製品発表会で、競合他社の製品を超える優れたプロダクトを確実に世に出さなければならない。また、高額な価格に見合うクオリティを見せつけなければならない。そして、こうした結果を出して当然だと思われている。技術の限界が訪れたとき、アップルの価値は大幅に下落する。

2014年に発表されたウェアラブル端末Apple Watchは、アップルが高級品市場に打って出るためのプロダクトだったはずだか、初年度にして惨たんたる結果に終わった。その後、やむなくiPhoneの付属品という位置付けに仕切り直した。

2018年に発表されたスマートスピーカーHome Podは、アマゾンのechoやグーグルのGoogle Homeと比較するとAI技術で見劣りする。また、すでに発表されていたSiriと比較しても、特に目新しさを見出せなかった。Home Podもまた、iPhoneなしでは機能しない付属品的役割を脱することはできなかった。また、現在開発中の自動運転車に関しては、進捗状況は霧の中だ。

毎年のように世界を驚かせてくれていたアップルの技術力、市場洞察力は一朝一夕に成り立つものではない。iPhone Xなどは4年をかけて開発されたプロダクトだ。しかし、2018年の新製品にはこうした驚きに値する機能は見られなかった。ビジネス戦略の一環というより、実際にアップルの技術力が尽きてしまったからなのではないだろうか。

値上げの効果は一時的

2017年、前機種よりも大幅に値上げして発売されたiPhone X。これを受け、2018会計年度はアップルにとって最も輝かしい1年となった。

しかし、値上げ戦略の効果は長くは続かなかった。2018年に発表されたiPhone XS Maxでは、1099ドル(約12万円)という価格に多くのユーザーが「NO」を突きつけた。アメリカ本国はまだしも、ドル高の影響を受けた新興国での値上げ幅は相当に大きいものとなった。

機能面でも革新性に欠け、購買意欲を掻き立てるには力及ばずといった印象だ。

やむなくして日本、アメリカ、中国などの主要市場で値下げに踏み切ったアップルだが、これは悪循環のはじまりになる。「発売後、一定期間待てば値下げがある」という印象をユーザーに植え付けてしまうからだ。販売店にとっては在庫の負担が増え、最終的に損失をこうむるのはアップルだ。

中国のニュースポータル「好奇心日報(Qdaily)」によると、2012年時点では、アップル製品は生産後平均3.26日で販売店へ出荷されていたが、2018年にはこれが約3倍の9.82日に延びている。

アップルの衰退は業界全体の衰退

アップルはハードウェア企業であり、IT企業ではない。一つのプロダクトの背後には、数百社に及ぶサプライヤーが控えている。原材料、部品、アセンブリー、輸送、販売など多数の業者が絡み合い、最も複雑な経済活動を行っているのだ。

アップルの不振は、彼ら全体の不振にもつながる。そうなれば、アップルが提示する苛酷な要求に耐えられず、離脱するサプライヤーも出てくるだろう。アップルの衰退は、製造業やモバイルインターネット市場全体の衰退をも意味してくる。

単なる通信ツールを生活必需品にまで押し上げたアップルの功績があってこそ、多くのイノベーションが後に続いた。Uberにしろ、Airbnbにしろ、微信(WeChat)にしろ、いずれもアップルが耕した土壌で成長したビジネスだ。

イノベーションは、テクノロジー業界の命だ。しかし近年、アップルに続いて根本的なイノベーションを起こせる企業は誕生しているだろうか? AR(拡張現実)、VR、人工知能、自動運転が革新的技術に相当するだろうか?

それでもアップルに期待

中国など新興国での不振がなければ、アップルもこれほどまで追い詰められなかったかもしれない。

その一方で、アップルの座を脅かす競合メーカーがいまだ現われていないのも事実だ。ファーウェイの販売台数がアップルを超える日が来ても、アップルの市場での地位は揺らぐことはなかった。

「アップルの最大の敵はアップル自身だ」。言い古された言葉だが、こう言うしかない。

中国市場における各メーカーのスマホ出荷量(IT専門調査会社IDC)

アップルは新境地開拓に必死だ。開発予算は2014年の倍以上に増加している。ウェアラブル端末の売上高も伸びてきている。

事態打開のカギは、イノベーティブな新製品を生み出すことだろう。iPhoneの販売戦略という小手先のものではなく、iPhoneの存在感を超えるような新製品の登場が待たれる。
(翻訳・愛玉)

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