22年上期の投資額はすでに2兆円超え。徹底解説:Web3は世界の何を変えるのか

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2022年も後半に突入したが、今年はこれまでに米VC(ベンチャーキャピタル)セコイア・キャピタルや米半導体開発クアルコムなど有名企業を含む30社以上がWeb3に特化した投資ファンドを設立したと発表した。投資規模は合わせて170億ドル(約2兆2700億円)を超えている。

ファンド単体の投資規模はセコイア・キャピタルが約30億ドル(約4000億円)で、Web3への投資額としては世界2位の規模だ。セコイアを上回り最高額の投資をしているのがアンドリーセン・ホロウィッツで、その規模は80億ドル(約1兆700億円)に迫る。アンドリーセン・ホロウィッツは2009年に米シリコンバレーで設立されたVCで、これまでにフェイスブック(現メタ)やツイッターなどのビッグテックに投資してきた。

アンドリーセン・ホロウィッツは18年6月、暗号化関連企業を支援する3億ドル(約400億円)規模のファンド「a16z crypto fund」を設立し、「Coinbase」「Uniswap」「Solana」「MakerDAO」などブロックチェーン分野を含む有望プロジェクトに次々と投資してきた。これまでにブロックチェーン関連の100以上のプロジェクトに投資し、大きな収益を上げているため、デジタル通貨界隈では「投資の羅針盤」と称されている。

21年に入るとアンドリーセン・ホロウィッツはWeb3に参入すると宣言。中国のIT大手Sina(新浪)が発表した「2022年第1四半期メタバース投資・融資白書」によると、今年第1四半期(1〜3月期)にアンドリーセン・ホロウィッツはメタバース分野に総額5億9200万ドル(約800億円)を投資し、同期における投資総額の18%を占めたとみられる。

高額なリターンを得られることから、メタバース分野への投資やメタバース関連の起業がブームとなっている。統計によるとWeb3投資ファンドの約95%は設立1年未満で、メタ、グーグル、アリババ、テンセントなど各国の大手IT企業がWeb3分野での展開を加速させている。

ただし、誰もがWeb3を語りたがる一方で、果たしてWeb3とは何なのかを誰もが明確には理解していないのが現状だ。

定義の曖昧なWeb3、その核心は「自由」

Web3は2014年、イーサリアムの共同創設者ギャビン・ウッド氏が提唱した概念から始まった。次世代のインターネットユーザーが自身のデジタル資産やデジタル情報を自ら把握できるようになることを目指すものだ。

現在、社会で広く認知されているのは、「Web1.0は情報を『受け取る』もの」「Web2.0は情報を『受け取り』『発信する』もの」「Web3は『受け取り』『発信する』に加え、『保有する』という特性が加わったもの」という定義だ。

言い換えれば、Web1.0時代の生産者は中央集権化された組織や企業であり、一般ユーザーは単純に受け手としてインターネットの構築に加わっていた。Web2.0 時代に入ると、モバイルインターネットの普及に伴う通信量の増大やアルゴリズム技術の増強によって、ユーザー側からもエコシステムの構築に加われるようになった。最も顕著な例がツイッターなどのSNSだ。

Web2.0 時代にはユーザーもある程度はコンテンツを作る権利を有するようになったが、作り出したコンテンツの所有権は作り手に完全に帰属するものではなかった。

Web3時代にはこうした問題が解決されるだろうと期待されている。Web3の中核理念は、例えばパブリックチェーン(誰もが自由に参加できるブロックチェーン)、コンテンツ配信プラットフォーム、あるいは想像しうる限りの機能を備えた仮想空間がインフラとして存在するもので、ユーザーは自身のコンテンツを作り、その完全な所有権を有し、それを他者と共有するか、誰と共有するかなどを自らの意思で決められる。つまり、プラットフォーム側にはコンテンツをコントロールしたり削除したりする権限がなくなるということだ。

