ビール世界最大手の「ABインベブ」がアジア事業の香港IPOを検討、調達額は5500億円規模か

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中国のセルフメディア「IPO早知道」は2月12日、バドワイザーなど有名ブランドを有するビール世界最大手の「アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)」がアジア事業を切り離し、香港取引所でのIPOを検討していると報じた。すでにJPモルガン・チェースとモルガン・スタンレーに株式公開準備を依頼したという。同社のアジア事業の評価額は最大で700億ドル(約7兆7000億円)とみられる。

ABインベブがアジア事業の香港上場を検討していることは、これまでに複数の海外メディアも報じてきた。米通信社ブルームバーグは1月半ば、調達額が50億ドル(約5500億円)以上になるとの見通しを伝えている。

ABインベブが大規模な資金調達を行う狙いは何か。ロイター通信が関係筋の話として伝えたところによると、重い債務負担を軽減することが主な目的だという。

この「重い債務負担」は、同社が2016年にビール業界世界第2位だった英SABミラーを買収した際に生じた1000億ドル(約11兆円)の負債を指す。同社はこの巨額買収で悪化したキャッシュフローの改善を模索し続けている。これまでにSABミラーの西欧事業と東欧事業を相次いでアサヒビールに売却し、SABミラーが保有する「華潤雪花(China Resources Snow Breweries)」の株式49%も「華潤集団(China Resources Group)」に売却した。さらに、先ごろ155億ドル(約1兆7000億円)の社債を発行したほか、リストラによるコスト削減も行っている。

債務問題に加え、業績も伸び悩んでいる。2018年に米国やブラジルなど同社最大の市場でビール販売が落ち込んだことを受けて、同社は50%減配する方針を発表した。一方、アジアでは中国の2018年上半期の売上高が前年同期比6%近く増加するなど、まずまずの伸びを維持しているが、この地域も今では危機に直面している。

ビール業界全体の生産量と一人当たりのビール販売量がともに減少しているのだ。産業情報サイト「中国産業信息網(www.chyxx.com)」のデータによれば、2014年以降、中国のビール生産量は年々減少し、2017年の中国のビール生産量は前年比0.7%減の4401万5000リットルだった。2018年はさらに減少し、一人当たりのビール販売量の減少傾向も顕著だ。

2011~17年の中国の一人当たりビール販売量の推移(出典:中国産業情報網)

販売量の減少は、ビール消費の中心である18~35歳の若年層の人口比率が低下していることと大きく関係している。中国では高齢化が加速しており、ビールを消費する若者が次第に減少しているのだ。

2011~17年、中国のビール消費の中心を占める若年層の人口比率が低下、2018年以降もさらに低下する見通し(出典:ユーロモニター・インターナショナル)

業界全体で販売が落ち込む中、国内外のビールメーカーが増収増益を果たすために思いついたのが客単価の引き上げと高級化路線だ。クラフトビールはその突破口になった。ABインベブは、若者の比率が高い電子商取引(EC)プラットフォームを通じて、傘下の「拳撃猫(Boxing Cat Brewery)」などクラフトビールブランドの販路確立に乗り出した。また、同社は昨年、「天猫(Tmall)」と、アルコール飲料を新業態で販売するために戦略的パートナーシップを締結した。

中国市場では高級ビール販売量の伸び率がビール業界全体の伸び率を大きく上回る(出典:中国産業信息網)

中国では外食分野で消費のアップグレードが進み、ビールメーカーの高級化路線も肯定的に受け止められている。ABインベブCEOのカルロス・ブリト氏は以前行われたインタビューの中で、同社が中国市場で販売するコロナビールなどの高級商品が直近四半期も2ケタ成長を維持したと明かした。今や高級ビール販売量の伸び率はビール業界全体の伸び率を大きく上回る。ただし、クラフトビールなどの高級ビールは若者にあまり認知されておらず、まだ「目新しさ」が先行しているという点は見過ごせない。クラフトビールが今後も成長を続ける上で、これは障壁になるだろう。

ABインベブにとって、今後重要になるのは急速に成長する高級ビール市場だ。だが、現時点では厳しい債務状況を乗り越えることが急務である以上、アジア事業を切り離して上場させる必要性は非常に高い。
(翻訳・池田晃子)

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