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中国のスマートフォン四大大手ファーウェイ(華為科技)、シャオミ(Xiaomi)、OPPO、vivoは今後数十年続くと思われる新たな戦いを開始した。彼らが競うのは「メタバース時代」にアクセスする次世代デバイスだ。
4社はモバイルインターネット時代の波に乗り、スマートフォン事業で巨大な収益を上げた。そのスマートフォン市場が減速する現在、各社はどのように成長曲線を維持していくのか。IoT、クラウドサービス、スマートカーに並び、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)用ヘッドセットが新たなターゲットになっている。モバイルインターネット時代に情報の媒体として重要だったのはスマートフォンだったが、次の時代はVR・ARデバイスがスマートフォンに置き替わる可能性がある。
仮にVR・ARグラスであらゆるデータを処理し、電話を受けるようになるとしたら、その将来の市場は現在のスマートフォンと同様に有望なものになるだろう。
ファーウェイ、シャオミ、OPPO、vivoの4社は過去3カ月の間にメタバースに関連する特許を13件も取得している。出願時期が最も早かったものは2016年にまで遡る。
IT市場調査会社IDCのレポートによると、21年のVR・ARデバイスの出荷台数は世界で1123万台となり、前年から92.1%伸びている。出荷台数が急速に伸び、市場規模も拡大を続けているということだ。
モバイルインターネットにアクセスするツールを占有したトッププレーヤーたちは、すでに数多くユーザーを擁しているのが強みだ。ファーウェイ、シャオミ、OPPO、vivoの4社は次世代インターネットに対してどのような考えを持ち、次のチャンスをどのように掴むだろうか。
ここでは4社が取得したVR・AR関係の特許や投資状況を整理しておく。出発点のわずかな違いが10年後、完全に別々の方向へ道分かれし、まったく異なるエコシステムを形成していくかもしれない。
特許から見る各社の取り組み
今年に入ってから、4社が手がけるVR・AR関連の新製品についてはほとんど情報が聞かれないが、関連特許についてはひっきりなしにニュースが流れてくる。
中国のテックメディア「智東西(Zhidongxi)」のおおまかな統計によると、4社は今年に入ってからだけでもVR・ARの基礎技術、意匠、光学表示装置などに関する関連特許を13件も取得している。これらからは各社がVR・AR分野で良策を温めていることがうかがえる。
ファーウェイは3月末にVR向けの弾幕(字幕が流れるように表示される)システムを発表した。特許文書によると、同システムはVR動画の再生時に弾幕用の透明なレイヤーを設定し、テキストが空中を流れるように表示されるようになっている。この技術で字幕表示はデバイスの縛りから開放されるだけでなく、動画の表示エリアよりもさらに大きな範囲で表示できるようになるという。
シャオミはARガイドシステムを発表した。ショッピングの際、スマートフォンにほしい商品を入力するとガイドが探してくれるもので、目的の商品が商品棚の何段目にあるかまでを正確に教えてくれる。
OPPOは眼底カメラの設計などさらに革新的な取り組みに努めた。眼底カメラは網膜を検査する医療機器で、網膜剥離や眼腫瘍、白内障、出血の有無などを調べられる。特許文書によると、眼底カメラは製造費用が高いため、ユーザーがリアルタイムで検査を継続するのは不可能だが、モジュールを簡略化することでスマートグラスの健康管理機能として搭載できる可能性がある。
スマートフォンメーカー各社はVR・AR事業に関して、ユーザーに最も直接的に関わり、ユーザーにとって最も実用的な性能の開発を目指して現実的なシナリオを描いている様子がわかる。
投資にも意欲的なシャオミ&OPPO
4社のうちシャオミとOPPOの2社は川上のスタートアップ企業にも積極的に投資している。
シャオミは主に光学表示技術や装置をターゲットとしている。今年1月初めには「思坦科技(Sitan Technology)」に投資。同社は18年10月に設立され、主にマイクロLEDの技術開発・生産・販売を手がける。同社のマイクロLEDチップはすでに中間製品試験に入っており、23年ごろに中〜小サイズの量産を開始する計画だ。
思坦科技に投資した2カ月後、シャオミはAR向け光学モジュールを開発する「至格科技(Greater)」にも投資している 。清華大学精密機器・機械学科から誕生したハイテク企業で、過去にはOPPOから戦略投資を受けている。OPPOがこのほど発表したスマートグラス「OPPO Air Glass」は同社の回折光学ウェーブガイド式レンズを採用したものだ。
至格科技はこの回折光学ウェーブガイド式レンズによってシャオミ、OPPO双方のサプライヤーの仲間入りに成功するかもしれない。
OPPOはOPPO Air Glassを発表してからメタバース関連の展開を速めている。
2月にはエンジェルラウンドに続くシリーズAで「宸境科技(Deep Mirror)」に出資。同社は空間智能(Spatial Intelligence)技術に特化し、メタバースのインフラ構築に取り組む。VR・ARにも応用できるマシンビジョン用センサーチップを主に開発する「鋭思智芯(Alpsen Tek)」も、OPPOと共に同社に投資している。
