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がんの遺伝子検査や早期スクリーニングを手がける「和瑞基因(Berry Oncology)」が6月23日、複数のがんを同時にスクリーニングできる検査キット「全思寧」を発表した。同社が独自に開発した「HIFI技術」を活用したもので、中国で罹患率の高い肺がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、大腸がんのスクリーニングを一度に行うことができる。検出感度は87.58%、特異度は99.09%、がん原発組織の検出感度は82%と、高い精度を誇る。
「全思寧」はセルフリーDNA(cfDNA)の全ゲノムシーケンスを活用した世界初の複数がんスクリーニング検査キットだ。ほかの技術よりも広範囲に早期がんのシグナルを捉えられるため、腫瘍特性の違いによる検出漏れを低減できる。
和瑞基因の周珺CEOの説明によると、上述のがんは中国でリスクや死亡率が最も高い6種類で、毎年の新規がん患者の60%を占めるという。同社は今後3~5年をかけて、がん患者のカバー率を60%から段階的に80~90%にまで高めていく考えだ。
がんの早期発見には政府の積極的な後押しもある。中国共産党中央委員会と国務院が発表した「健康中国2030計画綱要」では、罹患率の高い地域でがんの早期発見・早期治療を重点的に進め、2030年までにがん患者全体の5年生存率を15%高める計画が示された。
5月に発表された「第14次5カ年計画バイオエコノミー発展計画」でも、遺伝子検査などの先端技術と疾病予防の統合を推進し、がんを含む重大疾病の早期スクリーニングを展開して、個別化治療のための正確なソリューションと意思決定支援を提供することの必要性が示された。
これ以前に、和瑞基因は肝臓がんの早期スクリーニング検査「莱思寧」の自社開発にも成功している。しかし複数がんのスクリーニングと単一がんのスクリーニングはターゲット層が異なるのだという。肝臓がんに特化した「莱思寧」は、主にリスクの高い人を対象に、いち早い診断と治療につなげる目的がある一方、複数がんのスクリーニングは自覚症状のない健康な人を対象にがんの早期発見を目指し、健康管理に重心を置いている。このため、それぞれの商業化のルートも当然ながら異なってくる。
周CEOによると、がん遺伝子のハイスループット解析業界では、基準を満たした研究所が独自に開発・実施するLDT(自家調整検査法)という検査法が世界的な主流だという。
2021年6月1日に施行された中国最新の改訂版「医療器械監督管理条例」では、「国内で販売されていない種類の体外診断薬(IVD)については、基準を満たした医療機関が自身の臨床ニーズに応じて独自に開発でき、医師の指導のもと自社内で使用できる」と言及、LDTが初めて法的に認められた。次世代シーケンシングなど革新的な検査法を開発する企業を法律面からサポートするということだ。
周CEOは、今後LDTに関する細則が段階的に公布されれば、産業化の歩みが一層加速すると語る。さらに、将来的に遺伝子検査の普及が進むにつれて、LDTとIVDそれぞれが精密医療サービスを提供するようになるとの見通しを述べ、同社では引き続きLDTとIVDの両面から開発を進めていくとした。
注目すべきことに、がん早期スクリーニングの新製品が次々と市場に投入され、業界が「収穫期」を迎えるにつれ、スタートアップ企業に対する投資熱は冷めつつある。これについて中国大手VC「啓明創投(Qiming Venture Partners)」執行取締役の張奥氏は、ここ1~2年の盛り上がりを経て人々が冷静さを取り戻し、商業化の見込みに注目するようになったと指摘。ビジネスチャンスという意味では早くから準備を重ねてきた企業に分があるとし、「和瑞基因は初期の肝細胞がんの前向き研究(PreCarプロジェクト)で大量の臨床データを蓄積しており、アルゴリズムやサービスの最適化を迅速に実行できている」と語った。
(翻訳・畠中裕子)
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