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バイドゥ(百度)スマート機器事業部の元総経理で、AIアシスタントを提供する「渡鴉科技(Raven Tech)」創業者の呂騁氏がAIを活用したエンターテインメント会社を設立していたことが、業界関係者の話から分かった。同社は米国のシードアクセラレーター「Yコンビネータ」の中国法人、「Y コンビネータ中国」(以下、YC中国)と「星瀚資本(Sky Saga Capital)」から数百万ドル(数億円)を調達している。
去年末、呂氏のチームはバイドゥ前総裁の陸奇氏率いるYC中国の第1弾スタートアップ養成プログラムに参加することが決まった。
Yコンビネータは選考にビデオ面接を取り入れており、責任者は自社プロジェクトとその特徴を紹介する1分間のビデオを制作することになっている。
ビデオの中で、呂氏は自らの会社名を「RCT STUDIO」と紹介し、分散型機械学習や自然言語処理などのAI技術を活用してインタラクティブエンターテイメントを提供し、ハリウッド映画界やゲーム業界を再構築すること目指すとしている。
「まずはAI技術を活用して映画やゲームの台本を再編し、ハリウッドのスタジオと協力してVRを用いたインタラクティブ作品を制作する計画で、その後はハードウェアの製作にも取りかかる考えだ。」呂氏のチームに近い関係者はこのように語る。
今年1月初め、YC中国は第1期スタートアップ養成ブートキャンプに参加する企業の選考が完了したと発表した。参加企業はその後の3カ月にわたり中国と米国で集中的にトレーニングを受けたのち、プログラム終了時の「Demo Day」で正式に紹介され、さらなる事業展開を目指す機会が提供される。
バイドゥを去った後、一時は謎に包まれていた呂氏の去就だが、創業者としてYC中国に参加するという選択は決して意外なことではない。
Yコンビネータは呂氏のキャリアにおける重要なターニングポイントである。2015年、呂氏が設立した渡鴉科技が当時唯一の中国チームとしてYコンビネータの冬季養成ブートキャンプに参加することになったのだ。これを機に、同社は大手ファンドから出資を受けることになる。
YC中国への参加を後押ししたもう一つの要因は陸奇氏だ。2017年2月15日、バイドゥは渡鴉科技の買収を発表。この時、バイドゥの総裁兼COOに着任したばかりだったのが陸奇氏だ。
バイドゥ陣営に加わった呂氏はスマート機器事業部の総経理となり、直接陸奇氏に業務報告をする立場になった。渡鴉買収の事情に詳しい関係者によると、陸奇氏はマイクロソフト時代から呂氏と交流があり、2人は互いの個性を評価し合っていたという。
買収後の2017年11月、呂氏のチームがスマートスピーカー「Raven H」のプロトタイプを完成させた。しかし1699元(約2万7800円)という販売価格を巡り、もっと価格を抑えて大衆化したい呂氏のチームとバイドゥ経営陣の間に亀裂が生じるようになった。
両者の関係は冷え切り、その結果Raven Hの量産目標は縮小され、マーケティング予算も大幅にカットされた。2018年3月、呂氏のチームはバイドゥの新部門「スマートリビンググループ(SLG)」に吸収される。呂氏はスマート機器事業部から追いやられて「Raven Studio工作室責任者」という肩書が与えられた。
2018年7月に呂氏はバイドゥを去ることを発表。その発表の1カ月前には、89元(約1500円)という低価格のスマートスピーカー「小度(Xiaodu)」がリリースされた。
ある投資家によれば、陸氏は呂氏とRCT STUDIOを推薦し、個人的にも強い関心を示しているという。ほぼ同時期にバイドゥに所属していた陸氏と呂氏は、華々しい出世から幕引きに至るまで同じような経緯をたどっている。2人のバイドゥにおけるよく似た経験だけでなくこれからの関係も、シリコンバレーの老舗アクセラレーター、Yコンビネータが中国で生み出す稀有で新しいストーリーになるかもしれない。
(翻訳・畠中裕子)
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