Web3の概念と同様、現在のWeb3は具体的な階層化アーキテクチャーも未熟でまとまっておらず、コンセンサスが形成されていないため、論議の余地が多く残されている。

現在一般ユーザーが目にする非中央集権型取引所やデジタルコレクションに代表されるNFT(非代替性トークン)、非中央集権型貸付プロトコルなどのプロダクトは、いずれもWeb3の「表側のプロダクト」と言える。これらのターゲットは一般ユーザーであり、その主な目的は固定のビジネスモデルを通じて収益を得ることだ。これらはWeb2.0時代に置き換えれば、ウェブサイトやアプリに相当する。

これとは反対に、Web3の裏側にはスマートコントラクト(契約の自動化)やパブリックチェーンなどのインフラが存在する。これらのプロダクトを一般ユーザーが直接目にする機会はほとんどなく、技術面でもより高い能力が求められる。これはWeb2.0時代なら、TCPプロトコル(現在最も標準的な通信プロトコル)などインターネットの基盤技術に相当する。

いずれにしろ、すべてのWeb3信者にとって、自身のデジタル資産を管理する自由であれ、技術の進化によって得られる感覚的な自由あるいは境界からの自由であれ、Web3の核心は「自由」にあることは間違いない。

Web3の下地はブロックチェーン

Blockchain technology and network concept. Block chain text and icon network connection on motherboard microcircuit fast speed background

Web3は現在のブロックチェーンが描くものよりもずっと壮大な概念だ。しかし、Web3投資ファンドの方向性を分析すればわかる通り、現在のWeb3を手がける大多数のベンチャー企業はNFTやDeFi(ディーファイ、分散型金融)などブロックチェーンに関係する事業を運営している。そこへ新たにWeb3の概念が加わったことから、Web3はブロックチェーン分野から誕生した概念だと大多数の人が考えている。

Web3の技術的アーキテクチャーは基本階層、プラットフォーム階層、アプリケーション階層の3つに分けられるというのが現在主流の考え方だ。基本階層の技術はブロックチェーン技術で構成されており、現段階ではWeb3関連の多くのプロダクトがブロックチェーンに関わるもののため、目下のWeb3は非中央集権的なブロックチェーンの色合いが濃い。

これまでの通信プロトコルはインターネット上の膨大なデータを分割し、さまざまなサーバーに振り分けて保存するもので、一部のデータが消失してしまえばデータは不完全になり、改ざんも容易にできるものだった。一方、ブロックチェーンに保存されたデータはそれぞれのサーバーが完全な記録を残しており、一部のサーバーでデータが消失あるいは損傷しても他のサーバーに残されたデータはそのまま維持される。データを複数箇所に分散させて保存するこの方法ならば、データは最大限完全に近い状態を保ち、第三者による改ざんも防げる。

分散型、非中央集権型といったブロックチェーンの特性は、Web3信者が求める自由やデータの所有権とそのまま合致する。そのため、Web3の発展はある程度、ブロックチェーンとは切り離せないものとなっている。

ブロックチェーン技術が登場したことで、Web3世界では誰もが自分自身のプラットフォームを持てる可能性を持つ。開発企業は企業向けにも個人向けにもオーダーメイドでインフラを構築でき、アプリケーションプログラムはデジタルIDやその保護に使えるほか、データ保護やデジタル資産の保存などにも使える。

さらにWeb3のエコシステムを構築する過程では、如何にしてユーザーをエコシステムの構築に参加させるかというインセンティブの問題も考慮しないわけにいかない。

現時点で業界内では、具体的なインセンティブ効果のあるトークン(トークンは多くの場合、暗号通貨を指すと考えられているが、テンセントの仮想通貨「QQ Coin(Q幣)」やポイントもトークンの一種に含まれる)を発行すべきだとの考えが共通認識となっている。トークンによるインセンティブという概念はもともとブロックチェーン業界で誕生したものだ。

将来的には、Web3のビジョンを具現化するためのより適切な技術が誕生する可能性もあるが、現時点では、比較的成熟したあらゆる技術の中で、ブロックチェーン技術が最も適切であり最も理想に近いものだといえる。
(翻訳・山下にか)

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