WeChatの真実 張小龍氏が目指す希望とは

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リリースから8年となる微信(WeChat)は、デイリーアクティブユーザー10億人を誇る。WeChatの生みの親でテンセント(騰訊)の高級副総裁である張小龍氏が、WeChatの公開講座で登壇した。

WeChatに不安はない

最近のWeChatバージョン7.0にはかなりの変更があった。張小龍氏は「最新バージョンにユーザーが慣れるまでには時間がかかる」としつつも、全面的なリニューアルについては非常にアグレッシブな姿勢を見せている。「ユーザーの苦情を恐れて現状を維持するのではなく、時代に製品を適応させていくことが重要だ」という。

この一年間、「モーメンツを閲覧するのが嫌になってきた」、「WeChatの使用時間が減ってきた」などの声が増え、ユーザーのWeChat離れが囁かれるようになった。背景には、TikTokなどの短編動画アプリが急速に台頭して、ユーザーの注目が分散されてきたこともある。

しかし、張小龍氏によればWeChatに不安はないという。「1つ1つのバージョンアップで、忍耐強く『WeChatのズレ』を修正していく」。彼は、3時間のスピーチの中で、「ゆっくり」と「忍耐」という表現を何度も使った。

「ライバルは私たち自身だ。私たちの組織の力が時代の変化についていけるかどうかだ」と張氏は言う。彼は「モバイルインターネットが出現してから、3年から5年が一時代の括りになった」と考える。時代の流れは速くなり、ユーザーのニーズも急速に変化する。将来のニーズを見つけてそれに向き合うことこそ、WeChatがやらなければならないことなのだ。

ユーザー滞在時間もユーザー数増加も追求しない

「この2年間、可能な限りユーザーの滞在時間を長くすることが業界の目標になっていたが、それは私の常識に反する」と張氏は述べた。インターネット業界の使命は「人々を四六時中スマホに向かわせることではなく、効率を向上させることだ」という。

効率性こそ、WeChatがあらゆる手段で達成しようとする目標だ。たとえば、ある人にメッセージを送りたいのに、その人の名前を思い出せない時。WeChatはスマートな関連付け機能を提供してくれる。それがWeChatの重視する機能だ。

WeChatは現在最大のユーザー数とデイリーアクティブユーザー、月間アクティブユーザーを誇る製品だが、張小龍氏は「WeChatの目標はユーザー数を増やすことではなく、またユーザー数を増やす意図で何かをしたことはない」と言う。

ミニプログラムはトラフィックビジネスではなく、ミニゲームは金儲けの手段ではない

ミニプログラムの起業家はWeChatのトラフィックをより効率的に利用する方法にばかり注目するが、そのようなビジネスに対して張小龍氏は否定的だ。

「WeChatは一つのエコシステムであり、我々は十分な忍耐力を持ってゆっくりと育てていく」という。入り口をオープンにした意図は、開発者向けではなく、「ユーザーが欲しいミニプログラムを見つけやすくするため」だと続ける。

また、ミニゲームはリリースから1年経って業績は上々だ。ミニゲームはWeChatの金のなる木と評する声には、張氏は満足していない。

「ミニゲームは会社の収益チャネルではなく、創造性のためのプラットフォームだ。現状では、本当に高品質なオリジナルゲームはそれほど多くない。ほとんどのゲームは互いに真似し合っている」と嘆く。

1年後に売り上げが増えているだけではなく、特にこれまでゲームをしたことのない人々によって作られた創意工夫に富んだゲームが増えることを張氏は期待している。 それがミニゲームの成功なのだという。

動画投稿機能は他社への対抗ではない

WeChatの主要機能であるモーメンツの利用が減少していると言われる中、張氏はいくつかの驚くべき数字を発表した。「毎日7億5千万人がモーメンツを閲覧し、1人平均10回以上見ている」というのだ。さらに「毎日のモーメンツの総閲覧数は100億回に達する」とのことだ。

張氏はモーメンツを「広場」に例える。 モーメンツに投稿すれば自分の友達すべてに見てもらえるので、効率的に交流することができる。しかし、「いいね」をしたりコメントをつけたりすることは、公衆の場で大声で発言するようなもので比較的プレッシャーが大きい。

WeChatはユーザーが自分自身を表現するための新しい方法を探している。最近リリースされた「視頻動態(タイムカプセル)」(前バージョンでは「時刻視頻」)は、モーメンツ以外のソーシャル機能だ。

WeChatがタイムカプセル機能をリリースしたのは、TikTokなど短編動画アプリに対抗するためだと見られているが、張小龍氏は「ビデオは、単に、よりリラックスした方法で交流してもらうためのものだ」と否定している。タイムカプセルはモーメンツとは違い、「完璧」よりも「リアル」をテーマにしたものだという。

ユーザーがビデオを撮るとき、WeChat上の完了ボタンには「就這様(こんな感じ)」という文字が表示される。「見栄えはよくないかもしれないけど、まあこんな感じで」ということだ。撮影者が見ている世界をユーザーもリアルに見ている感覚を重視しているのだという。

張氏は「画像による交流は、将来、間違いなくビデオに取って代わられる」と考えている。動画には写真よりもはるかに多くの情報が含まれるためだ。

12月の社内会議で、張氏はジェフ・ベゾス氏の有名な「善良であることは聡明であることより重要だ」という言葉を引用した。これは張氏が従業員に求めていることでもある。それから1ヵ月後の公開講座は、張氏の「世界中のあらゆるものの中で、希望が最も美しい」という言葉で幕を閉じた。
(翻訳・神江乃緒)

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