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電動アシスト自転車(eバイク)ブランド「Urtopia」はこのほど、プレシリーズAで約1000万ドル(約11億4500万円)を調達した。中国ベンチャーキャピタル(VC)「光速中国創業投資基金(ライトスピード・チャイナ・パートナーズ)」と米VC「DCMベンチャーズ」が主導した。調達した資金は、新市場の開拓や技術の研究開発、人材獲得などに充てる。同ブランドの輸出入・販売などを手掛ける深圳哲輪科技が明らかにした。
深圳哲輪は2021年、「New Urtopia Holdings HK」(本社・香港)の全額出資子会社として設立。「Inspire Passion, Active Life(情熱を触発し、活気に満ちた生活を)」をミッション(使命)に掲げ、本体から各種パーツを含む独自の製品を生み出してきた。消費者に直接販売するDTC(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)と法人向けのBtoBを組み合わせた販促モデルを通じ、主に欧米のユーザー向けに直販している。中国本土にサプライヤーを抱え、独自のサプライチェーンを構築しているのが強みだ。北米と欧州に倉庫とサポートセンターを持つ。
今回の資金調達ラウンドに先立ち、21年に海外のクラウドファンディング(CF)を通じて、1台当たり平均2500ドル(約28万9000円)で予約販売を行った。初回のCFで合計300万ドル(約3億4700万円)が集まり、eバイク関連として同年の世界最高額に達した。反響の大きさが示された形といえる。
低炭素化社会への移行が追い風
低炭素な生活様式がますます世界の主流となりつつある中、eバイクは今、最も流行している次世代の交通手段の一つだ。電動アシスト機能により中長距離走行の需要に対応できるだけでなく、通勤にもスポーツシーンにも使えるなど従来型自転車に比べて用途が広いのが、ファンが急増している理由だ。
世界各国が取り組む、温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」政策も追い風となっている。審議が宙に浮いているが、バイデン米政権は大型歳出法案「ビルド・バック・ベター(より良き再建)」の中で、一定金額のeバイク購入者対し、最大900ドル(約10万4000円)分を控除する方針を示している。中国当局は、電動自転車の標準化や軽量化、スマート化に向けた産業の育成を急ぐ。
実際、過去3年のeバイク産業は成長が著しい。20年のeバイクの世界市場規模は250億ドル(約2兆9000億円)を超えた。背景には低炭素社会への移行と世界的な新型コロナウイルスの感染拡大がある。
需要の取り込みを目指し、各社の競争も徐々に激しくなっている。一方で、課題が顕在化し始めているようだ。深圳哲輪の張波・最高経営責任者(CEO)は「足元で世界市場の製品の同質化が激しい」とした上で、「イノベーション力が不足している。ユーザーの個性やニーズに合わせた製品づくりをしていく必要がある」と指摘する。
軽量化・技術力を強みに
深圳哲輪では、軽量化、スマート化、テクノロジーを軸に、競合他社との差別化を進めたい考えだ。
同社が提供している製品で目を引くのは流線形のその外観。フレームは独自動車大手BMWなどの外形デザインに携わったマティス・ヒラー氏が設計した。メビウスの帯からインスピレーションを得たといい、持続可能な未来を創造するという同社の展望とも一致している。
車体の重量は13.5キログラムと軽量化を実現。フレームだけでなく、ハンドルバー、フォーク、シートポスト(サドル支柱)などの主要部品にカーボンファイバー(炭素繊維)を使ったことが劇的な軽さの秘密だ。動力源は、フレーム内に350ワット時(Wh)のバッテリーを内蔵し、出力250ワット(W)のモーターを搭載。2時間半のフル充電で、航続距離(1回の充電で走行可能な距離)を最長100キロまで延ばした。
「スマートバー」と呼ばれるハンドルバー中央のディスプレーに速度やアシストなどのモード設定が表示され、ハンドル上のボタンで調整できる。盗難防止用にロック解除の指紋認証機能を備えたほか、後方に障害物があれば、危険察知用のミリ波レーダーが捉えて振動で警告してくれる機能も搭載した。後方ライトはウインカー代わりに地面に矢印を照射するプロジェクター付きだ。CO2削減効果の表示なども好みで設定できる。
ソフトウエア面では、制御機能や人工知能(AI)を活用した音声認証機能などの中核技術に加え、インターネットとの常時接続により車体、クラウドシステム、アプリデータが相互に連携するシステムを独自に開発していることも大きな強みだ。
ブランド名は、「Urban(アーバン=都会の、都市の)」 と「Utopia(ユートピア=理想郷)」を合わせた同社の造語。ポストコロナを見据え、eバイクを通じて環境にやさしく、より幸せで健康的な活動に従事できる未来、すなわち「ニュー・アーバン・ユートピア(新しい都市ユートピア)を自分なりに見つけてもらいたい」という思いが込められているという。今後も製品のアップグレードや優秀な人材獲得を継続し、競争力を高めていく方針だ。
(36kr Japan編集部)
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