「世界初12K パノラマVRカメラ」や「メタバース向け」など。注目の全方位カメラのこれまでとこれから

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これまでThetaやGoProをはじめ、様々な360度全角度が撮影できるパノラマカメラが出てきた。手にもって撮るだけでお手軽に全方位撮れるとあって、購入者は少なくはなく、買ったことがなくとも他の人が撮影した画像を1度は見たことがあるのではないだろうか。

このパノラマカメラの活用事例では何が出てきているのか。調べてみると、新型コロナウイルス感染拡大での在宅チェックのニーズを背景とした、不動産内見サービスが目立つ。中国の大手不動産情報サービス「貝殻找房」の3D内見サービス「如視(REALSEE)」が有名どころで、日本にも進出し導入されている。これは一般的なパノラマカメラ1台を用意し、専用アプリから撮影するだけで、2Dのパノラマ画像に3Dの「奥行き」を与え、画像の遠近感や方向を検知して隣接する画像を自動でつなぎ合わせて3D化することを実現した。

不動産に近いところでは、家具を仮想の部屋内に配置するというサービスがある。シンガポールのCOOL 720によるサービスでは、部屋を模したバーチャル空間自体を広告空間とし、気になった各家具や内装をチェックすると、その商品の購入ページに飛ぶというサービスを提供している。また中国各地や世界でオンラインで館内を歩ける博物館が続々と登場している。こちらも気になった作品を見るとその詳細が表示されるわけで発想は近い。

また実質的に外出が制限されている中国では、観光地をパノラマカメラで撮影した画像でバーチャル旅行を楽しんでもらおうという動きが出た。変わったところでは、中国海南省などの病院において、新生児室に設置されたパノラマカメラのライブ映像をタブレットやVRで親族が見ることができるというサービスも。

個人用パノラマカメラとは別に業務用のパノラマカメラもある。コロナ感染拡大の影響でオンライン会議の需要が高まり、会議室と別の会議室とでリモート会議を行う際に活躍する業務用のパノラマカメラが続々と登場している。会議室のテーブルの中央に置き、会議室全体の様子をリモート会議の相手に見せるというものだ。

36kr Japanでは、「グッドデザインなど世界の各賞を受賞した会議向け360度カメラ『Kandao Meeting Pro』を試す」でも紹介された「Kandao(深圳看到科技)社」の製品がある。これについてのレビューが該当記事で詳しく書いてあるが、実際使ってみたところでは映像が非常に綺麗で、USBカメラとしてだけでなくAndroid搭載でスタンドアロンで稼働する。その映像は繋いですぐわかるほど美しく、囲む人々を把握し、話者にフォーカスする便利なシステムを備えることから性能面ではCESでBest of Innovation Awardsを受賞。

グッドデザインなど世界の各賞を受賞、「Kandao」の会議向け360度カメラ「Kandao Meeting Pro」を試す

そのKandaoは、「Obsidian」というシリーズの製品をリリースしている。こちらはVRで360度撮影ができるパノラマカメラで、当時としては世界初となる8K/12K(Proモデル)のパノラマ画像を3Dで撮影し、ライブストリーミングで配信できるという高性能なプロフェッショナル向け製品だ。パノラマカメラとVRカメラの違いはVRコンテンツとして見る場合の立体感の有無である。

この豪華な性能のカメラを活用したソリューションだが、当時は中国で新しい技術を積極的に活用しようと、世界的有名な舞踊家の楊麗萍氏の舞台をこれで撮影しVRなどで視聴するといった取り組みや、スポーツ競技やコンサートでのライブ配信、それに一部の裁判においても試験的に導入された。中国の導入事例を見てみると、大きなスポーツ大会や注目のテレビ番組など、話題性の大きなイベントに限られているようだ。

パノラマカメラのソリューションとして期待されているサービスにメタバースがある。Kandaoはメタバースを構築できる没入型インタラクティブプラットフォーム「Kandao Creator」をリリース。またメディア分野での名門校「浙江伝媒学院」と共同でメタバース実験室を設立した。メタバースについては決定的なアプリケーションは中国でもないものの、とはいえ官学を巻き込み、またメタバース作成プラットフォームをリリースして種を蒔いている。中国のこれまでのセオリーどおり、メタバースでも大手IT企業が台頭するだろうが、比類なき性能のカメラを出せているのは同社だけであることから、今後Kandaoのハードウェアを活用したメタバースが生まれてきそうだ。

(作者:山谷剛史)

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