大学入試改革でビジネスチャンス狙う中国の教育情報産業

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

ビジネス注目記事

大学入試改革でビジネスチャンス狙う中国の教育情報産業

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

大学入試改革で生まれた新しい受験産業

2014年に始まった中国の大学入試改革は、これまでで最も大胆な教育改革だと考えられている。選択科目が増えたので、高校では時間割設定、リソース配分、管理や成績評価などをサポートするサードパーティ製の情報システムが必要になった。この需要によって、選択科目設定システムをコアサービスとするSaaS企業が生まれることになった。

一方B2C市場では、個々の状況に応じて選択科目を決定し、学業およびキャリアプランニングを行い、大学出願まで受験生をサポートする支援サービス企業が多数登場した。これらの企業は自己評価システムなどオンラインサービスも提供する。

業界では、入試改革で2018年に市場全体が大きく盛り上がると期待したが、実際にはそうならなかった。各地のリソースには大きな差があり状況もさまざまなので、肝心の入試改革が順調に進んでいないからだ。これまでのところ、実施されたのは北京、天津、山東、浙江、上海、海南の6都市に過ぎず、2019年に他の都市に拡大されるかどうかも未だわかっていない。

だが2014年から現在までの間に、新入試制度をビジネスチャンスと見て参入したB2B、B2C、およびB2B2Cモデルのプレイヤーたちは、すでにそれぞれの分野でシェア獲得を急いでいる。

市場の現状

入試関連業界にはB2B、B2C、およびB2B2Cという異なるプレイヤーが存在する。

B2B企業:選択授業履修計画を支援するSaaSのほか、顔認識による出欠確認、学級掲示板のデジタル化、教師評価システムなど、教育現場に関わる諸業務をサポートするアプリケーションを提供する。これらの利用単価は、選択したサービスの数や内容により、年間2万元(約32万円)から20万元(約320万円)で、SaaSの売上が収益の柱だ。

B2C企業:主なサービスは受験生に対する出願指導だが、同時に高校1・2年生を対象にしたコース選択、キャリアプランニング、科目別学習、出願計画など、受験前サービスも提供する。出願書類のオンライン評価とマンツーマンの個別出願指導の客単価は、前者が1セッション約300元(約4800円)、後者は年1~2万元(約16万~32万円)だ。

B2B2C企業:学校向けに選択科目スケジューリングシステムを販売し、さらに受験生向けに学習計画および出願支援サービスも提供する。学校が個人顧客獲得の場となるので、顧客獲得コストを抑えることができる。

教育情報化2.0の時代

学校向け情報システムが開発された「教育IT化1.0」の時代を経て、現在はSaaSを中心とした「教育IT化2.0」の時代に入っている。学校情報システムの基礎が完成して、「阿里雲(Alibaba Cloud)」や「騰訊雲(Tencent Cloud)」などが学校で使われるようになっている。教師のIT化に対する理解や技能も向上して、優れた商品が学校に採用されつつある。

教育IT化2.0の時代に入り、さらに入試改革という政策の後押しがある今は、学校教育関連産業はめったにないチャンスだ。エデュテック企業だけでなく、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)や移動体通信事業者などの大企業もこの市場を狙っている。

学校向けSaaSは非常に大きなシステムになるが、現在のエデュテック企業は選択授業の履修支援や学級掲示板のデジタル化など個別の利用シーンにしか対応できていない。基盤システムの構築は、巨額の資金が必要なことと基礎データのセンシビリティなどから、超大企業でなければ任せられないと政府は考えている。そこでアリババは、決済関連の基礎プラットフォーム、顔認証での書籍貸し出し、食事の注文、科目選択などのデータを収集して、学校向けの基盤OAシステムを構築しようとしている。

将来の受験産業の発展方向

昨年まで新受験制度の実施は予想ほど順調ではなく、多くの地域で実現していない。B2B、B2C、B2B2Cのいずれにおいても、やや先んじている企業はあるものの、現在は各地域に分散しており、市場にはまだ絶対的なトップ企業は出現していない。しかし、2020年末までに市場は再編期に入り、5社程度のトップ企業が全国の学校の70%以上を握ることになるだろう。ただし、業界内では、1社が全国を制覇する状況にはならないという見方が強い。教育は元々半ば閉じられた市場であり、営業活動には各校とのコネクション構築が一定程度必要だ。各社の製品に明らかな差がない状況では、各社ともそれぞれのテリトリー内に留まっていた方が安全だからだ。

したがって、エデュテック分野のB2B企業は、いち早くより多くの学校、特に各地域の「ベンチマーク校(教育部が教育IT化のモデルとして指定する学校)」を顧客として獲得すべきだ。 そして、SaaSは顧客のリピート率と限界費用の低減が重要なので、商品の品質向上に努めてリピート率の高い商品体系を作り上げる必要がある。

一方、出願指導サービスがメインのB2C企業は、カウンセリングの標準化ときめ細かなサービスの向上、オンラインとオフラインを繋いだ個々に見合った進学支援サービスの確立が必要だ。また、学校とさらに連携して、進学計画プラットフォームを提供することも考えられる。

B2B企業は学校との関係をバックに基礎データを蓄積する一方、B2C企業はターゲット顧客により近いので、ユーザーに親しまれて口コミを得ることができる。将来は、B2B側で顧客を集め、B2Cのプロによってコンサルティングを提供するといった形で、B2BとB2Cの提携や合併などが起こる可能性がある。
(翻訳・神江乃緒)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録