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ビッグデータ専用のICチップを開発する「達博科技(DataBox)」がシリーズAで資金調達を完了し、評価額は約5億ドル(約560億円)に達した。
ここ数年、集積回路の製造技術は物理的に極限に近づいており、「半導体の集積率は18カ月で2倍になる」という「ムーアの法則」が持続不可能になってきた。そのため、専用ICチップを設計・採用し、特定の機能でハードウェア・アクセラレーションを有効化することで、CPUやGPUなどの汎用プロセッサに比べ、サーバやスイッチングハブなどの通信インフラ機器の機能、コストと消費電力を大幅に改善することができるようにした。
「寒武紀(Cambricon)」や「地平線(Horizon Robotics)」などの企業が手がけるAIチップや「ビットメイン(比特大陸)」などが開発しているビットコインマイニング専用ICなどは、どちらもハードウェア・アクセラレーション専門ICチップに属する。
達博科技が狙いを定めたのはビッグデータの分野だ。ストレージ、コンピューティング、通信関連専用のハードウェア・アクセラレーションチップを自社で開発し、テープアウトに成功した。既存のサーバーのストレージ、コンピューティング、通信性能を向上させることで、サーバなど設備全体数、電気代や帯域幅、設置面積などを削減、維持管理に必要な費用を節約することが可能だ。
競争の激しいAIチップ分野と比較すると、ビッグデータ系のICチップはそこまで目立たないが、より価値の高い分野だと言えよう。AIチップは応用寄りの領域で、より細分化された分野に活用される。反して、ビッグデータ関連ICチップは、より基礎部分に関わるもので、活用領域や市場規模も大きい。また、AI市場競争が過熱化しているが、ビッグデータ市場は未開拓市場だ。
ビッグデータシステムのプラットフォームでネックになるのは、ストレージ容量、ハードディスクの処理性能、インターネットの処理性能、CPUの負荷だ。
公式情報では、達博科技製のICチップが提供するハード・ソフトウェア一体化ソリューションは、顧客企業のビッグデータシステムのストレージ容量、ハードディスクの処理性能、インターネットの処理性能を現行の2倍以上に向上させ、CPUの負荷も大幅に軽減することができるという。
既存のサーバクラスタを3万台以上抱える企業の実際のケースでは、1日あたり10PB以上のデータが増えていく反面、運営コストを考慮してそのうち30%前後しか保存できていなかった。それでも、年あたり1万5000台のサーバ増設が必要になる。こうしたビッグデータシステムに対しても、達博科技が提供するソリューションにより、ストレージを3倍にまで拡大し、2年間で30000台以上の新規サーバ購入を回避できたという。この場合、顧客は30億元(約500億円)のコストを削減することが可能だ。
公式情報によると、中国のインターネット業界では大手企業の半数がすでに同社製品でPoCテストを行っている。一部はすでに商業利用を開始しており、その他大手も次々と導入手続きを進めている。
中国の三大通信キャリアも同社製品でPoCテストを行っている。うち1事業者は、最大規模のデータプラットフォームを有し、かつ技術レベルも最高水準に達した一部の省で、先立って商業利用を始めた。残りの2事業者も同様に、商業利用の準備段階に入っている。
達博科技は2016年に安徽省の合肥市で設立。蘇州、上海にオフィスを持つ。創業チームのメンバーはいずれも学術面、実務面の双方で相応のキャリアを重ねている。創業者の董群峰氏は米ウィスコンシン大学マディソン校でコンピューターサイエンスの博士号を取得し、ファーウェイ(華為技術)のコンピューターシステム部門でチーフ・サイエンティストを務めた経験を持つ。
(翻訳:山口幸子)
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