高タンパク&低糖質な主食を3Dプリンターで フードテックで変わる中国の食習慣

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中国の新興フードテックブランド「MOODLES」がこのほど、プレシリーズAで数千万元(数億円)を調達した。出資は「GGVキャピタル(紀源資本)」が主導し、既存株主の「風物資本(FinWill Capital)」と「人山投資」も参加した。同社は2021年10月のエンジェルラウンドで風物資本と人山投資から約1000万元(約1億8000万円)を調達している。

MOODLESは2021年7月に設立され、3Dプリンティングのほか、調理を科学的に解析する「分子ガストロノミー」や栄養学などさまざまな学問分野の成果を統合し、新たな形の主食類を開発している。同ブランドが追求するのは、健康・効率・おいしさを兼ね備えた日常的な食事の最適解だという。

栄養と味を重視しながらダイエットをしようとする人は、主にダイエット用の宅配食やミールキットなどを選んでいる。しかし、現在のところ大規模展開は難しい。もう一つの選択肢、プロテインバーなどの機能性食品は、健康的かつ効率的だ。しかし、食べる楽しみに欠けるため、三食全てを置き換えるのは難しい。

MOODLESは最適解を探すため、市場調査を重ねた。創業者の朱沛然氏は「ヘルスケアに対するニーズが高まり、消費者の知識も深まっている。10年前に比べ味へのこだわりも強くなり、効率的な食事に対する意識も高まった。これを受ける形で巨大な需要が形成されている」と分析した。

MOODLESが開発する主食類は、時間効率も栄養摂取量も高い食事を可能にする。朱氏は「MOODLESの主食類は、従来の主食類と見た目も食感もそっくりだが、材料が違う。動物性タンパク質や植物性タンパク質、炭水化物、食物繊維、ビタミン、ミネラルなど1日に必要な栄養素を全て入れた材料を作り、3Dプリンターで麺や米飯などに加工すれば、摂取する栄養素の量を最大限に高められる」と説明した。

3Dプリンターで加工した「パスタ」でできた料理(写真は「MOODLES」提供)

食材の新たな形で食品業界の常識を覆すMOODLES。その背景には朱氏の経歴がある。修士課程では生物学と機械工学を融合させた分野を研究し、修了後は整形外科に特化した3Dプリンティング企業で3Dプリンターの開発に従事した。2019年に西湖大学の博士課程に進学し、バイオプリンティングの研究を進めていたが、21年に休学して起業する道を選んだ。

もはや3Dプリンティング技術に目新しさはないが、生活に密着した分野への応用は依然として初期段階にある。朱氏はその原因として、3Dプリンティング向けの材料が限定されている上、複雑な造形に対応するのが難しいこと、そして製品を量産化するには製造効率が低いことを挙げている。

朱氏率いる開発チームは、肉製品専門の技術を持つパートナーとの共同研究の結果、効果的な技術的アプローチを発見した。おおよその流れは、①栄養素の配合に関する指針決定②分子ガストロノミーに基づく食材処理③スラリーレオロジー(糊状の物資の変形・流動に関する学問分野)に基づく特性試験④流体シミュレーション⑤3Dプリンター用ノズルの設計⑥炭水化物の食感再現--となっている。

MOODLESはすでに、市場に出回る大部分の主食類の形状と食感を再現している。しかも、同ブランド製の細麺を例にとると、通常の細麺に比べタンパク質含有量は114.3%増、炭水化物含有量は71.26%減となっており、ダイエットにも最適だ。

MOODLESは現在、ヘルスケアを考える一般消費者とレストランに向けて主食類を提供している。朱氏によると、今後はスーパーマーケットやコンビニエンスストア向けの料理や総菜などを開発する計画だという。

MOODLESの創業チームは、朱氏を筆頭に大学院で専門知識を身につけたメンバーで構成されている。江南大学と健康食品に関する共同研究室を設立したほか、大型実験施設も稼働させている。今回調達した資金は、今年5月に稼働開始が予定されているフレキシブル生産が可能なスマート工場の建設費に充てられる。

(翻訳・田村広子)

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