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化学電池市場は近年になって急速に需要が伸びている。ナトリウムイオン電池は原材料の調達が容易なことや、低温特性(低温環境下で劣化したり性能が低下したりいないこと)に優れ、安全で安定性が高いなど性能的な優位性があり、次世代電池として市場でも政策面でも注目されている。
ナトリウムイオン電池の開発を手掛けている中国スタートアップ企業「珈鈉能源科技」が、このほどエンジェルラウンドで数千万元(数億〜十数億円)を調達した。出資したのはスマートフォン大手シャオミ(Xiaomi)の雷軍CEOが設立したVC「順為資本(Shunwei Capital)」だ。珈鈉能源科技の創業者・範海満氏によると、今回調達した資金は主にパイロットライン(量産開始前に行う試験的な少量生産のためのライン)や工場の建設、人員拡充に充てるという。
珈鈉能源科技は今年4月に設立されたばかりで、ナトリウムイオン電池の重要な材料を製造するとともに、高い安全性と長い寿命、低コストを実現するナトリウムイオン電池システムの研究開発・製造に取り組む。主要製品はナトリウムイオン電池の正極材料となるポリアニオン(多価陰イオン)と、負極材料となるバイオマス由来のハードカーボン(難黒鉛化性炭素)だ。同社のCSO(最高科学責任者)曹余良氏は武漢大学化学・分子科学学院の教授で、ナトリウムイオン電池の材料技術に10年以上携わっている。
曹CSOは「昨年にリチウムの価格が1トンあたり5万元(約99万円)から50万元(約990万円)へと値上がりしたのが主な契機となり、コストの安いナトリウムにスポットライトが当たりはじめた。ナトリウムイオン電池は実験段階から産業化へと踏み出そうとしているところだ」と述べる。
ナトリウムイオン電池はまだ進化段階で、正極材料の開発と改良が重要な課題となっている。現段階で市場に流通するナトリウムイオン電池の正極材料は主に遷移金属酸化物、プルシアンブルー類似体、ポリアニオン化合物の3つがある。他の企業の多くは遷移金属酸化物、プルシアンブルー類似体を採用するが、珈鈉能源科技は正極材料にポリアニオン化合物を採用する。将来的に大規模化する蓄電池市場に対応するための選択だという。
曹CSOによると、蓄電池市場が無尽蔵の資源、長寿命、高安全性などを求めていることを鑑みると、ポリアニオン系正極材料は原材料の再利用、加工プロセス、安全性、サイクル寿命などの面で優位性があるそうだ。
さらに、ポリアニオン系正極材料はリチウムイオン電池の酸化物系正極材料のように表面にアルカリが残留することがなく、保管環境や加工現場の管理がしやすいため、生産コストも大幅に減らせる。この点でもポリアニオン系正極材料の強みは明らかだ。
正極材料と同じく、珈鈉能源科技は負極材料のバイオマス由来ハードカーボンにも重点を置いている。これまでさまざまな原料や調製プロセスを試し、製品は3世代目まで進化した。第1世代は低コストなバイオマス由来ハードカーボンを用いたもので、容量は約280mAh/g、第2世代は不純物を取り除いたハードカーボンを用いたもので、容量は約330mAh/g、第3世代は高度な特製のハードカーボンを用いたもので、容量は約400mAh/gに達する。いずれも段階的に実用化を進めているという。
創業者の范氏は、蓄電池市場が大規模化する将来、ナトリウムイオン電池は最大のシェアを占めるようになると見ている。同社の市場戦略はまず自社製品を低速走行二輪車や予備電源に用い、鉛蓄電池を代替するとともに、リチウムイオン電池を補完する役割を担わせる計画だ。
現在は製品の改良・試験段階で、10キロクラスの製品の生産能力を備え、大手電池メーカーにサンプルを送付して試験や検証も行っている。来年4月にはパイロットラインでの生産が安定する予定だ。
ナトリウムイオン電池のこれからについて曹CSOは、リチウムイオン電池よりも低コストで生産できるだけではなく、リチウムイオン電池と互いに補完し合う関係を築くだろうとしている。ナトリウムイオン電池がより順調に発展するためには、中国国内のリチウム不足を補い、国家戦略の発展に寄与することと、高騰するリチウム価格のバランサーとなり、リチウムイオン電子産業のさらなる成長にも寄与することが必要だという。
(翻訳・山下にか)
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