ファーウェイとvivoは投資に関しては慎重だ。さまざまな公開情報をみても、ファーウェイが今年に入ってメタバース関連の企業に投資したという情報はない。
次世代インターネットへの考えは三者三様
ファーウェイ、シャオミ、OPPO、vivoのいずれもがこれまでにVR・AR関連の製品をリリースしているが、次世代インターネットに対する考え方はそれぞれ異なるようだ。
1.ファーウェイ:次世代インターネットは「ホログラフィー」
ファーウェイは次世代インターネットの方向性を「ホログラフィー・インターネット」と定める。 ファーウェイの副総裁でチーフサイエンティストの羅巍氏は、中国工業情報化部などが主催する「2021世界VR産業大会(World Conference on VR Industry)」で「ファーウェイは長年にわたる情報技術の研究を土台として、次のステップを『ホログラフィー』と定義する。次世代インターネットは『ホログラフィー・インターネット』になると考えているからだ」と述べ、次世代のインターネットは少なくとも音声を含めた3Dデータで表現されるものになるとの考えを示した。技術的に条件が揃えば嗅覚や触覚での表現も可能になるかもしれないとしている。
実際、ファーウェイは18年には次世代インターネットへの転換プロジェクトを開始しており、「河図(Cyberverse、サイバーバース)」プロジェクトと命名している。中国文明の最も古い起源を示す二つのシンボル「河図(かと)」「洛書(らくしょ)」に由来する名称で、宇宙を読み解く暗号を示しているという。
ファーウェイはこの河図を土台にARアプリ「星光巨塔」も発表している。さまざまな遊び方があり、利用者はインターフェイスを介してさまざなま情報を閲覧できる。同社はこれまでに5Gやクラウドサービスに関するノウハウ、独自OS「Harmony(鴻蒙)」に関連するエコシステムを少しずつ積み上げてきており、次世代に向けた基礎固めは終わっている。
2.シャオミ:loTエコシステムの土台づくりで磨いた技術力
シャオミは中国のスマートフォンメーカーとして最も早くVRに着手した企業の1社だ。しかし次世代インターネットへの転換戦略に関してはまだ明確な計画を表に出していない。投資案件や特許出願状況から関連分野の展開を進めていることがうかがえるにとどまる。
メタバースに関しては、同社のスポースクスマンは「メタバースはデジタル経済の改革やインダストリアルチェーンの拡張という新境地をもたらす可能性がある」と述べている。
メタ(前フェイスブック)のザッカーバーグCEOがインターネットの未来像として「メタバース」を提唱し、ファーウェイが「ホログラフィー・インターネット」を打ち出したが、これらはいずれも「何か」と接続する必要がある。シャオミが展開するloTエコシステムが次世代インターネットで核心的な強みの一つとなる可能性があるのはこの点が理由だ。
3.OPPO:コンテンツ、人材の二刀流を駆使し「メタバース」で先行
OPPOのVR・AR事業はハイペースで開発、生産を進めてきた。1年1製品のペースでデバイスを発表し、常に新しく最良の製品形態を追究してきた。
OPPOの創業者でCEOの陳明永氏は最新の技術や製品を紹介する「OPPO INNO DAY 2021(未来科技大会)」で、同社が技術的優位を築くために向こう3年間で500億元(約9900億円)を開発費として投入し、5G、6G、AI、AR、ビッグデータなどの分野を重点的に開発していくと述べた。
さらに今年4⽉、OPPOは「OPPO AR開発者共創計画」を正式稼働させた。国内で優秀なAR開発人材を発掘し、同社のAR製品のポテンシャルをさらに引き出させ、ARコンテンツのエコシステムを成長させることが目的だ。
loT分野ではタイミングをやや逸したOPPOだが、VR・AR分野ではデバイス開発、人材育成、コンテンツエコシステムなどで多くのスマートフォンメーカーよりも先行している。
4.vivo:遠い未来のAR商業化に向け破格ギャラで人材募集
他3社に比べるとvivoの動きは技術の蓄積、製品のアップデート、投資のいずれもやや保守的だ。これは同社のメタバースに対する見方と関係があるかもしれない。昨年12月、vivoの副総裁でAIグローバル研究院院長の周囲氏は、メタバースがまだ黎明期にあり、一部のARデバイスが実用化・高精度化するには数年かかると指摘。ARの商用化のプロセスは特別順調とは言えず、コンテンツやサービスが追いついていないとも述べ、「それでも我々も多くの事前準備はしておける」と発言した。
vivoは最近になって100万元(約2000万円)クラスの年俸でXR(エクステンデッド・リアリティ)用チップ設計者の募集を始めた。XR・AR分野を仕切り直し、メタバース事業に着手するのかもしれない。
作者:WeChat公式アカウント「智東西(zhidxcom)」、執筆:徐珊、編集:雲鵬
(翻訳・山下にか)
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