3Dプリンター製ロケット、コスト大幅削減 格安の宇宙輸送サービス目指す

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3Dプリンター製ロケット、コスト大幅削減 格安の宇宙輸送サービス目指す

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宇宙産業の発展にとってコストと効率は長年の課題だ。商用宇宙産業の意義は、安全で超低コストなロケットをいち早く市場に提供し、多くの団体や個人が宇宙輸送サービスを利用できるようにすることにある。コストを下げる一つの鍵が3Dプリント技術だ。

現在「SpaceX」を筆頭に米「Rocket Lab」「Relativity Space」、英「Skyrora」「Orbex」などの企業がロケット製造に3Dプリント技術を活用する取り組みを進めており、業界で広く注目を集めている。中国企業「太瀚航天(SPACETAI)」も、商用宇宙事業で活用できる3Dプリント技術の推進に注力する。

3Dプリントで製造したエンジン

太瀚航天は昨年3月に設立され、ロケットに使われる90%以上の部品を自社工場の3Dプリンターで原材料からダイレクトに製造し、製造コストを最大限に圧縮している。新技術と垂直統合型のビジネスモデルによって、購買コストを業界平均の5分の1以内に収めることを目標とする。

ロケット開発企業にとってコア技術となるのはエンジンだ。

太瀚航天は液化酸素とケロシン系燃料を推進剤とするロケットエンジン「小蟻」を開発中だ。二段燃焼サイクル技術を用いてエンジン性能を向上させ、先進的な構造と、商用宇宙分野で一般的に用いられるガス発生器サイクル技術よりも高い性能指標によって、国家プロジェクトの主力ロケットと同等のエンジン性能を実現している。初代モデルは海面高度での推力が20トンで、続く2代目モデルは30トンとなる予定だ。小蟻より高推力のエンジン「巨蟻」は次世代モデルで海面高度での推力200トンを目指している。

小蟻の全部品は3Dプリンターで製造されたもので、30日で1台のペースで製造できるため、開発やテストにかかる期間が大幅に短縮できる。従来の技術で製造したエンジンよりもずっと少ない部品数で構成されるため組み立ても簡単で、構造の修正も容易だ。

自社で開発した3Dプリンター

ロケットエンジンを製造するための3Dプリンターには特殊な条件が求められる。太瀚航天は自社専用の金属3Dプリンター「星辰(S480)」を設計・製造し、付属のソフトウェアや製造工程も開発した。現在、西安市に設けた製造ラインで3Dプリンターのデバッグ(不具合修正)を行っている。さらにロケットの機体を製造する3Dプリンター「星空(W450)」も開発中だ。こちらも自社開発のソフトウェア、製造工程、特殊合金を用いており、機体はロケット打ち上げに求められる条件をクリアしている。上海工場では機体製造ラインを建設中で、星空を使えば3カ月で機体が完成する。

金属3Dプリントサービスのオンラインモールも構築中で、価格を透明化して手の届きやすい設定にし、さまざまな業界に3Dプリント技術を使ってもらえるようにする。将来、人類が月や火星に基地を建設するときには3Dプリント技術がツールとして活躍するかもしれない。

3Dプリント技術と垂直統合型のビジネスモデルを採用することで、ロケット製造コストは大幅に減らせる。太瀚航天はロケット事業や3Dプリント事業の研究開発や工場建設にかかる先行投資を総額約6億元(約108億円)と見積もっており、2024年には同社製ロケットの軌道投入を成功させる計画だ。また3Dプリント事業はこれに先んじて2023年から売り上げが立つ予定だ。

将来的には宇宙旅行、月・火星基地などを視野に

太瀚航天の初のロケット「飛天」は第1段ロケットに独自開発のエンジン小蟻を9基、第2段ロケットに大気圏外用の小蟻1基を搭載する。発射時の推力は270トンで、積載重量はLEO(地球低軌道)で4トン。飛天の購買コストは数千万元(数億円)規模に抑えられる予定で、再利用技術と組み合わせれば打ち上げごとにかかるコストはさらに減らせる。

ロケットを軌道に乗せる能力を手に入れることは、同社の後続プロジェクトを成功させるためのファーストステップだ。技術を革新して主要機器を開発し、ロケット産業全体(設計・製造・テスト・打ち上げ)に関わる自動製造ラインを独自に構築してコストを大幅に減らし、サイクルタイムも大きく短縮する。また、スピーディーな反復型開発を重視し、計画的なテストと試行錯誤を重ねて開発サイクルや性能、安全性を最大限に最適化していく。液体燃料ロケットで最高のコストパフォーマンスを実現する輸送サービスを目指す。

将来的にはより推力の大きいエンジンとより積載能力の高いロケットを開発し、輸送ロケットや有人ロケットを製造する計画だ。宇宙ステーションや宇宙旅行、宇宙ホテル、燃料補給スタンド、月・火星基地の建設に関わる輸送サービスを展開し、安定的で安全、手頃な価格の宇宙輸送サービスを提供していく。2023年には準軌道でのテスト飛行が可能なロケットとエンジンを完成させる予定だ。
(翻訳・山下にか)

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