「アリータ」を超える完全CGのバーチャルヒューマンを多様な産業へ生かす、中国最大の3DCG映像制作「原力動画」

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「アリータ」を超える完全CGのバーチャルヒューマンを多様な産業へ生かす、中国最大の3DCG映像制作「原力動画」

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ジェームズ・キャメロン製作のSF映画「アリータ:バトル・エンジェル」のヒットによって、特殊効果を駆使した映像がさらに注目を浴びている。

モーションキャプチャーを用いて実写とCGIをかけ合わせた同作だが、中国のあるデジタルコンテンツ制作企業は、完全なコンピューターグラフィックスのみで、実写とたがわぬ「バーチャル俳優」を生成できるという。

画像提供:原力動画

上記の画像は、中国のデジタルエンターテイメント関連のコンテンツ制作を手がける「原力動画(ORIGINAL FORCE)」が制作したものだ。動画の中の被写体は、細かな表情や生き生きとした身体の動き、肌の質感や眼差しに至るまで、本物の人間そっくりだが、コンピューターによって生成されたものであり、実在しない人物だ。

原力動画創業者兼CEOの趙鋭氏によると、バーチャルヒューマンの生成技術は3年をかけて開発し改善を重ねてきたもので、当初はレンダリング技術を用いた手法で制作コストも高かったが、現在は低コストかつリアルタイムで画像を生成できるようになった。商用化されれば映像の世界のみならず、金融・教育・医療などの各分野に応用できるという。

限りなく現実に近いバーチャル

原力動画では、人体力学や生物学に基づいた最新の表情筋・骨格筋システム、パフォーマンスキャプチャーシステム、顔画像自動認識システムなどを構築し、バーチャルヒューマンを生成する。趙CEOは、「最も重要なのは、複数の技術をかけ合わせた制作フローを敷くこと。筋肉の動きで例えれば、基本に全身の筋肉構造があり、さらにそれを正確に運動させるデータが必要だということだ。各システムのデータがリンクし、互いに連携することが技術全体を通じたカギになる」と述べる。

顔の表情については、機械学習のアルゴリズムを用いてヒトの顔面の動きを完全に模倣できるシステムを開発中だという。今後、バーチャル俳優の表情はより自然に、より能動的に表現されるようになる。

画像提供:原力動画

■まず筋肉を攻略する
人間の動作は、骨と筋膜、筋肉が連動して行われるものだ。従来の3D画像が不自然だったのは、骨格の動きのみで人の動作を再現しようとしていたからだ。しかし、現実には骨格や筋肉に指令を下す運動神経無くしては、ヒトは動くことができない。

この運動神経による指令を人体の隅々にまで伝達するには、解剖学的視点から身体を理解しなければならない。身体の動きを表現するために、原力動画では5段階のプロセスを経ている。骨格の動作から連鎖的に導き出される筋肉、筋膜、脂肪、肌(表情)の動作によって、身体の動きを再現するのだ。このため、同社は人体の各部に対応する147の筋肉を作り出したという。

中国では、筋肉からのアプローチによって人物、特に表情を生成する映像制作企業は少ない。

■機械学習で制作現場の負荷を大幅に削減
顔の表情について、原力動画では多くの資金を割いて研究・開発にいそしんでいる。

CG画像の制作には、従来アニメーション、ブレンドシェイプ、SFXの各エンジニアの連携と、それぞれの膨大な作業が必要とされていた。中でもブレンドシェイプの工程は地道な作業が求められる。まばたきをする、微笑むといった一つ一つの顔の動きは何百カットもの画像を数百時間かけて積み重ね、ようやく完成するのだ。

原力動画が開発した新しいシステムでは、バックプロパゲーション(誤差逆伝播法、ニューラルネットワークに学習させるアルゴリズム)によって、ブレンドシェイプの作業量をおよそ3分の1にまで削減する。

画像提供:原力動画

テクノロジーで映像制作の効率を上げる

我々が目にするリアルなCG画像は、コンピューターの複合的な演算によって実現されている。

以前は1人のバーチャルヒューマンを生成するのに半年以上はかかっていたというが、原力動画が自社開発した技術によって、キャラクター制作の初期段階はおよそ1カ月で完成するようになった。

ここまでの技術開発に、同社は50人編成のチームで5年の年月をかけ、年間1000万元(約1億6000万円)以上の資金を投入してきた。

同社が基盤の一つとして設立以来重視してきたのが、人物画像データの蓄積だ。数千時間分のデータを機械学習のサンプルとし、技術力の支えとしてきた。趙CEOは「人物の3D画像関連で我が社以上のデータ量を誇る企業はほぼないと言っていいだろう」と自信を見せる。

今後は、同様にデータの蓄積をもって深層学習へ駒を進める。

バーチャルヒューマンの表情や容貌は従来、専門の人材が原画を作成し、3Dモデリングを行ってきた。これからは、コンピューターに関連データを転送するだけで、機械の方がクリエイターの思考回路や創作過程を学びとり、指定された通りのイメージや表情、動作を作成できるようになるという。

ただし、これは制作の全過程をコンピューターに任せるということではない。

「コンピューターはあくまでヒトを補助する存在であり、映像制作の核がクリエイターであることには変わりない。コンピューターは彼らの時間やエネルギーを肩代わりして、より創造性の高い作業に専念させる役割を担うのだ」

将来、コンピューターが人物画像を自動生成するプロセスの中に、各キャラクターの人物設定や性格を織り込むことができるようになれば、リアルさも精密さもより向上し、制作の効率もさらに改善するだろう。さらにこれを量産できるようになれば、商業利用の可能性は大きく広がる。

バーチャルヒューマンを活用できる産業は?

趙CEOはこの技術を映像やゲーム業界を超えた多様な業界で活用したいと考えている。具体的には金融、教育、医療だ。例えば金融分野なら、大手銀行のカスタマーサービスに3Dバーチャルヒューマンを導入できる。金融サービスには一般的な業種以上に信用や安心感が求められるが、録画映像や2Dアニメーションに替わり、音声識別機能を搭載したバーチャルヒューマンが対応すれば、サービスの品質も一新できるだろう。

5G通信が普及すれば、バーチャルヒューマンは最も可能性を秘めたマンマシンインターフェースとなると趙CEOは考える。

【原力動画】
1999年に創業した国内最大の3DCG映像制作会社。デジタルエンターテイメントのコンテンツ制作を手がけ、とくに人物画像の研究・開発に注力する。2016年にはテンセント(騰訊)から1億元(約16億円)規模の出資を受け、年間売上高は4億元(約66億円)に迫る。

南京市に本社を構えるほか、国内数カ所と米国、タイに拠点を擁し、総従業員数は1500人。映像関連のIP(知的財産権)創造、プロジェクト投資、コンテンツ制作、技術開発、人材育成など幅広く手がける。創業者兼CEOの趙鋭氏は世界最大のCGカンファレンス「SIGGRAPH」会員。ソニーやドリームワークスなど世界的大手とも長期的な提携関係にある。
(翻訳・愛玉)

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