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Facebookは、世界で最も成功したソーシャルメディアとして15年間の道を歩んできた。
オープンな空間を提供することで世界中に27億人もの月間アクティブユーザー(MAU)を獲得したFacebookだが、現在同社はこの空間を私的な交流の場に変えようとしており、プライベートな「リビングルーム化」が進んでいる。
3月7日、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、中国版ツイッターとも言えるウェイボで約3200字ものメッセージを公開し、戦略的な方針転換を行うと発表した。主な内容は、大勢の人々へ発信するSNSから短時間・少人数の交流ができるSNSへと転換するというものだ。
改革の重点は、Facebook傘下の3つのメッセージングサービス「WhatsApp」、「Facebook Messenger」、「Instagram DM」の活用にある。まず、これまでWhatsAppにしかなかったエンド・ツー・エンドの暗号化機能を3サービス全てに装備する。今後はたとえFacebookを通じてもユーザー情報の入手は不可能になる。また、統合プラットフォームを構築し、アプリを切り替えることなくメッセージの送受信が行えるようにする。将来的にはAndroidスマートフォンのSMSシステムとの統合も予定している。
「町の広場」に「リビングルーム」を作る
方針転換の背景には、今後のSNSの動向に対するザッカーバーグ氏の考えが影響している。同氏によれば、今はプライベート空間を切望する人が増えており、短時間かつ少人数向けのメッセージングサービスの成長が著しいという。アプリの調査会社App Annieのモバイル市場年鑑を見ても、WhatsAppはFacebook傘下で最も人気の高いインスタントメッセージサービスであることが分かる。
米投資銀行Piper Jaffrayの最新の調査によれば、米国の若者は驚くべき速さでFacebookを見捨て、一斉にInstagramへの転換を進めているという。
Facebook傘下のメッセージングサービスの相互連携化の本当の目的は、上述の3つのサービスを繋げるプライベートプラットフォームを構築することで、ユーザーを統合してスケールメリットを得ることにある。
とはいえ、Facebookにプライバシー保護を基本とするプラットフォームを構築する能力があると考え、本気でそれを作ろうとしていると思っている人は少ないだろう。この1年の間に次々と発覚したデータセキュリティ問題によってユーザーの我慢は限界に達し、会社の信頼は失墜している。
「リビングルーム」のビジネスモデルの課題
プライベートメッセージサービスへの転換は、Facebookのデータ収集にとってはマイナスに働く。必然的に広告効果は落ち込み、広告主に多大なる影響を与え、結果的にFacebookにとって極めて重要な広告収入にも影響する。
ザッカーバーグ氏のソリューションは、中国のインスタントメッセージサービスWeChat(微信)を手本にしているように見える。公開したメッセージの中で、同氏はこのプラットフォームの構築について、WhatsAppを開発した手法で、音声通話、ビデオチャット、グループチャット、決済等の機能を備えたプライベートプラットフォームにすると述べている。
しかし、FacebookがWeChatを真似るのは容易ではない。まず、3つのサービスは膨大なデータ量を扱うため、一度流出したら取り返しのつかない結果を招く。次に、決済のエコシステムを構築するためには、提携企業先のプラットフォームを通じてサービスを行う必要があるが、クレジットカードシステムが発達し、個人情報保護に敏感な国々では、SNS上での決済に消極的なユーザーが圧倒的多数だ。普及には相当な困難があるだろう。
これに関しFacebookはすでに動きを見せている。ニューヨークタイムズは、関係者の話としてFacebookが独自の仮想通貨FBC(Facebook Coin)を開発中であると報道した。FBCの主な用途はFacebookユーザーのオンライン決済であり、これにより念願のモバイル決済市場進出の道が開けるかもしれない。
Facebookは一部の国家からの抵抗に直面する可能性もある。ロシアやベトナム等は、ITプラットフォームに対してユーザーデータを国内で保管するよう求めている。今後Facebookは、これらの問題を世界各国の専門家、パートナー、政府と共に話し合い、改革を合理的に実行するための措置を講じるだろう。しかし、この改革においてユーザーの発言権は皆無に等しいようである。
(翻訳・桃紅柳緑)
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